走る

誰かの手を引いて暗闇を走っている。
二人分の重み、ばらつく足並みが走るのを難しくさせる。
ただ、繋いだ手を離さないように。
それだけに注意を払って。

息遣いが不揃いなことでもう一人の存在を感じる。
握った手に時折力が込められて、彼(彼女)の意志を感じる。
姿は見えない。
でも、その人がぼんやりと浮かぶ。
その人を感じる。

一瞬、息が合う。足並みが揃う。
そしてまたすぐにばらばらになる。
もう一人の様子を窺って、また合わせようとする。
それを繰り返す。
息が合って。また乱れて。
そうやって合う瞬間を増やしていく。少しずつ。

確かなものは繋いだ手だけ。
言葉も交わさず、顔も見ず。
僕たちは走り続ける。

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