徒然日記~留学のこと
良いところまで書けた、と思った記事を、うっかり下書き保存し忘れて・・・最初からこうしてやり直し。
今、格闘しているテーマの一つは、漱石先生。
言わずと知れた日本の文豪。
今日は、入門書を借りて来て、彼の経歴を紐解いてみた。
漱石先生は、明治維新の前の生まれ。
33歳で国費でイギリスに留学するも、神経衰弱に陥る。
留学と言っても、現代のように語学学校や情報が充実しているわけでなし。遥かな大海に、一人小舟で乗り出して行くようなものだったはずだ。
私も、学生時代に留学したが、行き先がイタリアというマイナーな先だっただけに、情報集めに苦労した。
だが、先輩や先生、また交換留学で日本に来ていた学生さんなど、色々な人に会えたし、アドバイスも貰えた。
電話で、家族とも話せた。
それでも、特に最初の頃は、うまく言いたいことも言えず、口にガムテープを貼られているかのようで、焦った。
時には、自分がこんなにも遠くに来てしまった、という事実が重くのし掛かってきた。
限界が近くなった時に、外国語学部の図書館に日本語の本があると情報を得て、駆け込んだのは、今となっては良い思い出と言えよう。この時に、川端康成を貪るように読んだ。
が、その百年近く前、漱石先生がロンドンで感じた孤独やプレッシャーは、もっと、何倍も強かったはずだ、と今更ながら思う。
彼は、そもそも船旅の時点から、西洋文化にうまく馴染めなかったらしい。
それに国費で留学している身として、なにがしかの成果をあげなくてはならない。
考えれば考えるほど、鬱々と思考の沼にはまって行ったのは、想像に難くない。
そんな彼にとって、気分転換ともなったのが絵を見ることだった。
絵を前にして、沸き上がってくるのは、「綺麗」とか、そういう単純な感想でも、構わなかっただろう。
プレッシャーや悩みから、一時的にでも意識を逸らしてくれただろうから。
例えば、風景画を見ながら風を感じたり、遠くに行くことを想像したり。
また、絵を前にしての「感動」は、どんなにささやかな物でも、心に潤いをもたらしてくれたはずだ。
そして、留学時代に漱石先生が目にし、癒されたであろう絵のいくつかは、帰国後、時を経て、彼の創作活動の中に顔を出していく。
ちょっとした挿話の題材として、あるいは、作品やキャラクターのイメージとして。
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