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パリの若冲(2018)~鮮烈なる出会い

 2018年10月、ある展覧会が盛況のうちに終わりを迎えた。

 その展覧会の名は、「若冲―〈動植綵絵〉を中心に」展。

 若冲を扱うものとしては、ヨーロッパ初となる大規模な展覧会であり、約1か月の会期中に訪れた人数は、なんと約7万5千人!

 一日あたり2500人もの人がやってきた計算になる。(作品は、ちゃんと見えただろうか?まあ、なるべく人の流れが止まらないようにするなど、工夫もしただろうが)

 彼らの目当ては、<動植綵絵>30幅―――あの一枚一枚が濃密なクオリティを持つ、若冲の最高傑作として注目される作品群である。

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 さらにそこに、<動植綵絵>とセットで相国寺に寄進された仏画<釈迦三尊像>3幅が加わっていた。

 <動植綵絵>30幅だけでも見ごたえはあるが、この<釈迦三尊像>こそは、例えるならパズルの最後の一ピースとも言うべきだろうか。

 この3幅が加わることで、<動植綵絵>は、仏教の教え、「草木国土悉皆成仏(心のあるもののみならず、心のないものまであらゆるものが成仏する)」の意味を帯びる。

 ここに描かれた(集っている)、鳥類、蝶などの昆虫、草花、タコや貝など、海の生き物たち―――全てが「仏」となる。

 仏画3幅も合わせた33幅という数字も、『観音経』で観世音菩薩が変身する姿が33あることによるとされる。

 つまり、<動植綵絵>は祈りの絵とも言えよう。

 数珠を手繰って祈るように、彼は一枚一枚に自分の技術、観察の積み重ねなど持てる全てを注ぎ込んだだろう。

 だからこそ、一幅一幅がパワーを帯びるし、30幅を完成させるまでに10年近い時を費やした。

 そして、それら33幅が揃った展覧会は、「Jakuchu」の名を知っていた人にとっても、知らなかった人にも、鮮烈な印象を残す対面の場だったのではないだろうか。

 フランスの外からも来ただろうし、忘れられずに、もう一度、二度と足を運んでしまうリピーターもいたのではないか。

 どうか、どこかで33幅全てを揃って見られる機会がありますように。

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