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ひと文字がつないだ縁

全く知らない人から、東京ドームのミスチルライブの同行者に指定された!私が申し込んだのは日産スタジアムのミスチルライブなのに。どういうこと?なんで私のアドレスを知っているの?さて落ち着いて「間違いがきっかけ」で出会った人とのエピソードを書いていきたい。

これ、詐欺やん!!

中学生の頃から聞いているMr.Childrenが今年30周年のツアーをやると知ったのは、4月の半ば。友人を誘って6月の日産スタジアムに申し込んだ。以前ミスチルのライブに行ったことがあり

「あの歌声がまた生で聞けますように」

と願いながら、申し込みボタンを押す指に力を込めてタップした。

数日後、一通のメールが届いた。

「○○さんがあなたを5月11日、東京ドームでのMR.Childrenライブの同行者に指定しました」

どういうこと?私東京ドームに行くの?申し込んだのは日産スタジアム 。
詐欺やん!怪しいサイトを見てなくても、ネットショッピングで引っかかることもあるらしいし、私の個人情報がどこかに流れたのか!?一旦落ち着け…。そこまで考え、もう一度メールをゆっくり読み返した。今回申し込みをしたチケットボードは、転売対策で誰かと行く場合は、あらかじめ同行者を指定する必要がある。申込者が同行者のメールアドレスを登録すると

「○○さんがこのコンサートにあなたを同行者として指定しました」

というメールが届いて、チケットもそのアドレスからQRコードを保存することになっている。
ということは…。
「間違ってはるやん!!」
申し込みをした人が、本来の同行者ではなく、私のアドレスを登録したんだと分かった。早く連絡しないと!きっと知らない人を同行者にしていること、気づいてないはず。すぐにメールを送った。全く知らない人に文章で

「間違っていますよ」

を伝えるのはなかなか緊張した。

5月11日の東京ドームのミスチルのライブに、間違って私が同行者に指定されていること。私も同じミスチルの別のライブに申し込んでいること。一度登録した同行者は変更ができないこと。その上でどうすればいいかと尋ねる内容を書いた。ちゃんと読んでもらえるのだろうか、返事は来るのだろうか、ソワソワしながら送信ボタンをタップした。待つこと20分ほど。返事が帰ってきた。丁寧な文章の中に、間違ってしまったことのお詫びが優しい言葉で綴られていた。

こんな偶然があるなんて

どうやら、本来同行者として指定した息子さんのメールアドレスが、私と一文字違いだったとのこと。私のアドレスは名前と誕生日を組み合わせている。
なんと、息子さんと私は名前と誕生日が同じだったのだ。同姓で同じ名前の人は何人か会ったことがある。同じ誕生日の人は4・5人知っている。でも、異性で同じ名前と誕生日の人は初めてだ。息子さんがメールアドレスを取るときに
「既にこのアドレスは使われています」
と表示され、名前と誕生日の組み合わせが使えないと分かり「一文字付け加えて」メールアドレスを作ったそうだ。先に名前と誕生日の組み合わせでアドレスを作っていたのが私だったのだ。申込者さんはこれまでコピペしていたアドレスを、このときだけ直接入力し「最後の一文字」を入力し忘れてしまった。そのメールが私に届いたのだ。

「こんなことがあるんですね」
「信じられませんね」

とやり取りを重ねた。

さて、ここからどうするか。もし当選したらご一緒させてもらえないかと返信した。同行者が変更できない以上、私が行かなければチケットが、倍率の高いあのミスチルのチケットが一枚無駄になってしまう。

「ありがとうございます。そう言ってくださって、本当に嬉しいです。息子も喜んでいます」

と書いてくださった。申込者の女性、本来の同行者であるご主人、そして私の三人でチケットの当落を待った。発表を待ちながら、申込者の女性と何通もメールを重ねた。都内に住んでいること、好きな音楽や絵画、旅した場所の魅力など、その方の「好きなもの」をたくさん教えてもらった。書かれている内容と丁寧に綴られた文章から、聡明なすてきな女性だろうなと思った。私も最近観た舞台、行ったライブ、娘と出かけた原宿での話など、やり取りを重ねた。SNSでもリアルでも「その人の背景や人となり」を知った上でやり取りすることがほとんどだ。「全く知らない人」と少しずつお互いのことを文字にして伝えるのは新鮮だった。もし落選しても一度お会いしてお話ししたいなと思うようになっていた。

迎えた発表の日

「当選しました!」
とご連絡をいただいた。お会いすることが決まったら、私が全盲であることをお伝えしようと思っていた。どうやってメールをしているかを書いて、名刺代わりにホームページのアドレスを送った。早速見てくださって、感想とともに

「当日はよろしくおねがいします」

というメッセージをいただいた。無事待ち合わせ、そこからはずっと丁寧に誘導してくださった。3時間のライブの間

「桜井さんがこっち来てますよ!5mほど先にいる!」
「みんなの手の動きがそろっててすごくきれい」

状況を教えてくれた。お会いしてからライブまでの2時間ほどで

「言葉で説明すれば状況が分かるんだ」

と思ってくれたこと、嬉しくなった。桜井さんの力強く優しい歌声、MR.Childrenの音楽、波のように寄せて聞こえる
50000人の拍手。全てしっかり心に届いた。
人と出会うきっかけなんていくらでもある。この人と繋がりたい、仲良くなりたいというワクワクする気持ちを行動に移してよかった。間違いがきっかけで出会った女性。私の住んでいる町にも、夫が通っていた大学にもご縁がある方だった。

「今度はゆっくりランチしましょうね」

と言って別れた。「ひと文字がつないだ縁」大切にしていきたい。

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