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初めてのショートショートnote

『酔っ払い』と『チャリンチャリン』

ある冬の金曜日。僕は残業を終え帰り道を急いでいた。
「終電には間に合いそうだ」
 スマホの時計を見ながら足早にオフィス街を歩く。近道をしようと路地を曲がったが、薄暗い空間に出てしまった。
「しまった、間違えたかな?」
 あわてて戻ろうとしたら、背後で音がした。鈴のような、金属どうしが当たるような音だ。
<チャリンチャリン>
 背筋がぞわっとした。
<チャリンチャリン>
 だんだん音が近づくような気がした。
 ドサッと何かが倒れた。
「わっ!」
 僕は飛び上がって、うしろを振り向いてしまった。
 路地にはうつ伏せになっている人影が……。スマホのライトを点けてかざしてみると、黒っぽい服を来た男が倒れていた。
「大丈夫ですか?」
 恐る恐る声をかける。
「……出ないんだ。……ここから出ないんだ」
 もごもごとしゃべる男が、右手に持っていたビールの缶を見せて振った。
<チャリンチャリン>
 空き缶と固いものどうしが当たって鳴った。
「何が、出ないんです?」
「お金。100円が2枚くらい……」
「なんでまた?」
「コンビニで、ビールを買って飲んで、歩いていたら、ここにいた」
 呂律の回らない口で男が缶を振る。
「にいちゃん、お金貸して……」
「はぁ?」
「じゃあ、この缶と交換しよう。200円でいいから。そしたらまたビールを買う」
「断ります!」
 きっぱり言うと僕は路地を飛び出した。
「ケチ~~~~~っ!」
 夜空に男の声が響いたが、無視して急いだ。
 酔っ払い相手に時間を無駄にしてしまった。駆け足で駅へと向かう。
「間に合った!!」
 電車に飛び乗り、開いた座席に腰をおろして息を吐いた。
 スマホにイヤホンを差し、音楽を聴こうとした時だ。
<チャリンチャリン>
 イヤホンを通して、あの音が聞こえた。
「え!?」
 スマホの画面がパッと明るくなると、そこに映ったのはーーー。
「にいちゃん、お金貸して」
 ニヤッと男が笑った。

<了>

2021年6月28日(月)
本日、届いた「ショートショートnote」を使って、さっそくやってみました。200枚のお題カードから何が出てくるのか不安と期待でした。
初めてのカードが「酔っぱらい」と「チャリンチャリン」とは(^-^;
なんとか物語を考えて生み出しました。

追記:再編集をしてて手違い削除してしまいました。
「スキ」をして下さった皆様、申し訳ありませんでした。
再掲いたしました。

記事が少しでも心に残ったものがあれば幸いです。サポートもありがとうございます。創作の支えとして大切に使わせて頂きます。