飛行機の何がいいんだ?

毎年の就職先人気ランキングでは常に上位。CAやパイロットは華のある憧れの職業。

なぜだ?

空港の、飛行機の、何がいいってんだ?

出発時間のかなり前に空港に着いておく必要はあるし、手荷物検査は面倒だし、飛行機の座席は狭いし、機内では電子機器は思うように使えない。

おまけに旅の始まりでワクワクするだって?

そんなこともあるかもしれないけれど、旅の終わりでもあるわけだし、空港に着いた時なんてほとんど気怠さしか残っていないし、何より人と人とが別れる場所でもあるじゃないか。

ああ、馬鹿らしい。

みんな空に魅せられている。いや、騙されているんだ。

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航空会社である自社の福利厚生を使って実家へ帰る飛行機へと乗りこんだ。

実家に帰って、幼馴染に会い、親戚に会い、航空会社勤務を話題に出される。仕事はどうか?ちゃんとやってるか?誰もが知る航空会社なんて本当にすごいよ。

それっぽい言葉を並べ、適当に相槌を打つ。

違う。思っていたのと違うんだ。もっと私はでかい仕事をしたい。飛行機だってでかいって?そうじゃない。私のしてることなんて飛行機を飛ばすことのたかが2.3%にすぎない。それなのに褒められたって困るし、別に感動話なんて湧いて来ない。

そう、まだ私はこの仕事に誇りなんて持っていないし楽しいのか、これから何がしたいのかなんて考えてみても途中で霧がかかって答えが出て来ない。

仕事、合ってないのかな。こればっかりは今じっくり考えてみてもきっと答えは出ない。

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帰省も終わり東京へと帰る。

寂しがりやの母は毎回必ず空港の駐車場に車を止めて中まで見送りにくる。

じゃあね。元気でね。


19:20。出発。

秋の真っ暗な空へと飛行機は飛び立っていく。

ほらね、飛行機の何がいいんだよ。

田舎のあたたかな街の灯りも次第に遠ざかっていく。

ぼーっと窓から外を眺めていると、街の光も届かなくなった。真っ暗闇の中飛行機は進む。

どこへ向かっているのだろう。

自分と重ね合わせる。

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目を開けると飛行機は着陸態勢に入っていた。

暗闇も抜け、窓の外遠くには海に浮かぶ船の灯りが見えた。

東京の光が先に見えてきた。ああ、戻ってきた。

遠くから見ると綺麗なのになあ。綺麗だなあ。



飛行機はいつか着陸する。

途中、真っ暗闇もある。何も見えない。どこへ向かっているのかもわからなくなりそうになる。

だけど、いつかは明かりが見えてくるし、着陸だってする。

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羽田空港の滑走路に着陸した。

飛行機かあ。

空港ねえ。

いずれにせよ、不思議な場所だ。





#コミックエッセイ大賞

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