【読書メモ】発達障害の人のビジネススキル講座|石井京子・池嶋貫二 著

かかりつけの病院で過去に参加していたグループワークでやった「イイトコサガシ・ワークショップ」のことが載っていた本。

本文のほうも気になっていたので読後の感想をまとめておく。

どんな本?

発達障害の人が一般企業で働く上で覚えておいたほうが良いこと、守るべき暗黙のルールなどがまとめられている。

「普通これくらいわかるよね?」っていうのがわからない人=発達障害の人という前提で書かれている。

正直いうと、障害の度合いが強いアスペルガー傾向の人向きなのかな、といった感じ。

右も左もルールと言うルールがわからなくて、全部逐一明文化してほしい人にはわかりやすいのだろうと思う。

逆に言えば、もともと社会のルールが分かっているけどうまく適合できないADHDとか、障害の度合いが軽めのグレーゾーンの人には「言われなくてもそれくらい頭ではわかるんだけど…」という内容しか書いていない。

すべてこなせる=社会人の常識と思ってしまうと危険

この本にかかれていることが全部できるんならそれもう「普通の人」だよね?と思ってしまうような内容だった。

「わかっているけどできない」層の発達障害の人にはまったくもって参考にならない。

というより、ビジネスマナーというさも「正しそう」なアドバイスの形をとって「定型発達者はまったく発達障害と呼ばれる人の脳みその仕組みを理解する気がないのでそちらが合わせてください」と言われているようで非常に不愉快だった。

社会に適応することに不自由を感じていない人のそういう「大多数に合わせることが社会適応であり成長」みたいな視線こそが発達障害の人を苦しめているだろうに、支援者をやっているという著者がそういう視点でどうするんだろう。

「どう頑張ってもできない」ことを「どう社会にやんわり不時着させるか」ということは書いていない本なのでそこに期待してはいけない。

あくまでも「社会はこういうルールで動いている」ということが書かれた手引書のような本だ。

しかも、それも全て正しいとは言えない。建前でしかない情報や個々人で価値観が変わってくるもの(社会人の定義や働く意義など)についても言及があるため、すべて鵜呑みにするのは危険だ。

合間にある専門職の人のコラムは有益

本文に関してはかなり苦言を呈したが、章の合間に挟まっている専門職(就労支援や親の会、言語聴覚士の人)によるコラムは有益な内容だった。

とはいえここでも「評価の基準は時と場合で変わること」「雑談の必要性」といったテーマが主になっている以上、やはりこの本は重めのアスペルガー傾向の人向けなのだろうと思われる。

個人的には以前読んだ「発達障害の自分の育て方」のほうが良書と思う。


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