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小論文の書き方

学校によっては、高校受験科目に小論文が含まれます。(出題例には、このようなものがあります。)ただ、普段の学習の中で、小論文を作成する機会はそれほどないでしょうし、どのように作文すればよいか、戸惑っている方は多いでしょう。小論文はどのように書けばよいのでしょうか?今日はいくつかの出題例を参考に、実際どのように小論文を作成していけばよいか一緒に考えてみましょう。

読み手を意識する

小論文は、読み手に伝わらなければ書いた意味がありません。小論文を書く上で、最も重要なポイントとして、書き手のことを知らない読み手が初めて読んだ場合でも理解できる言葉・表現を選ぶ必要があります。また、一般的な言葉のみで説明できない場合は、用語の定義をする必要があります。

(出題例1)中学校生活において最も大切にしてきたこと【800字 2016 青山学院】

(解答例1)私は中学時代コーラス部に所属し、3年間を通し合唱コンクールに向けた練習活動に精力的に取り組んだ。声変わり以降はテノールパートに所属し、ファルセットも使いこなし自身の音域を広げる努力をした。・・・そういった日々の地道な努力を大切にしてきた。

解答例1では、”テノール”、”ファルセット”などの音楽用語が、音楽になじみのない読み手にとってはわかりづらい可能性があります。このような業界用語については、一般的な表現に置き換えるか、わかりやすい説明を加えた方が、読み手に伝わりやすいです。これが用語の定義です。

(解答例2)私は中学時代コーラス部に所属し、3年間を通し合唱コンクールに向けた練習活動に精力的に取り組んだ。声変わり以降は、男性の中では比較的高い音域を担当するテノールパートに所属し、通常の声で出ない音域はファルセットと呼ばれる裏声を使って出せるよう、自身の音域を広げる努力をした。・・・そういった日々の地道な努力を大切にしてきた。

また、これらの解答例では、コーラス部に所属し、合唱コンクールに向けた練習活動が非常に淡々としたものに感じられるかもしれません。男性のシンガーにとってはショッキングな声変わりの経験についても、文章の中ではさらりと簡単に説明されています。用語の定義は、次のように、単なる言葉の説明だけではなく、言葉の背景に含まれる、書き手側の経験や心情、思いを表すこともできます。

(解答例3)私は中学時代、歌が大好きだったこともあり、コーラス部に所属していた。コーラス部では、年に1度全国で開催される合唱コンクールに出場できるよう、練習活動に精力的に取り組んでいた。全国レベルの合唱を作り上げるための練習は厳しいものだったが、合唱が好きだった私にとって苦ではなかった。そんな中、中学1年の冬、私は声が出なくなった。声変わりだった。大好きな歌が歌えず、高音域を出すこともできない。私はショックだった。歌の練習もできず、苦しかった。そんな時、ラジオでキングヌーと呼ばれる男性アーティストが、高音の裏声、ファルセットを自在に操っているのを耳にした。非常に美しい歌声で、大人の男性にしか出せない独特の歌い声だった。私は、これだ、と思い、その日以来、毎日裏声の練習をし、友人からのアドバイスも受けつつ、ファルセットも使いながら音域を広げる練習をした。男性の高音域パートであるテノールパートに所属し、同じパートの友人ともファルセットの練習をしながら、男性パートの音域を広げたコーラスができるよう、コーラス部全体で練習をした。その甲斐もあり、翌年私たちのコーラス部は全国コンクールで表彰されることとなった。それは、私自身にとっても、一緒に練習を続けてきた仲間にとっても、一生忘れられない思い出となった。声変わりでつらかった時、歌をやめず努力を続けてよかったと、心の底から思った。たとえ自分自身の能力が足りず、辛い経験をしたとしても、日々地道な努力を続けることは、自分自身の大きな成長につながり、周りの仲間と大きな夢をも達成できるのだと、身をもって感じた。このように中学時代の私は、どんな状況でも日々努力し続けることを、大切にしてきた。この思い出を宝に、これからも努力を続けることを大切にしたい。(742字)

いかがでしょう。読み手には、中学時代に書き手が経験したこと、つらかった中で必死に努力したこと、コンクールでうまくいって嬉しかったこと、など、言葉の背景にある経験や心情が、うまく伝わってきますよね。小論文は小説ではありませんが、読み手を書き手の思い描いている世界へ引き込むことが、まず重要です。

解答例3の場合、自身の経験談がかなり充実している一方、本論の” 中学校生活において最も大切にしてきたこと”が薄まりつつあるので、心配な場合は、解答例4のように、結論、言いたいことを冒頭に置く方がよいかもしれません。

(解答例4)中学校生活の中で、私が最も大切にしてきたことは、 どんな状況でも日々努力し続けること、である。私は中学時代、歌が大好きだったこともあり、コーラス部に所属していた。 コーラス部では、年に1度全国で開催される合唱コンクールに出場できるよう、練習活動に精力的に取り組んでいた。全国レベルの合唱を作り上げるための練習は厳しいものだったが、合唱が好きだった私にとって苦ではなかった。そんな中、中学1年の冬、私は声が出なくなった。声変わりだった。大好きな歌が歌えず、高音域を出すこともできない。私はショックだった。歌の練習もできず、苦しかった。そんな時、ラジオでキングヌーと呼ばれる男性アーティストが、高音の裏声、ファルセットを自在に操っているのを耳にした。非常に美しい歌声で、大人の男性にしか出せない独特の歌い声だった。私は、これだ、と思い、その日以来、毎日裏声の練習をし、友人からのアドバイスも受けつつ、ファルセットも使いながら音域を広げる練習をした。男性の高音域パートであるテノールパートに所属し、同じパートの友人ともファルセットの練習をしながら、男性パートの音域を広げたコーラスができるよう、コーラス部全体で練習をした。その甲斐もあり、翌年私たちのコーラス部は全国コンクールで表彰されることとなった。それは、私自身にとっても、一緒に練習を続けてきた仲間にとっても、一生忘れられない思い出となった。声変わりでつらかった時、歌をやめず努力を続けてよかったと、心の底から思った。たとえ自分自身の能力が足りず、辛い経験をしたとしても、日々地道な努力を続けることは、自分自身の大きな成長につながり、周りの仲間と大きな夢をも達成できるのだと、身をもって感じた。この思い出を宝に、これからも努力を続けることを大切にしていきたい。(750字)

【重要ポイント】
① 読み手にわかる表現
② 書き手の感情が伝わる説明
③ 読み手に伝わりやすい結論の表現

異なる小論文課題に同じ経験談を使う

上の解答例では、自分自身の具体的な経験談をもとにした小論文の例を示しましたが、きちんと読み手にわかる表現をしていれば、読み手に伝わりやすいですし、説得力のある文章を書くことができます。あなた自身の実際の経験談はとても貴重なので、出題例1や他の出題例を参考に、経験談をまとめておくとよいかもしれません。

また経験談をまとめておくと、異なる小論文課題に対しても応用させることができます。例えば、

(出題例2) 中学校で得たことを、高校生活でどういかすか 【600字 2014 工学院大附属】

(解答例5)私は中学時代、コーラス部に所属していた。 コーラス部では、年に1度全国で開催される合唱コンクールに出場できるよう、練習活動に精力的に取り組んでいた。全国レベルの合唱を作り上げるための練習は厳しいものだったが、合唱が好きだった私にとって苦ではなかった。そんな中、中学1年の冬、私は声変わりで声が出なくなるつらさを経験した。歌の練習もできず、苦しかった。そんな時、ラジオで高音の裏声、ファルセットを自在に操っている男性アーティストの歌を耳にした。非常に美しい歌声で、大人の男性にしか出せない独特の歌い声だった。私は、その日以来、毎日裏声の練習をし、同じパートの友人と練習しながら、ファルセットを使った新しい混声合唱に合唱団員全員で挑戦した。独特の歌唱スタイルも受け入れられ、翌年私たちのコーラス部は全国コンクールで表彰されることとなった。それは、私自身にとっても、一緒に練習を続けてきた仲間にとっても、一生忘れられない思い出となった。自身のつらい経験の中、一見ピンチに思えることでも、見方を変えればチャンスになるのだと実感した。これから高校生活が始まり、厳しい経験も多々あるかと思う。中学校で得たこの経験のように、ピンチと思った時こそ視点を変えて、大きな達成感を得られるチャンスにしていきたいと思う。(547字)

このように、全く異なる課題でも、十分同じ経験談を使うことが可能です。経験談は、
【起】背景、自分の置かれていた状況
【承】その状況の中で行っていた活動
【転】ショッキングな出来事、その活動に悪影響が出てしまいそうな事件
【結】それを乗り越えた方法、得られたこと
に分けて頭の整理をしておくと、上のようにいろんなケースで応用できます。

【重要ポイント】
【起】【承】【転】【結】でエピソードを整理

時事問題に関係する小論文

小論文課題の中には、世の中の出来事や、ニュースに関係して出題されるものもあります。この場合は、自身の経験談をフルで使い切ることは難しいかと思います。例えば、次のような例があります。

(出題例3) 昨年 11 月、アメリカの次期大統領選挙で大接戦を演じたヒラリー・クリントン候補は、開票が行われた翌日のスピーチで事実上敗北を認めた。次に挙げるのは、そのスピーチの中でヒラリー候補が述べた言葉の日本語訳である。これを読んで、あなたの考えをまとめなさい。【600字、2017 慶應女子】

(出題例4) グローバル化の中であなたが今取り組んでいることや今後力を入れたいことは?【600字、2014 実践学園】

(出題例5) 選挙権が与えられることによって、あなたは何を期待されているのでしょうか。【600字、2016 東京純心女子】

いずれの例も、出題時に背景知識を少しでも持っていると、論説の展開を深めやすくなります。以下のような点について知識があり、さらにあなた自身の考えをもっていると、話の展開が楽になります。

(出題例3の場合):ヒラリーとトランプ対立候補の主張の違い、2016米国大統領選挙が着目された理由

(出題例4の場合):グローバル化とインターナショナルの違い、グローバル化で日本が置かれている状況

(出題例5の場合):選挙権はこれまでの20歳以上から、2015年より18歳以上に変更

普段から、新聞などニュースに目を通す癖をつけましょう。最近は、読売中高生新聞のような中学生向けの新聞もわかりやすくまとまっており、普通の新聞(約4000円/月)よりも安いので、知識を入れるために購入するのもよいかもしれません。

小論文は、出題テーマの種類も多く、練習が必要なので、また別の機会にも対策方法について記事に取り上げていきたいと思います。

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