魅力の伝え方 秩父みんなの宣伝部 #9
この記事は、埼玉県秩父で活動するクリエイティブ会社「浅見制作所」がローカルラジオ「ちちぶエフエム」でお届けする“聴いて試してPR!秩父みんなの宣伝部”をテキストにしたものです。
全12回を通して、PRの基本的な考えからブログやSNSの活用法、発信術まで、地方の事業者さんにお役立てできる情報をお届けします!
第9回は「魅力が伝わるキャッチコピー講座 後編」から内容をバージョンアップし、「魅力の伝え方」についてお届けします。
「どんな人にとって魅力になるのか」を考えて言葉にする
伊藤:
魅力発信のコツを全12回でお届けする、この番組。ぜひ皆さんの魅力を発信して秩父を盛り上げていきましょう。というわけで、本日もよろしくお願いします。
今回は第9回です。前回は、「魅力が伝わるキャッチコピー講座 前編」をお送りしました。
浅見:
前回はキャッチコピーの話をしたんですが、割としゃべるのが難しかったなあ、と。やっぱりお店ごとに違うし、相手によっても違うから、あんまりわかりやすい正解ってないんですよね。
伊藤:
正解がわかれば簡単ですけど、そういうものじゃないぞと。
浅見:
そう。なので今回は、「魅力の伝え方」についてお話したいと思います。キャッチコピーの作り方にも近い話なんですが。人によって魅力と思うかどうかは違うので、それを踏まえたうえでどう伝えるのかをお話できればと。
伊藤:
たとえば秩父を魅力と思うか。目の前にある商品を魅力かと思うかは人によって違うということですね。
浅見:
そうなんですよ。たとえば、ウニがすぐ手に入るような海沿いに住んでいると、ウニのありがたみって感じないけど、海がない僕ら埼玉県民としてはすごく羨ましいことじゃないですか。
伊藤:
そうですね。
浅見:
秩父でいうと、山に囲まれていますよね。都会から遊びに来た人にとっては「あー、空気がきれい!」って深呼吸します。でも、僕ら秩父に住んでいる人間にとっては普通の光景だから、改めて深呼吸をするってあまりないですよね。
伊藤:
当たり前の光景ですよね。
浅見:
そう。海があるのも山があるのも同じことなのに、それを魅力と思うかは人によって違います。つまり、山や海を見慣れている人の目線ではなく、「どんな人にとって魅力になるのか」を考えて言葉にすると、魅力として伝わるんです。
では改めて、魅力って何だと思いますか?
伊藤:
誰かがそれを素敵だと思うこと、ですかね。
浅見:
そうですね。健康も失ってから価値があることに気づく、と言いますし、大好きな人もそうじゃないですか。失ってから気づく。
伊藤:
いや、付き合ってるときに大切さに気づきたい。何かあったんですか(笑)。
浅見:
いや、ないない。
伊藤:
大切にしましょう、ということですね。
浅見:
そうですそうです。話を秩父に戻しましょう(笑)。秩父に住んでいると、ゴールデンウイークでもない限り、道が混むことはほとんどないし、満員電車に乗ることもないですよね。でも、これって当たり前じゃないですか。
伊藤:
たしかに、そうですね。
浅見:
でも、毎日ギュウギュウの満員電車に乗っていて、緑がまったく見えない場所に住んでいる人にとっては、秩父は自然豊かで、のどかで、満員電車に乗らなくていいことが魅力に感じますよね。
伊藤:
誰にとっての魅力か。人によって違うということですね。
当たり前と思っていることを別の視点で見る
浅見:
ひとつの例をお話します。「あしがくぼの氷柱」って今ではすごく人気のコンテンツですよね。毎年、何万人という観光客が来てくれる。でも、あれは天然の氷ではないんですよ。
伊藤:
そうですね。人の手をかけて作っているので、天然ではない。
浅見:
誰から聞いたかは忘れたんですが、観光客の方が「これは天然の氷なんですか?」と質問していて、それに対して「残念ながら天然じゃないんですよ」って返していたそうなんです。間違いではないけれど、これを聞いた観光客は残念な気持ちになるじゃないですか。
伊藤:
そうですね。そういう雰囲気になっちゃいます。
浅見:
でも実は、「あしがくぼの氷柱」はオープンまでの2ヶ月、毎日散水して、形にこだわったり、水を届けるパイプが凍らないようにメンテナンスを毎日したりして、すごくいろんな準備をしてる。もはや職人技です。それを「残念ながら人工なんですよ」と伝えるのはもったいないですよね。「職人が手塩にかけて育てているから、自然にはない美しい氷柱になるんです」と伝える。人の手で作られていることをネガティブではなく、ポジティブに捉えて伝えるんです。そうすると、相手が受ける印象も全然違うじゃないですか。
伊藤:
たしかに。同じものだけど、説明で全然違う印象に感じますね。
浅見:
そう。作っている人からすると、毎日同じことをやっていて、そんなに立派なものじゃないって思っているかもしれない。でも、細かい作業や氷柱に対する思いを知ると、見る人は魅力を感じるじゃないですか。
伊藤:
たしかに。魅力的じゃないと思っているものも、角度を変えて見たら、すごく魅力的なものに映るかもしれない。
浅見:
そうなんですよ。これが大事なポイントですね。自分のなかで当たり前と思っているものを疑うというか、別の視点を持つのが大事なんです。で、どうやってこの視点を持つかと言うと、僕がおすすめなのは自分が見慣れていない土地に行くことですね。
伊藤:
なるほど。秩父の魅力に気づくために、秩父以外の土地に行ってみる。
浅見:
景色を見たり、名物を食べたり。その土地の人にとっては当たり前のものでも、観光で訪れた自分には新鮮なものに感じる。この感覚が必要なんですよ。
伊藤:
たしかに。こういう気持ちで私たちのまちを見ているんだって気付けますね。
善意のフィルターと悪意のフィルター
浅見:
言葉次第で物事がよくも悪くも伝わると、先ほど氷柱の例でお話しました。ここからは、善意と悪意のフィルターについて話したいと思います。
伊藤:
ちょっと怖いテーマですね。
浅見:
そうかもしれないですね。具体例として、ユニクロを悪意をもってというか、よくなさそうに説明します。
「安くて、大量生産の、どこでも買える、大衆向けの洋服店」。どうでしょうか。
伊藤:
つまんなそう~。
浅見:
(笑)。なんか、悪意あるでしょう。
伊藤:
ありますね。
浅見:
今度は善意をもって説明します。
「リーズナブルで在庫豊富。安心して買えるカジュアルブランド」。
伊藤:
面白いですね。よいイメージになります。
浅見:
「安い」は「リーズナブル」に、「大量生産」は「在庫豊富」になりますよね。「どこでも買える」は「安心して買える」になるし、大衆向けは「カジュアルブランド」になる。
伊藤:
一方は意地悪な言い方で、もう一方はそっと差し出してくれるような言い方。同じものなのにこうも違うんですね。
浅見:
「悪い人じゃないんだけど」ってよく言うじゃないですか。よいところはあるし、見つけようとしてる。
伊藤:
絶対悪い人ではないですよね。
浅見:
あと、これは僕が以前、横瀬町のイベントでおこなったものなんですけど、横瀬町の富田町長を善意と悪意で説明しましょう、という資料を作ったんです。
伊藤:
大丈夫ですか、それ(笑)。面白そうですけど。
浅見:
今日が最終回にならなければいいですが(笑)。
気を取り直して、まずは悪意をもって説明しますね。
「若いくせに、先取った取り組みをして、周りのみんなを翻弄しながら突っ走る町長」。
伊藤:
嫌ですね。悪そうです。人の話を聞かなそうです。
浅見:
今度は善意をもって説明しますよ。
「若くして先進的な取り組みにチャレンジし、周りのみんなと共に、一緒にまちを盛り上げる町長」。
伊藤:
めちゃくちゃいい感じじゃないですか!
悪口っぽく言うか、応援してる人っぽく言うか、全然違いますね。
浅見:
「若いくせに。あいつは生意気だ」という言い方から、「若くしてあんなことができる」という言い方になっています。「先走った」は「先進的に」とすることで、誰よりも新しいことをやる人だと伝わる。「翻弄」だと迷惑をかけていそうだけれど、「周りのみんなと一緒に」だと一体感が生まれる。突っ走るというのも「チャレンジ」とか「盛り上げる」という言葉に変換できます。
伊藤:
言葉はすごく大事ですね。
浅見:
そうですね。なので、自分が本当に魅力を感じているかってすごく大事で。そうじゃないと、言葉って出てこないんですよ。
伊藤:
自分が引け目を感じていたり、ちょっと微妙だなと思っているものだと、そういう言葉選びになってしまう。
浅見:
商品もサービスも、自分がよいと思ったものを提供する。そして、自信を持つことが一番大事じゃないですかね。
商品やサービスを磨き、言葉にして届ける
伊藤:
もの、商品、サービス、お店を磨くと、言葉選びも変わってくると。そもそも論、ということですね。
浅見:
そうです。
僕は大学生のころ、居酒屋でバイトしてたんですが、そこの社員スタッフが「これ、あまりおいしくないんだよね」って言いながら調理してたんですよ。すごく嫌だなあと思ってて。やっぱり、お客さんのために工夫して、おいしいですよ! と自信をもって提供したいじゃないですか。
伊藤:
本当によいと思うものを、まずは出しましょうと。結局、そこに戻るんですね。
浅見:
そう。謙遜はある程度は大事だけれど、自分が作ったもので相手に喜んでもらいたいという気持ちは優先したいわけですよ。さっきの氷柱の話も、謙遜して、「これは自然にできたものじゃないんです」って言ったらもったいないじゃないですか。
伊藤:
作った人の努力とかいろんなものが台無しになってしまいます。
浅見:
なので、大事なのは2つ。作ることと、言葉で届けることです。
伊藤:
届ける。ちょっと難しそうですね。
浅見:
難しいので、私がそういう仕事をさせていただいているんですが(笑)。
でも、届ける努力はしてみてほしいなと思います。
伊藤:
秩父の人って、謙遜される方が多いイメージがあります。「秩父なんて何もないのによく来たね」とか。
浅見:
ですね。なので、相手の立場になることです。「こんなところまで来てもらって」と言うのはリップサービスとしてはいいけれど、来てくれた人が「秩父に来てすごくよかった!」って言ってもらいたいじゃないですか。不愛想で頑固なおやじがいるお店ももちろんいいけど、「お待ちどうさまでした。ごゆっくりどうぞ」って言葉を添えられたほうが、安心してよい時間を過ごせますよね。
伊藤:
あたたかい空気が流れている場所に、人は集まりますよね。
浅見:
せっかくよいものを作っているんだから、おもてなしをして、秩父での時間を最高のものにしてもらいたいですよね。だから、相手がどう感じるかということをしっかり考えて提供する必要があるんです。
よいものを作って、ていねいに届けていれば、それは必ず伝わります。たとえば、僕は秩父以外の人へのお土産にパティスリーイシノさんの焼き菓子セットを買っていくんです。秩父じゃないと買えないもので、こだわりをもって作っていることを知っているから選んでいるんですが、渡すときにどんなパティシエさんが作っているか、どんなこだわりをもっているかを僕自身が語れるんですよ。そうすると、受け取った側は「そうなんだ!」って興味をもってくれます。
伊藤:
たしかに、そうですね。
浅見:
ここにはひとつポイントがあって。正直なところ、100点満点のうち、80点から100点をとれるお菓子は全部おいしいから、味に大きな差はないと思うんです。パティスリーイシノさんのお菓子ももちろんおいしいです。でも、そこにお店の情報や魅力、自身がおいしいと感じた体験をプラスすることで、100点以上の魅力を伝えることができる。これは、パティスリーイシノさんがちゃんと情報を届けているからこそなんです。
伊藤:
なるほど。届け方もいろいろありますよね。チラシを作ったり、SNSで言葉や写真を使って発信したり。
浅見:
情報の届け方はとても重要です。独りよがりにならずに、相手がどう思うかを考える。そして、相手の立場になるためには自分がいろんな経験をしておく。今から引き出しを増やしておきましょう。
伊藤:
自分の商品やサービスを磨く。そして、価値を高めるために届け方を工夫する。そのためには、旅行をするのも仕事のひとつ、ということですね。
浅見:
その通りでございます!
===
次回は、「スマホでOK!ちょっとの工夫で差がつく宣材写真」と題してお届けします。
次回もお聴き逃しなく!
話し手:浅見制作所 浅見 裕
聞き手:ちちぶエフエムパーソナリティ 伊藤 美裕紀
書き起こし・編集:(株)リモートストーリーズ 井上かほる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?