ゲームプレイ週記#069「FLOWERS」

初めての百合ゲー

いずれプレイしようと思っていたFLOWERSの全四篇収録版・四季がSwitchでもリリースされていたので迷わず購入した。CERO:Bで12歳以上が対象の作品であり、プラットフォームによる描写内容の違いはない。百合ものは数が少なく貴重で、ゲームでこのジャンルに触れるのは初になる。毎日1チャプターずつ進め、第一章である春篇をクリアした。なんというか心がすり減ってくると、こんな優しさと華やかさでできたような、野蛮さの排斥された世界にトリップしたくなることがある。百合は癒し。

「百合系ミステリィアドベンチャーゲーム」と謳われているように、良家の息女が集う全寮制のミッション系女学院で起こるイベントと事件を仲間たちと共に体験しながら絆を深めていく。リアル志向な僕にとってはキャラクターのビジュアルを含め、非現実性の薄さがこのゲームに興味を抱くきっかけとなった。またテキストが文学的であり、主人公である蘇芳の趣味知識からという形でたびたび小説や映画の名作が引用される。このあたり、ミステリーとしてはビブリア古書堂の系譜に近いものを感じる。

Switchでノベルゲームをプレイするこの機会にと、ベッドで仰向けになってプレイするための固定アームを購入した。Switchのシステムもそうだが、このゲームもジョイコンの片方だけで操作が完結しており実に快適にプレイできる。環境設定も機能の数とウィンドウの見やすさが両立されていて、アドベンチャーゲームが見習うべきUI設計となっている。

推理パートが難解

過去に友達を作ることに失敗してきた引っ込み思案の蘇芳が、「アミティエ制度」のある聖アングレカム学院に入学するところから物語は始まる。期待と不安が入り交じる高揚感。最初から己の全てを受け入れてもらえるわけではなく、空回りしながらも同じ時間を過ごすうちに少しずつ馴染んでいく。自分も新しい環境に溶け込むまではものすごく時間のかかる人間なので、蘇芳には強く共感できるところがある。

チャプターの約半数に推理パートが用意されており、学院で起きた事件について蘇芳が持ち前の豊富な知識に基づいて思考を巡らせ解決に導いていく。ただこの推理パート、誘導がほとんどなく難しすぎて蘇芳の思考に置いていかれてしまう。プレイヤーの知識に依存した問題設定は挑戦的で嫌いではないが、もう少し心の声でヒントを出してくれてもいいかなと思った。

アミティエとの三角関係

三人一組で学園生活および寝食を共にするアミティエ制度の助けによって、消極的な蘇芳も親しい友人を得ることになる。カリスマ性のあるマユリと級長の立花、二人のアミティエとは円満な友好関係を築けたかに思えた。しかしこの三人組というのが問題で、やがて秘密の共有や不意のスキンシップに嫉妬の視線がつきまとい始める。二人の中が深まるほどに、残りの一人が自動的に疎外されてしまう構造なのである。

選択肢は二択で提示され、マユリと立花のどちらに傾く返答であったのかは直後にわかるし、ジャンプして戻ってこられるからセーブをしなくともそのままやり直すことができる。1周目はマユリルート固定だが、マユリのほうが好みなので嬉々としてそれに合う積極的な回答を選んでいった。一方で無難な道を突き進むと立花ルートに入る。残念ながら僕は委員長キャラを好きになった試しがないし、立花も理性的で気遣いのできる良い娘ではあるが苦手であることに変わりはない。途中にはプレイヤーの好みにかかわらずどうあっても嫌いにさせるようなシーンすらあり、哀れな役回りだなと思ってしまう。

クールなマユリも好きだが、それ以上に興味を覚えたのは蘇芳の書痴仲間であり口が悪いひねくれ者の八重垣さんだ。僕はどうしてもミステリアスな、付き合った後に恋人として全く違った一面を見せてくれそうなキャラに惹かれるらしい。学院の先輩方も先輩らしく頼れる人たちだが、何か問題を抱え込んでしまったときに真っ先に相談できる相手は軽口を叩いてくれる八重垣さんだなと思った。夏篇では主人公になるらしく楽しみである。

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