あの入道雲をまだ見てる

あの日、大空に描かれた入道雲。
覚えている。あの日誓った思いも、うきうき弾んだ心も。

景色はいつでも変わっていない。

あの時景色とマッチしていて好きだったメロディーの歌手は、麻薬の所持で逮捕された。

友達はみんな大人になった。
綺麗に撮れた入道雲の写真を見せたら、花火大会の話になった。
ファッションの話になった。男と女の話になった。

みんな忘れてしまっているんだ。
この青空の果てしなさを、土手沿いに広がる緑を。

私だけが知っている。私だけなんだ。私だけなのか。

気付けば夕方になっていた。
沈みかけた夕陽を見ながら、また明日に思いを馳せて、私は9%の思いを込めるのだ。

あの入道雲はきっと、明日も、明後日も、きっと来年も。

滴が垂れて、
昇ってきた月は私にはぼやけて見えた。
足元に空き缶が転がる。

景色が、いつまでも変わらない。

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