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おっさんずラブ 廊下と屋上での会話から浮かぶ牧と武川の過去

 以前にこんなnoteを書きました。

今回もまあ、似たような感じで。第4話の、牧と武川の初めての二人きりのシーン。短いシーンですが、ここにも二人が付き合っていた当時に関するヒントがたくさん潜んでいる気がして、過去に思いをはせてみました。

まずは、どんなやりとりがあったのか、セリフをおさらい。

武川「お前は今、不毛な恋愛に足を突っ込んでる。そう思わないか?」
 牧「…」
武川「完全にお前の…片思いなんだろう?」
 牧「…はい」
武川「"あっち側"の人間を好きになっても、幸せになることは絶対にない」
 牧「わかってます。…そんなこと、俺がいちばんわかってます」
武川「俺なら、あいつと違ってお前を傷つけたりやしない」
 牧「………ですね」

『おっさんずラブ』第4話より

いやー! 名シーンですねー!!! 何度みても切ねえ!!!

字面だけ見ると、ぐいぐい復縁を迫る未練タラタラな男と、それをどうにかかわそうとする元恋人、という構図に思えます。私も最初はそう見ていました。
でも、何度も見ているうちに(最終話まで見た後ならなおさら)、そんな単純なシーンではなかったことがわかってくるんですよね。
もうね、なんたってね、牧くんの表情が雄弁。
少ないセリフで、目が語る語る。

異性愛者の春田に牧が思いを寄せることを「不毛」だと言い放ち、幸せになることは絶対にないと断じる武川。

対する牧の「わかってます」。
その表情からは、こんな言葉が漏れ聞こえてきます。

「俺がいちばんわかってるってこと、武川さんも知ってますよね?」

ただの想像でしかありませんが、牧くんは、武川さんという「こっち側の人間」を好きになるまで、実らない恋ばかりしていたんではないでしょうか。
恋愛もうまくいかない、就活も焦ってばかりで先が見えない。
人生のピントが合わないまま気づけば二十歳。
そんな自信のないオドオドした大学生の牧くんが、勇気をもって一歩踏み出した先にいたのが、(自分と同じ側の人間である)武川さんだった。

武川さんを(HPの写真と文章だけで)好きになったからOB訪問に行ったのか、実際に会ってからだんだん惹かれていったのかはわかりませんが、その後二人がお付き合いをするようになったことは事実。
一時的なものではなく、年単位でのお付き合いだったことが先日確定し(某誌での貴島プロデューサーの発言により)、世界に向かってウォオオオオオタァアアアア!!!!!と叫びたい気分でした。
ああよかった。ホントに付き合っててくれてよかった。
武川さんの思い出ロンダリングじゃなかった!!!
牧くんの春田を煽るための口から出まかせじゃなかった!!!
ありがとう!!世界は優しい!!!!!

そんなわけでね、牧くんはそれまでの叶わぬ恋でさんざん傷ついてきた心を、誰にも受け止めてもらえなかった気持ちを、武川さんに受け止めてもらえたんじゃないかな、と思うわけです。
そして、武川さんはそれ以上のものを返してくれたのではないか、と。
そうであってほしいな、と。もうこれはただの私の願望です。

ただ…もうそれは過去のことであって、牧くんは武川さんとの終わった恋に(なんらかの形で)決着をつけ、春田との新しい恋に猛進している。
だけど、過去に傷ついてきた牧を知っているから、もうあんな思いはさせたくない、守りたいと追いすがる武川さん。

「俺なら、あいつと違ってお前を傷つけたりやしない」

この、どっかのラブソングマンの熱い告白に対する牧くんのお返事は

「………ですね」

………いや3文字って!!
武川さんそんだけ必死に復縁迫ってんのに、まさかの3文字返し!!!

ただ、これも字面だけ見るとやけにあっさりしていますが、実際に映像で見ると、牧くんの表情がしっかと二人の過去を語っています。

「あなたが絶対に俺を傷つけなかったこと、俺がいちばんよくわかってますよ」
そんな声が聞こえてきます。あれ、幻聴かな? 副音声かな?

武川さんが決して牧を不安にさせなかったこと。
大人として守ってくれていたこと。
とにかく、もう、それはそれは優しかったこと…

当時の二人のようすが浮かんでくるんですけど、これもたぶん幻影なのでしょう。だってもう二人の過去が描かれることは…ないって…ないって貴島Pが…(嗚咽)
だから勝手に夢見たっていいじゃない!!!


話は第5話に飛びますが、武川さん、春田に対しあまりに無様な姿をさらします。
誰に聞かれるともわからない状況で、絶叫とも言える声量で、

「牧から手を引いてくださぁあああああい!!!!」
「俺があいつじゃないとダメなのおおおおおおおおお!!!!!!」
「お願いします!!!お願いしまああああああああああす!!!!!!」


19歳年下の元恋人を取り戻すために、11歳年下の部下に土下座して懇願する。
プライドも何もあったもんじゃありません。
きっとこんな姿、牧には絶対に見せたことなかったでしょうね。

今さらこんなにすがりつくなら、別れなければよかったのに…と見ているこっちはつくづく思います。

「しかしもう、あんな過ちを犯したりしない!」

武川さん、それって、どんな過ち?

これも私の予想ですが、仕事だ何だのすれ違いでつらくなってしまった牧が、自分のもとを離れていこうとするのを、追いすがって止めなかったことを悔いているのでは?

ちょっと一人になりたいから、しばらく距離を置きたいから、そんなことを言う牧くんを、「お前がそれを望むなら」と行かせてしまったこと。
自分の幸せ(自分のそばに牧がいること)よりも、相手の幸せ(離れたいという牧の望み)を優先してしまったこと。そこじゃないかな、と。

この二人、昔からこうなんでしょうね。
自分より相手のことを優先してしまって、結局最後は二人とも傷ついてしまう。その苦い過去がずっと小骨のように喉に刺さったままだから、第6話でも武川さんは牧に「自分の幸せより相手の幸せか」とため息をつく。これ、半ば自虐の意味もあったのでは。




人は自分を映す鏡だ、なんてことをよく聞きます。
この二人、相手を好きすぎるあまり、大切にしすぎるあまり、かえって鏡がくもってしまったのかな。

相手としっかり向き合うことは、自分の心と向き合うこととイコールだ。
なのに、好きな気持ちばかりが大きすぎて、相手に対する自分のドロドロした感情や「相手の悪いとこ10個」を認め受け入れることができなかった。


「運命の恋」
というのが、この作品のひとつのキーワードでした。

でもね、運命なんてある日突然出会うものじゃないんです。
出会いや恋は偶然でも、それを運命にするのは人の意志なんです。

武川と牧は、偶然出会って恋をした。
だけど、それを運命にすることができなかった。
遠慮だったり、お互いの弱さだったり、どうしても乗り越えられないものがあった。だから終わってしまった。
悲しいね。
でも、その経験があったからこそ、武川さんという最高の理解者がいてくれたからこそ(そして春田には部長がいてくれたからこそ)、牧は春田との出会いを運命にすることができた。

牧のこれまでが報われて、本当によかったと思います。
ごくごく普通の感想だけど、本当によかった。




………で

武川さんは?
いつ報われるんです???


公式さん…もう過去編はあきらめる…想像力で補完するよ…

だからせめて、武川さんが報われて明るい未来を生きていることを、ほんのちょっとだけでもいいから知らせてくれませんか???
続編の中のほんの数秒だけでも、武川さんにくれませんか???
牧ではない誰かにとびきりの笑顔を向けているところを見せてもらうわけにはいかないでしょうか????????

どうか…どうか…

お願いしまああああああああああああす!!!!!




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