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ショートショート『ここはどこ? 私は誰?』

気付けば、なぜか僕は突然どこかの倉庫のようなところに連れていかれ、縛られ、口をガムテープで封じられている。

ここはどこだ?

「どうですか、今の気持ちは?」

目の前の女の子が不敵に笑っている。

お前は誰だ、と聞きたいのだが口を封じられているせいでまったく話せない。

「私が誰か知りたいですか?」

頷く。

懸命に頷く。

「私に覚えがないですか?」

グッと顔を近づけ、こちらの顔を覗き込むように聞いてくる。

だが残念ながら目の前の女の子に会った覚えはない。

当然恨みを買うようなことをした覚えもない。

心の中で必死にお前は誰なんだと念じ続けると、思いが通じたのかようやく回答がくる。

「私が誰かわかりますよね? ね?」

僕は懸命に首を振った。確認するように何度も聞かれるが、目の前の子に覚えはない。

「そう、わからないの。私の名前はね……」

僕は唾を飲み込み少女の正体を明かしてもらう心の準備をする。

「私は……」

少女は僕の目を見ながら名乗る準備をする。

「私は誰なの?」

「え?」

予期せぬ答えが返ってきて、思わず聞き返してしまう。

「ねえ、私は誰なんですか!」

少女は僕の肩を持ち、体をゆするが当然わからない。

「なんで私は記憶がなくなってるんですか? 教えてください……」

泣きつかれてもわからないものはわからないし、そもそも口を封じられていて答えようがない。

「あなたもわからないんですね……」

少女は落ち込む。

仮にうまいこと、少女の正体を知っている人を捕まえることができても、この尋問スタイルでは、口を封じられているため、答えられないのではないだろうか。

「いつになったら私が誰かわかる人に会えるの……。また次の人を連れてこないと……」

出ていった彼女を見ながら思う。

とりあえず縄を解いてほしい、と。

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