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エゴの自分vsほんとうの自分

私の指導者養成講座では、ヴェーダ哲学と心理学の観点で、エゴと向き合い自己成長を目指します。ある日の哲学のクラスで、生徒さんから「なりたい自分になる」という考えはエゴですか?と質問をされたので、今回はヨーガ哲学の観点でエゴについて解説します。

エゴの自分と本来の自分

エゴの視点で「なりたい自分になる」という考えは、個人的な欲望から出発することが多いです。自分の理想や目標、社会的な期待に基づいて自己を変えようとするアプローチです。エゴは、個人の欲望や外部からの影響を基にして自己を定義しようとします。

ヨーガ哲学のアプローチ

ヨーガ哲学の教えは自己の探究なので、自分を変えるのではなく、自分を深く理解して、内なる真実にアクセスすることが重要とされます。ヨーガの実践は、エゴを超えて本来の自分と繋がるための道であり、自己の内面に向かうプロセスです。アーサナ、プラーナーヤーマ、瞑想はそのための実践です。

変化の受容

ヨーガの教えには、変化は避けられないものであり、自己の本質を見つけるために変化を受け入れることが強調されます。その変化は、エゴによって定義された目標や理想に基づくものではなく、内面の平和と調和に向かうものです。

養成講座を受講される生徒さんに変化が見えたとき、「〇〇ちゃん、変わってきたね!」と言ってしまうのですが、その「変わった」は、外的な部分だけではなく、これまでの価値観や拘りを手放してみようといった前向きな気持ちと、変化を受け入れる素直さがエネルギーにあらわれます。自分をどうにか変えよう、理解しよう、というコントロールのエネルギーではなく、全てを委ね、まずはやってみよう、という柔軟な意思が思いもよらない変化を引き寄せ、それがのちに「人生が変わる」出来事になるのです。

ヨーガ哲学では、本来の自分(真我/アートマン)は、普遍的で変わらないものであり、自己の内面の深い理解や精神的な覚醒を通じて認識されるものです。

自己啓発とヨーガ哲学の違い

自己啓発も同じく自分らしく生きるための学びとして存在しますが、それぞれ異なるアプローチがあります。

自己啓発は、主に個人の成功や自己実現に焦点を当て、外的な目標設定や達成を重視します。スキルの向上や成果の追求、自己改善に向けた具体的な方法や戦略を提供します。自分を変えることで人生をより良くしようとするアプローチです。

自己啓発は外的な目標や成功に焦点を当てる一方で、ヨーガ哲学は内面的な真実や自己の本質との調和を目指します。両者はアプローチが異なりますが、自己啓発の過程でも内面的な成長や精神的な平和を追求することができれば、ヨーガ哲学との共通点も見出せるかもしれません。

ヨーガ哲学では、エゴからの欲望や目標設定よりも、内面的な真実や普遍的な自己との繋がりが重視されます。ですので、「なりたい自分になる」ことが本来の自分に近づくことではなく、むしろ内なる自己を探求し、エゴを超えて真の自己を認識することが重要とされています。

ヨーガやアーユルヴェーダの哲学の講義を受けるときの精神状態によっては、自分の欠点を突きつけられたように感じてしまい、それが苦しく感じることがあります。まわりと比較して自分がとても小さく感じてしまうこともありますが、これらの感覚は、自己認識の深まりと内面的な気づきが促されたときに起こります。自己成長の旅の一部として、気づきを得るための大切な過程です。

ヴェーダの学びは理解しようとするのではなく、生きた教えに"触れる"ことが本来の学びのスタイル。グルからの指導が不可欠です。グルは経験と知識を持ち、私たちが迷わず正しい道を進むための導きを与えてくれる存在です。

聖典の学びは一生かけて学ぶので、数ヶ月、数年間で理解するのは難しいといわれています。本当に理解したとき、誰かと比較する意識が薄れ、行動そのものが変わるので、自ずと自分を取り巻く環境が変わります。

結果や結論に焦ることなく、日々の実践を続けていった先に、真の理解に運ばれるでしょう。


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