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861枚の記憶から

高校生活も気付けばあと一年。三年生を目前に迫ってきたのは修学旅行という青春の一大イベントでした。
コロナ禍だったこともあり、中学在学中には終ぞいくことが出来なかった修学旅行。何処へ行きたいのか話し合う時も、旅のしおりを作っている時もあまり現実味がなく、気が付いたら当日。新幹線で名古屋駅を通り過ぎた辺りで少しの焦りを感じ、新大阪駅で御堂筋線の表示を見た時、その瞬間にやっと自分の修学旅行が始まったと思いました。同時に始まったからにはあと数日で終わってしまう、とも。
そこからはまぁ時間の経つことの早いこと早いこと。毎日がすごく楽しくて、ご飯も美味しくて、同室のメンバーも最高でした。思い返せるようにと意識して撮り続けた写真は最終的に861枚の記憶となりました。
 四日間、どの日についてでも書くことができますが、今回は三日目の記憶、直島について書こうと思います。

使い古された言葉になってしまいますが、直島は一言で言ってべらぼうに美しい島でした。
芸術の島というだけあって、島内には高名な芸術家の芸術品が数多く点在しており、島に訪れる人のひとりひとりが美術館の中を歩く鑑賞者であるように思えました。
また島内では様々な国の人とすれ違う事が多く、聞き取れない外国語もたくさん聞きました。でも島の中では誰がどこから来たのかなんて大した問題ではないように見えました。
黄色い南瓜の前で中国語なのか韓国語なのか分からない言葉で話し掛けてきたマダム達は、かわいい!と褒めながら写真を撮ってくれました。彼女たちが写真を撮る際に言った『ハナ、トゥ、セ』を倉敷のホテルで調べてみたところ、韓国語のようでした。彼女たちが韓国から直島を目指してやって来てくれたと思うと、何故かとても嬉しくてふかふかのベッドの上でニンマリ笑いました。

人も景色も優しくて、薄い桃色の暖かみで満ちていました。島は人を迎えたり送ったりすることで完成するひとつの作品であるように思えました。
借りた電動自転車のペダルを力いっぱい踏み込んで、海岸を轟々と飛ばし、風を顔全体で感じながらグン、ともうひと漕ぎしました。凍える海風を忘れるくらいに真っ青で一面に拡がった大きな海が雲間から射し込む陽光を反射してキラキラと光っているのを見て、ただただ良い場所だと感動したのを覚えています。
ひとつの島の中で一日が綺麗に溶けて収まっていく感じがして、絶対にまた来ようと思いました。次は行けなかった地中博物館に行ってみよう、凄く海が綺麗なところだったから母にも見せたいな、島で一晩泊まってみたいなぁとか。いつかの未来の目標にもなった旅でした。

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