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VTuber目線でSIGGRAPH 2019を振り返り、SIGGRAPH ASIA 2019に備える

まもなくSIGGRAPH ASIA 2019(11月17日-20日 ブリスベン開催)ということで、あえて今のタイミングでSIGGRAPH 2019を振り返りたい。

SIGGRAPH2019は2019年7月28日 – 2019年8月1日に開かれた。

SIGGRAPHとVTuberの関係

SIGGRAPHとは、「世界最大かつ最高のコンピュータグラフィックスの祭典」と呼ばれているカンファレンスで、ハリウッドの映画技術や、最新テクノロジーを使ったインタラクティブコンテンツも含まれており、本来のカンファレンスらしい学術発表だけでなく、映画やゲーム、VRやAR、エンタメ以外の技術も含まれている。そして、当然VTuberに関わる技術も含んでいる。

つまり、その世界最大かつ最高のCGの祭典で、VTuberの世界的な立ち位置を感じられることができるのだ。今後VTuberは世界に対してどのようなインパクトを与えていくのか、その手応えと感触を伝えたい。

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VTuber・Virtual Beingsと世界

最初に伝えなくてはいけないのは、まだ知名度は薄いということだ。VTuberという言葉は出てこない。強いて言うならVirtual Beingsだし、Virtual Influencerと括られることもある。

そう、海外のバーチャルインフルエンサーといえば、ミケイラがいるのだ。ファッションブランドを着こなし、曲をリリースし、普段からInstagramを更新する。

ちょっとフォトリアルな方向性なので、VTuber文化の人には受け入れ難い部分もあるかも知れない。

ハリウッドクオリティのモーキャプと生配信

さて、ちょうどこのSIGGRAPH2019でモーションキャプチャーとフェイシャルモーションキャプチャを駆使して作られた「日本原作の」ハリウッド映画の技術が紹介されていた。それが「アリータ: バトル・エンジェル」である。原作は日本の漫画「銃夢」だ。

さすがハリウッドで使われているモーションキャプチャー。技術的には、ここまでのことができるのだ。

この最新の技術力の「生配信」を、real time liveというSIGGRAPH内のイベントでデジタルドメイン社がデモを行なっていたので紹介したい。

このようなモーションキャプチャの技術が企業展示コーナーでは非常に多く見られ、VICONのshogunを中心に多くのVICON関連展示が見られ、OptiTrackも大きなスペースを使ってデモを行なっていた。

しかも、このreal time liveの会場は、2011年に初音ミクが初めて全米デビューした旧ノキアシアター、現在のマイクロソフトシアターだということに、少し感慨深いものを感じる。

Virtual Beings Worldの熱気

ここで、VTuberに直接的に関わるところについてお話をしたい。それは私も携わった、Virtual Beings Worldおよび、World VTuber Showcaseだ。詳しい解説はVRon webmediaにて紹介されているのでそちらを見ていただきたい。

VTuberに関連する技術について、名だたる企業が発表を行い、そして多様な言語のVTuberが動画を発表し、受賞されたのだ。そして会場は満席だった。英語字幕か英語かは、あまり関係なく笑いが起こっていたことも、特筆したいところだ。

ただ、私たちの目にする表現に近いVTuberについて、企業展示を見てみると、台湾のVTuberの会社のブースがあったくらいで、まだまだ広まっているとは言えないところがある。

しかし、欧米では傾向としてはフォトリアルな傾向があるものの、フランスで生配信されたディズニーのladybugのような事例も出てきているのも事実だ。コメントもすごい勢いで流れている。

さすがディズニー。こういったクオリティの高いコンテンツをみていると、VTuber技術がハードウェアの進化に伴って出来ることが増えるであろうことは容易に想像できる。

バーチャルAIのMikaとの非言語コミュニケーション

最後に、もうひとつマジックリープ社のMikaを紹介したい。ARゴーグルのメーカーであるマジックリープ社のデモ展示MikaはバーチャルAIが体験者とコラボレーションして絵を作るというものだ。

Mikaもまた、Virtual Beingsである。そして非常に感情に訴えかける作品であり、さらに大人気だったのだ。人気すぎて朝の1時間でチケットが売り切れてしまうほどだ。

何がそんなに良かったかというと、自身の動きに合わせて、Mikaがこちらに視線を送り、目が合い、微笑みかけ、顔を覗き込み、そして案内してくれる、その非言語コミュニケーションの中に打ち解ける瞬間が存在するからだと私は感じた。

Mikaは喋るわけではない。すべてはジェスチャーと表情で表現されるのだが、どれも非常に自然で、そして好感が持てる。

これに、コンシェルジュAIの可能性を大いに感じたし、ARゴーグルのマジックリープの視野角が広がったことで、机を挟んで向かい合うMikaの上半身がすっぽりと描画領域に収まっていることは、非常に大きな技術的進歩だった。

私から見たSIGGRAPH2019

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さて、SIGGRAPHであったことを、それ以外の出来事を絡めて紹介してきたが、さすが世界最大のCGカンファレンスで、そしてハリウッドのあるロサンゼルスでの開催、技術は最先端だ。

しかし、ここで改めてVTuber視点で見てみると、この先VTuberたちの未来がどこに向かっているのか考えさせられるものだった。

shogunブースで見た、VICONでバイオリンとギターの演奏を指の動きまで追うことは既にかなりの精度で表現されている。それをより扱いやすく低コストなものが、この先増えていくだろう、それはフェイシャルモーキャプについても同じだ。

ただ、それは方向性のひとつでしかない。それをMikaが予感させてくれた、非言語コミュニケーションによる感情の共有。

そして、技術の活用と進化の先に、世の中の過処分精神を満たし、より豊かな感情とコミュニケーションを求められるとしたら、今VTuberの現場で求められている人の心を動かす技術に昇華させるために、さらに次の進化が見られるのではないかと感じた。

私が期待するSIGGRAPH ASIA 2019

もう一歩突っ込んだところでお話したい。最近のVR界隈は、センサー、触覚の進化を感じる。そして、より簡易的で一般に浸透しやすいツールによって、多人数と双方向コミュニケーションできるものが求められている。

Mikaで感じた感動を、さらに強烈に、そして同時に大人数に届けられる進化。そして、それが双方向に反応し合うこと。そんな未来が訪れることを妄想している。

まもなく、11月17日-20日で開催されるSIGGRAPH ASIA 2019への期待が高まる。


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