存在感

ある一定の人数で集まると自分の存在感がとたんに消えてしまう。


消えるというか、会話について行くことに必死で話に入る余裕がない。みんなは間髪入れずにポンポンと、まるでキャッチボールをするかのように言葉を発して返していく。私はボールをキャッチすることはできるのだけれど、持ったまま投げ返すことができない。どうしてなのか、一旦頭の中にしまいこんでしまう。考えなければなんと返すのが正しいのかわからなくて、言葉が出てこない。そうしてる間に他の人がいとも簡単にボールを投げ返してしまう。


だいたい4人以上の会話になるともうダメだ。たとえどんなにこの世でいちばんだいすきな人たちと会話をしていても、うまくボールを投げ返せない。たったそれだけで世界の終わりのような気持ちになる。



たぶん他の人から見たらうんうん頷きながら話は聞くけれど自分のことはなにも話さないし、「この人なんなんだろう」と思っているのだろうと感じる。初対面の人には「結局どんな人なのかわからなかったな」という印象だけが残る。いや、印象にも残らないからすぐに記憶から抜け落ちる。


「あのときもう一人いた気がするんだけれどなあ」

そんなセリフを吐かれるのだ。




キャッチボールは、投げ返せないとキャッチしても意味がないし、キャッチしたことにもさせてもらえない。ただただボールを受け取れないやつ。それで終わり。


じゃあ会話なんてやめればいい。人と話さなきゃいい。会わなきゃいい。


正直、日本は一言も発さないでも生活していける国だと思う。特にわたしの仕事はWebで全部完結するものがほとんどで、フリーだから全部ひとりで完結する。買い物だって最近はセルフレジがたくさんあるからそれを使えばいいし、服や化粧品だってオンラインで買えば勝手に届く。下手したら家から一歩も出ないでいいかもしれない。ぜんぶぜんぶ、ひとりきりで出来る。



やめてしまうことは簡単に出来る。













でもきっと、そんなことしたら孤独で死んじゃうから。最初は会話のストレスもなくて快適で楽しいのだろうけれど、誰とも話さない会わないというのは想像以上に精神的にくる。どんどんどんどん孤独感が増して自分は一人だって感じて誰にも助けなんか言えなくて、きっとそういう人のもとに死は寄ってくる。




そんなのいやだから。

だから私は今日も、しんどくても人に会う。








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