見出し画像

「松林図屏風」

「松林図屏風」
東京国立博物館



さて、三井記念美術館にある「雪松図屏風」のほかにもう1つ、お正月にしかお目にかかれない作品があります。上野にあるトーハク(東京国立博物館の愛称)にある長谷川等伯の「松林図屏風」です。

トーハクは日本美術と東洋美術に特化した日本最古の由緒ある博物館なので、持ってる作品がとにかく全部やばい。そんなやばい作品の中でもこの「松林図屏風」は超やばいやつです(説明の仕方な)

ちなみに「トーハク」と「等伯」はたまたま同じなだけで別にずぶずぶな関係とかではない。はずです。


さて、お正月で人が賑わう中、お目当ての「松林図屏風」がある部屋に向かったわけですが、近づくにつれて異様なオーラを感じざるをえませんでした。危機感すら覚えるような。

部屋に入った途端、空気がガラッと変わるのがわかったし、静寂と狂気の紙一重みたいな気に包まれていました。

人がたくさんいるのでみんなの温度や話し声やカメラのぱしゃぱしゃする音でだいぶ空気が緩和されているけど、これ、けっこうやばいやつだなと思いながら屏風に近づいてみると、遠くから見てたふんわりぼやぼやな松林ではなく、ざっ!ざっ!ざっ!ざざざざー!!!ってめちゃくちゃ猛々しい筆致で描かれててびっくりしてしまいました。巨匠~!!!って感じの筆遣い(語彙力が無いだけで馬鹿にしているわけではない)。

近付いてみるとその迫力、生命力に驚くのですが、少し離れて見ると、屏風の山折谷折の効果も相まって深い霧に包まれた松林にたった一人で放り込まれたような孤独を感じました。

すべて言葉で語る野暮さみたいなのが一切無く、わたしはこの作品を見て悲しいと思ったけど、もっと違う感情を抱くひともいると思う。

お正月だし、松だし「おめでたい絵」なのかと思っていたけど、どうやら一癖も二癖もありそうな、ミステリーハンター遠藤が世界不思議発見したくなるような屏風絵でした。


実際この絵にはいまだに解明されていない謎があって、紙が本番には使わないようなチープな素材であることや、通常の屏風サイズより横が長すぎることや、あちこちに墨の飛び散りみたいなものが付いてる点などから、この絵は屏風絵ではなくどこかの障壁画を描くための『下絵』として描いたやつなんじゃないかと言われてたりします。

でも!下絵では普通使わないであろう最高級の墨が使われていたり、屏風が奥へ折り曲げられている箇所では樹木も奥に向かっていたりと遠近感をはっきりと計算して描かれており、屏風絵として鑑賞されることを想定しなければ不可能な工夫がいろいろ凝らされてて、うーんいったいこれはなんなんだ?!と、未だに謎のままだったりしています。



また、等伯は自分の理想の絵画は「静かなる絵」であると考えていました。

「静かなる絵」とは雪、夜、雨、月、煙 (霧)が描かれたものを指すそうで、まさにこの絵は等伯の理想とする「美」の形なんだそうです。「おれ、雨の夜が好きなんだよね…」って言ってるやつ大体変なやつだけどわたしは好きだよ、安心して等伯。


ちなみに☆太陽☆朝☆虹☆ラブ&ピース☆みたいなの描いてる人この時代にいないのかな。調べてみよう。


というわけで、お正月に見るミステリアスロマンチック松林もなかなか乙だなと思ったのと、等伯がスピードワゴン小沢のもっと本気バージョンのマインドをお持ちということを知れたいい機会でした。(今回の感想これでいいのか)

(誤解しているかもしれないのでちゃんと等伯のこと勉強しようと思います…!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?