岸亜弓
貴方たちが何者なのか、わたしにはまだよくわからないのですが、とりあえず書き留めていきます
彼女は今日も走っている。
どんどん、生きているうちに、また会いたい人が増えていってしまう。 仕方ない、じゃあ生きとくかって、 ずるずるずるずる、 日々前向きに諦めていく。
大丈夫だから 心配いらないから 草木が生えて枯れるように、 私たちも生きて死ぬだけ もしかしたら通りがかったゾウに 踏み潰されるかもしれないけれど ゾウはそこを通りたかっただけ 理由なんてないから
明転 一人の若い男(ハヤト)が、立っている。 そして彼を見つめる沢山の目。目。目。 そこに感情の色は無い。 じわり。息が詰まる。 ミホ 「ハヤト?」 はっ。 気付くと、周りの人々はいなくなっている。 ハヤト 「あ・・!ミホさん。」 ミホ 「ちょっと何ー?コワい顔しちゃって。」 (なんかイヤな予感がしたんだ、だから。) ハヤト 「いや・・・・。寒いっすね、今日。」 ミホ 「え?そうかな?まあ普通じゃない?それより、店長が呼んでる。きっとお昼休憩だよ。」 (気をつけ
緑 刑事 とある部屋。何もかも新品かのような部屋だ。 隅から隅まで掃除されていて、空調は完璧に外からコントロールされている。 机の向こうに、穏やかで人のよさそうな刑事が座っている。 刑事 「たそがれ」の語源って知ってます? 緑 イエ 刑事 「たそ」が“誰だ”、「がれ」が“彼は”、という意味の古語で、「たそがれ」と言うと「あそこにいるのは誰だ」、つまり向こうにいる人がはっきりと見えなくなる時間帯のことを指す言葉なんだそうですよ 緑 へえ。どうも勉強になりました
宝(秘宝)・・・登場人物1 緑(枯葉)・・・登場人物2 二年ほど前ー 冷たい、廊下。 大学の研究棟は古くて暗く、いつも外より2℃くらい気温が低いんじゃないか、と宝は思っている。 そこに、音。 何かが立て続け落ちる音がする。 ふつりと消えたと思うと、さらに濃い静寂が訪れる。 宝は眉ひとつ動かさない。 何の迷いもなくまっすぐと、とある扉の前へ行く。耳を澄ませる。 ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。 白く霞んだ部屋の中に、動く人影。緑である。 宝 うわっ 緑 あの教
秘宝・・・登場人物1 枯葉・・・登場人物2 キッチン、と聞いて思い浮かぶのは、 安っぽいプラスチックの白。 狭い学生用アパートの、小さなキッチン。 白い木の枠組みに、プラスチックの取っ手、 黒く丸い電気コンロ。 調理スペースもないし、洗った皿をかけておく場所もない。 廊下と兼ねているような、そんな場所。 そこに、秘宝と枯葉の二人が並んで立っている。 両手鍋の中を覗き込みながら、 秘宝 やっぱだめかな 枯葉 だめじゃない 秘宝 加熱したらいけないかな 枯