タイトル未定
「たまにさ、叫びだしたくなることない?」
「うーん…俺はないかな」
「へー。あんたってやっぱノー天気なんだわ」
「なんだよ、人をバカにして」
「とにかくさ、人混みのなかとか歩いてると、なんか、急にわーっ!て叫びたくなるんだよね」
「それは世の中に不満があるとかそう言うこと?」
「不満て言うか…なんだろう、無性にイライラするんだよ。どいつもこいつもなんにも悩みないような顔して楽しそうにしやがって、って」
「そりゃお前が知らないだけで、悩みがあるとかないとかわかったもんじゃないだろうに」
「まあそうなんだけどさ。時々この世のなかで、自分ひとりが不幸なんじゃないかって、思っちゃうんだよね」
「で、叫びたくなるのか」
「うん」
「じゃあ、叫んでみるか?」
「え?」
「一緒に叫んでみるか…わあーッ!」
「え、ちょっ、嘘でしょ?」
「わあーッ!ほら、叫んでみろよ」
「やだ、ちょっと、こんなところで」
「だってお前が叫びたいって言ったんだろ?」
「そりゃ、そうだけど」
「案外気持ちいいもんだな」
「皆がじろじろ見てるよ」
「気にするなよ。それ、もう一度。わあーッ!」
「もう。わかったわよ…こうなったら」
「わぁーッ!」
「なんだ、声ちっせ」
「だって…もう、こうなりゃヤケクソ。わああああッ!」
「お、いい感じじゃん。わあああああああッ!」
「まだまだ!わあああああああああッ!」
「あ、やべ、お巡りさん来た」
「え?やだ、どうしよ」
「逃げろ!」
「ちょっ、待って!」
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