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毒親に育てられて

怖い…

この子を愛せるか怖い…


夜の輝きのために
びっしりケーブルが巻きつかれた
木々を見上げながら

わたしの体にいる新しい命に
縛られている自分を重ねあわせる

きっと普通の人は嬉しいのだろう
愛せるかどうか不安にならないのだろう

わたしは…怖い

あの人のように
鬱陶しいと怒鳴るかもしれない
邪魔だと蹴り飛ばすかもしれない

子どもがどれだけがんばっても
冷めた目で見つめつづけるかもしれない

わたしは…怖い

どうしたらいいのだろう…

夫に言えば
輝くばかりの笑顔で喜ぶだろう

その顔を見たら
また心が縛られてしまうだろう

怖いと言ったら
夫はどんな顔をするのだろう


わたしは…怖い


ピンポーン


薄暗い部屋で、ハッとする

もうこんな時間!

「ごはん、これからなの。ごめんね」

夫を見ないようにしながら
キッチンに向かう手を引き留められた

「なにか、あった?」

真冬なのに暖房さえついてない部屋と
冷えきったわたしの手に
心配するこえが聞こえる

「なにか、あった?」

包み込まれるような暖かい声に
縛られた心がほどけていく


泣きじゃくりながら話すわたしを
温かい手が抱きしめる

「大丈夫。ぼくも一緒に怖さに付き合うよ」





夫と手をつなぎ
イルミネーションに輝く街を歩く

夫の胸元には
まん丸な瞳をキョロキョロさせる
愛おしい息子が抱かれている


去年と同じ道を歩きながら

「大丈夫。わたしの子どもはかわいいよ」

縛られた過去のわたしにそっと話しかける


大丈夫だよ

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眠れない夜に

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