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海外のエネルギー事情。新型原子力発電所の登場。

原子力発電というのは、
1. 低炭素で、
2. 出力が大きく安定していて、
3. 燃料が入手しやすいため、
電力安定と低炭素化を両立するために有効な選択肢として、世界的に開発が進められています。

今回はその中のひとつ、SMRを紹介します。

SMR:Small Module Reactor

原子力の分野はよく略語が使われます。
BWR:Boiled Water Reactor(沸騰水型原子炉)とか、GCR:Gas Cooling Reactor(ガス冷却炉)とか。
三文字で末尾がRだったら、ナントカ カントカ リアクターの略で、ある形式の原子炉を表していることが多いです。
そして今回登場したSMR:Small Module Reactor、日本語では小型モジュール炉と訳されることが多いように思います。

SMRの特徴は
1. 従来よりも小型かつ低出力
2. 画一化されたパーツで構成されている

という点です。
名前のとおりですね。
それぞれ、もうすこし詳しく確認してみましょう。

大出力が売りなのに、なんで低出力化しちゃうの?

まず、これまで主流だった大型の原子炉では、だいたい100万KWの出力が出ます。
これに対して現在開発されているSMRの出力は数万KW、せいぜい10万KWというところです。

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なぜ出力が大きいほうが良いのでしょうか?
これはもちろん、規模の経済を効かせるためです。
つまり、デカいほうが安く効率よく発電できるわけです。
(ものすごくざっくりさせてますが、入り口の理解としてはこんなもんで)

ではなぜ小さくしてしまうんでしょうか?
小さくすると、原理的に重大事故が起きない原子炉になるためです。
福島第一原発事故では、炉心を冷却する機能が失われ、燃料から発生する崩壊熱を除去できず、原子炉容器がダメージを受けることになりました。容器へのダメージは、内部の放射性物質の放出につながります。
このような重大事故はある意味、崩壊熱を除去できないほど大量の燃料を入れるから起きるわけです。
そもそも外部電源によって冷却しなくても、放っておけば勝手に冷えるくらい小さな原子炉であれば、冷却機能の喪失から事故に至ることはありません。

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その代わり、低出力ゆえに、電源として期待するためには多くのSMRを設置する必要があります。
大型原子炉と同じくらい(=100万KW)の出力を得るためには、10基以上のSMRを設置しなくてはなりません。

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するとどうなるかといえば、コスパが悪くなります。
何基も作るためにはそれだけの工事費がかかり、工事期間がかかります。
そして電力会社だってビジネスでやっているわけですから、コストがかかることはしたくありません
じゃあどうするか?

工事が簡単になれば良くない?

そこで、原子炉の構成部品をモジュール化する、というアイディアが登場します。
これまで1基ずつ設計/製造/工事していた原子炉ですが、SMRでは共通規格の部品を大量に製造し、工場出荷段階である程度組み上げてしまい、それを現地でカチャカチャっと組み合わせれば、ハイ完成。
こうすれば大量生産による製造コスト低減と、工事簡易化による工事コストおよび工事期間低減が達成されます

そうして安く作れるようになれば、各地に分散電源としてSMRを配置し、再生可能エネルギーの不安定さを補助することで、低炭素電源網を形成することができます。

すなわち
1. 重大事故になりにくく
2. 経済性の問題がそこそこ解決され
3. 作るのが簡単な原子炉が
SMR!
ということです。やったね。

さて、言うは易しと申しますが…

理屈はわかっていただけたと思いますが(いただけましたよね?)、SMRはまだ商業レベルで実用化されてはいません。
理屈は以上のとおりなんですが、本当に経済的に合理的なのか、そしてモジュール形式で建造して、本当に安全が確保されるのか
結局のところ、それが十分に確立されていないのが現状です。

とはいえ、原子力産業の輸出でブイブイ言わせている中露、そして原子力分野での復権を目指すアメリカは、今後かなり力を入れると予想されます。
アメリカではSMRの建設・運転の認可申請(国から「原子炉作って動かしていいよ!」というお墨付きをもらうための申請)がスタートしており、建設期間を考えても、そう遠くない未来に商業レベルで実現するかもしれません。

個人的には、地震が多く事故リスクがある日本こそ、こういった小型化の道を取るべきと思いますが…やはりモジュール化の安全性をどう確保し、そして公衆にどう説明するかが課題です。
工事コストを下げられれば労働人口の減少に対応できますし、1基あたりのコストが下がれば過疎化した人口分布に適応しやすくなります。
日本製の開発はなかなか難しいように思いますが、海外に学ぶ形式で、ぜひとも取り込んでいきたい技術です。

海外ではベンチャー企業が積極的に取り組んでいるのも、日本人からすると意外なところです。

しかしインフラに食い込めるというのは、起業家なら誰しも垂涎の的なのではないでしょうか。
いかがですか!?
インフラに入り込むチャンス、狙いませんか!?

まぁ狙わなくてもいいんで、世界的なエネルギー動向として覚えておいてください。
どっかで致命的な事故起こさないかぎり、SMRは来ます。

ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。