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【Interview vol.3】 「家庭科は、他者との共生に役立つと伝えたい」 信念を貫いて 夢をかなえる方法

何か新しいことにチャレンジするときは、だれでも初めは少しこわい。そんなとき、だれかのささいな一言で「やっぱり私には無理だったんじゃないか……」とさらに自信がなくなってしまった経験はないでしょうか?

今回インタビューした家庭科教師のYさんも、「無理じゃない?」「やめた方がいい」というまわりの心ない声に、毎日辛くて泣いていたそうです。
そんなYさんが、「他者との共生に役立つ家庭科を教えたい」という想いや信念を貫いて、夢を実現した方法とは?お話を伺いました。

(今回取材を受けてくれたのは、このエピソードのなかで紹介した友人です。筆者自身が過去に、彼女の「先生になりたい」という夢を茶化すような言葉を投げかけてしまっていました。そんな経緯がありながらも、私がライターへキャリアチェンジしたことを喜んでくれ、今回の取材依頼を快く引き受けてくれた友人に感謝したいと思います。)


リーダーシップをとる人にこそ、知ってほしい

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–––今Yさんがどんなお仕事をされているか教えてください。

中高一貫校で家庭科の教師として働いています。この4月からは中学2年生の担任も受け持つことになりました。

教えていることは、衣食住、家族、保育、高齢者、消費生活、環境まで、人の一生に関わることはすべてですね。私たちが子どものころと比べると、教えなければいけない内容が増えていると思います。

–––そうなんですね。教師になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

大学は教育学部でした。でも、当時は教師になるつもりは全然なくて。

4年でとある特任教授のゼミに参加したときに、「家庭科は調理裁縫の合科ではない。自立だけでなく他者との共生に役立つ教科だ」という言葉を耳にして。今までの概念を覆されたようで、衝撃を受けましたね。

こんなに大事なことだったら、これから社会に出る若い人にこそ知ってほしい。ぼんやりと教師になりたいなと考えていたところに、この想いが明確になった出来事がありました。

–––何があったんでしょう?

私の友人たちに普段の生活について聞いたとき、衝撃を受けたんです。一人暮らしなのに包丁を握ったことがなくて、毎日コンビニで済ませている子。ほかにも、洗濯機を回したことがない子もいて。ショックでしたね(笑)。

だって、彼らはすごく頭も良くて、志も高い。将来はきっと医者や大企業で高いキャリアを歩む人たちです。自分の身体はこれからの人生で一番大切にしなければいけない資本なのに、自身の生活や健康に無頓着なのは悲しいと思いました。

社会に出てリーダーシップをとる人にこそ、家庭科の正しい知識を得てほしい。社会を知ることで、自分の「なりたい」を早い段階から考えてもらえたらいいですね。

「絶対無理」「やめた方がいい」まわりの声に、毎日泣いた

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–––家庭科への想いが、Yさんの教師としての原動力なのですね。

教師になりたいという人は、主に「子どもが好き」と「教科が好き」のどちらかの場合が多いと思いますが、私は後者でした。

家庭科という教科がすごく好きで、「家庭科を教えたい」という想いから出発したんです。

–––たしかに先生を目指す方はもともと子どもが好き、というイメージです。

そうなんです。教員免許をとるために何回か教育実習に行かないといけないんですが、なんせ子どもがすごく好きというわけではなかったので(笑)、実習先で無邪気に絡んでくれる子どもたちとどう接していいかわからず、本当に辛かったですね。毎日泣いていました。

しかも私、もともと自分に全然自信がないタイプで。人前に出ると緊張してしまってうまく話せなかったんです。震える手を押さえて教壇に立っていました

教師を目指していることをまわりの友人たちに伝えたとき、「絶対無理でしょ!」とからかわれたのも辛かったです。私がいつも人前であがってしまう性格だということを知っていたからだと思うんですが……。真剣に「やめた方がいいよ」と諭されたこともありました。

「もしかしたら私には無理なんじゃないか」と一番感じていたのは自分だったので、私のことを客観的にわかっている友人たちの声がすごく響いてしまって。

本番に強い自分と、ポジティブな言葉を信じて

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–––周囲の声を気にしないようにしていても、耳にするとどうしても自信がなくなってしまいますよね。そんな状況をどうやって乗り越えたんでしょうか?

まずは、自分に自信がない理由をきちんと考えてみたんです。私の場合は、人前で話すのが苦手でこわい、というのが大きくて。

だから、授業の前に話す内容を紙に書いて何度も練習したり、友人に模擬授業をみてもらったり、とにかく苦手な部分を克服できるように訓練して自信につなげていきましたね。

あとは、本番に強い自分を信じていたというのもあります。

–––本番に強い自分?

はい。大学4年の教育実習で、母校にいったんです。そのとき、「当時の教えが今のキャリアにどう生きているか」について、卒業生として話してほしいと頼まれて。

150人くらいの後輩たちを目の前にしたら、すごく緊張しましたね。でも、自分の想いを語り出したら止まらなかったんです(笑)。自分でも驚きました。

まわりの教師たちからも褒められて、「なんだ、できるじゃん」って自信がついたんです。

–––そういった成功体験が少しでもあると、心持ちが随分違いますよね。

そうですね。教師を続けていくうちに、生徒たちのリアクションをみながら授業の進行を考えることもできるようになってきて。だんだんとコミュニケーションをとることが楽しくなっていきました。

–––前向きな変化が出てきたんですね。

はい。たしかに夢を茶化されたときは悔しい思いもしました。今となれば「やってもいないのになんでわかるんだろう?」と思いますけどね。

私の家庭科への想いを知っている人たちは、「こういう人ほど先生になった方がいいと思う」と応援してくれていました。一部のネガティブな声に惑わされず、背中を押してくれる人たちの言葉を聞くようにするのもいいかもしれません。

家庭科は、他者との「共生」に役立つ教科

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–––これから家庭科の授業を通して、生徒たちにどのようなことを伝えていきたいですか?

家庭科は、私たちが生きていくうえで必要なことがたくさん学べる大切な教科です。自分と他者、さらにもっと広い範囲で「共生」していくための知識がたくさん詰まっているんです。

特に核家族化が進んでいる今、昔であれば親から子に、当たり前に教えていたことも学べる機会が減っていると感じていて。なおさら、家庭科という教科が果たす役割が大きくなっているんです。

私の授業が終わったあとに、「お母さんと話してみた」「もっと深く調べてたらこんなことがわかった」と言われたときは嬉しかったですね。子どもたちの興味や関心がどんどん広がっていく、きっかけを作れたんだって思って。

–––それは嬉しいですね。今だからこそ、学校での教育が重要になってきているんですね。

そうですね。たとえば、保育の体験授業として、同僚のお子さんを教室に連れてきてもらったことがありました。最初は子どもたちも、慣れない赤ちゃんとどう接していいか戸惑っていました。

でもそのうちに、赤ちゃんが泣くのは決して「辛いから」「悲しいから」ではなく、一種のコミュニケーションなんだ、と学ぶんです。「赤ちゃんがなぜ泣くのか」知らないまま大人になってしまうと、たとえば街中で大声で泣いているのをみて、「うるさいな」と思って終わってしまうかもしれない。

そんな大人になってほしくなかったんです。

自分を大切にするのと同じくらい、他者にも優しくできる大人になってほしい。そのためにはまず、他者を理解することが必要です。家庭科はそういうことを教えてあげられる教科だと思っています。

–––家庭科って、すごく奥が深い教科なんですね。

「ファストファッション」ひとつとっても、普通だったら「服が安く買えてラッキー」と思って終わってしまいますよね。でもその服は、「どこでどんな人たちが作ったんだろう?」と考え、その裏にどんな問題があるのか調べたら、おのずととる行動は変わってくるはず。

自分が普段なにげなくしている行動が、まわりにどのような影響を及ぼしているのか、まずは目を向けてほしいんです。

ここ数年、「SDGs」という言葉が話題になっていますが、これは決して新しい概念ではなく、昔から家庭科で当たり前に教えてきたものです。子どもたちが将来社会に出たときに、頭の片隅に思い出してもらえるだけでも、教えている意味があると思っています。

人生最期の日に、どんな自分でいたい?

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–––とても素敵です……!信念を貫いて夢を実現されたYさんから、「新しいことを始めたいけれど自分に自信が持てない」方に向けてアドバイスがあれば教えてください。

まず思うのは、はじめから完璧な人なんていない、ということです。

今ベテランと呼ばれている人たちだって、きっと新人のころはそうやって自信を失う瞬間だったり、挫折して苦しんだ経験だったりがあるはず。そう考えたら、最初からできなくて当たり前、と思いませんか?

–––たしかにそうですね。

あとは、「やらなかったときにどのくらい後悔するのか」「人生最期の日に幸せだったと思えるのはどんな自分なのか」と当時よく考えていました。

「やりたいわけではないけれど、向いていること」をやるのは、たしかにストレスも少なく幸せかもしれません。

でもせっかく「やりたいこと」に出会えたのであれば、やってよかったと思えるように一歩動き出してみてほしいですね。

–––勇気が出るお言葉、ありがとうございます。最後に、Yさんの目指す理想の教師像があれば教えてください。

そうですね……。ここまで、辛いことや挫けそうなことも「家庭科が好き」という気持ちを原動力にやってきました。なので、これからもその信念だけはぶらさずにいたいですね。

–––素敵なお話をありがとうございました!

インタビューを終えて

何か新しいことを始めたい、そんな夢や志があること自体が素晴らしく、尊いと思う」と取材中に話してくれた彼女にはもう、自信がなく毎日泣いていた過去の姿は微塵も感じられません。

「家庭科が好き」。その信念と想いだけで、彼女は今後どんな困難をも乗り越えていくのだと、確信しています。

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Aya

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