和泉綾透

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和泉綾透

恋愛小説・青春小説などをこつこつ書いてます。 NOVELDAYS→https://novel.daysneo.com/author/Izumi-Ayato/、 カクヨム→https://kakuyomu.jp/users/AyatoIzumi、 Amazon→「和泉綾透」で検索。

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私の百冊 #22 『実力も運のうち』マイケル・サンデル(機会平等がもたらすディストピアと、呪術廻戦が描く道徳哲学)

はじめに noteに投稿すること自体、かなり久しぶりになってしまった。中でもこの「私の百冊」と勝手に銘打ったマガジンは、「#21 ロリータ」を最後にまったく更新できていなかった。そう、できなくなっていた。 せっかく百冊を選ぶのだからちょっとカッコつけたいよなあ…と考えてしまったのだ。自縄自縛と言っていいだろう。――というわけで、カッコつけずに選び直した最初の一冊が、サンデル先生の『実力も運のうち』である。 なんだよ、やっぱりカッコつけてるじゃねえか、はッ!――と思われた方

    • 「算数には国語力が大事!」という大いなる誤解について。

      「ことばと算数 その間違いにはワケがある」 (岩波科学ライブラリー312) https://www.amazon.co.jp//dp/4000297120/ これは昨年のベストセラー(とまでは言えないかもしれないけどちょっと話題になった)本である。先日どこかで(どこだったか忘れたけど)、本書の読者が「算数に大切なのは国語力なんですね!」と嬉しそうに、我が意を得たり!とばかりに書いている(あるいはしゃべっている)のを見て、本書を読んでも尚そうなるのか…と溜め息が出た。いかに根

      • 日々の泡沫(9)――「お父さん、臭いからあっち行って!」問題と、「オイディプス王の悲劇」について。

        本件には、様々な展開がある。 「お父さん、隣りに座らないで!」 「お父さん、先にお風呂入らないで!」 「お父さん、同じタオルで顔拭かないで!」 いずれも、「お父さん、臭いからあっち行って!」を抽象クラスとし、そこから現実界に顕現される様々な具体事例である。 ※挙げようと思えばいくらでも事例は挙げられるのだが、世の中の「お父さん(娘さんを持つ)」をいたずらに傷つけるのは本意でなく、かつ本稿の主題でもないので、三つまでにとどめておきたい。 娘さんがこれを口にし始めたとき、いわゆ

        • 話題の「ボトルネック奏法」についてちょっと解説めいたものを書いてみたくなっただけの記事。

          「ぼっち・ざ・ろっく」最終話で、機材トラブルを回避したぼっちちゃん(後藤ひとり、CV.青山吉能さん、Guitar Play:三井律郎さん)の小技「ボトルネック奏法」について、ちょっと書いてみたくなっただけの記事です。……ので、そんなものは知っているという方は、まあ読み飛ばすなり読み流すなりしてください。 まず、エレキギターがどのように弦の音を調整しているか?という、簡単な解説から始めたい。そもそもここがわかっていないと、「ボトルネック奏法」を理解するのは絶望的に難しいので。

        私の百冊 #22 『実力も運のうち』マイケル・サンデル(機会平等がもたらすディストピアと、呪術廻戦が描く道徳哲学)

        • 「算数には国語力が大事!」という大いなる誤解について。

        • 日々の泡沫(9)――「お父さん、臭いからあっち行って!」問題と、「オイディプス王の悲劇」について。

        • 話題の「ボトルネック奏法」についてちょっと解説めいたものを書いてみたくなっただけの記事。

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        • 私の百冊
          22本
        • 日々の泡沫
          8本
        • 鉄道をめぐる諸考察
          4本
        • パニック障害を抱えつつ生きていくお話し
          0本

        記事

          日々の泡沫(8)――「ながらスマホ」は誤用か?正用か?

          本稿を起こすにあたり、そう言えば「誤用」の対義語ってなんだ?とググってみたところ、どうやら「誤用」の対義語が見当たらないことを不満に思った人間が、勝手に「正用」を創作して使い始めたという経緯があるらしい。(何年何月何日の2chのスレで…といった話もないみたいだ) 恐らく「正用」という言葉は、これまであちこちで多発してきたのだろう。世の中に「正誤表」なるものが実在するのだから、「誤用」の反対が「正用」になるのは当然のように思われる。しかし、「正用」の記載がない辞書もあるという話

          日々の泡沫(8)――「ながらスマホ」は誤用か?正用か?

          日々の泡沫(7)――「結束バンド問題」からホワイトリストとブラックリストについて考える。

          全体から部分を取り出そう(あるいは取り除こう)とする際、我々は、「ホワイトリスト方式」か「ブラックリスト方式」か、いずれかを採用することが多い。 ※言わずもがなの説明だが、「ホワイトリスト方式」とは「条件に合致する対象を拾い上げる方法」であり、「ブラックリスト方式」とは「条件に合致しない対象を退ける方法」である。 本稿は、世の中のネットサービスが我々の「ホワイトリスト」「ブラックリスト」を着々と溜め込みつつある問題に一石を投じたいと考え、以下、駄文を認めたものである。 こ

          日々の泡沫(7)――「結束バンド問題」からホワイトリストとブラックリストについて考える。

          日々の泡沫(6)――二次創作画像が単なるコスプレになっている件について

          コミックやアニメに登場するキャラクターの二次創作画像を眺めるのは、なかなか愉しいものである。このところもっぱら話題になっているのはAIを巡る問題のようだが、以下では、僕が非常に気になる(というか、気に入らない)点を取り上げてみたい。AIを闇雲に非難し否定し排除しようとする前に、そもそも…という話である。 ざっくりと、二次創作は概ね4つに分類することができる。 ①上手いし、似ている(特徴をよくつかんでいる) ②上手いが、似ていない(特徴を記号化しただけ) ③上手くはないが、な

          日々の泡沫(6)――二次創作画像が単なるコスプレになっている件について

          日々の泡沫(5)――「ぼっち・ざ・ろっく!」は何故「ぼざろ」と略称されるのか?

          タイトルを見て、「ぼっち・ざ・ろっく!」が「ぼざろ」と略称されることの、どこに論ずべき問題があるのか?と首を捻られた方もいるかと思う。が、論ずべき問題が、そこにはある。明らかにちょっとおかしいのだ。 人は、或る対象の正式名称が、名指しするにはちょっと長いな…と感じたとき、無自覚に略称する生き物である。Twitterのせいではない。むろんTwitterの厳しい文字制限が、これを助長しているのは間違いないにしても。 いくつか略称の事例を確かめておこう。 ・魔女の宅急便 → 魔女

          日々の泡沫(5)――「ぼっち・ざ・ろっく!」は何故「ぼざろ」と略称されるのか?

          日々の泡沫(4)――マキマさんの「デタラメな能力」と「固有名」について

          初めに大急ぎで断っておくけれど、本稿は話題の『チェンソーマン』に関する考察を試みるものではない。それは、冒頭にクリプキの名著を挙げたことからもわかるだろう。 しかし、とっかかりは「マキマさん」(あの妖しくも美しいマキマさん!)であり、我が国で2022年の暮れに「マキマさん」と言えば『チェンソーマン』の「マキマさん」に決まっている。 世の中に幾人いるか数える気にもなれない無数の「まきまさん」の中の誰かではなく、他ならぬ『チェンソーマン』のメイン・ヒロインであるところの、あの「マ

          日々の泡沫(4)――マキマさんの「デタラメな能力」と「固有名」について

          日々の泡沫(3)――男子トイレ(小)の例の貼り紙について

          まずは、下の写真をご覧頂きたい。 男性諸君にはお馴染みの貼り紙である。どこに貼ってあるかというと、男子が小便をする際に立つ、視線の前だ。「男子トイレなんて私わかんな~い」というカマトトな皆さんのために、やや冗長とも言える説明から始めよう。 ※僕の奥さんは実際この貼り紙の存在を知らなかったので。 男子トイレのレイアウトには、明確に「大」と「小」の区分がある。もちろん、諺にも「大は小を兼ねる」と謂われるように、「大」で「小」をしても怒られない。が、「小」で「大」をすることは許

          日々の泡沫(3)――男子トイレ(小)の例の貼り紙について

          私の百冊 #21 『ロリータ』ナボコフ

          ひとまず購入できないことにはどうしようもないので、リンクには若島訳を置いた。大久保訳の文庫版は古い時代(昭和)の版なので、活字が、ちょっとビックリするくらいに小さい。大久保訳をどうしても大きな文字で読みたければ、僕が知る限り、昭和34年の河出書房新社版を探すほかにない。 ところで、本稿を書くに当たって手持ちの本を並べてみたところ、これまでまったく認知できていなかった事実が判明した。↓こちらをご覧頂きたい。 右が大久保訳、左が若島訳。――そう、なんと大久保訳では「1」であっ

          私の百冊 #21 『ロリータ』ナボコフ

          日々の泡沫(2)――AIとテレワークの相似

          まず、本を一冊。 本書をざっくりと(ほんとうにざっくりと)要約すれば、 ①AIにできることは(現時点では)限定的である。 ②AIにできることは今後(間違いなく)増えて行く。 ③AIに負けない人間になることは(難しいけど)可能だ。 さて、「AIに負けない」人間とは、どのような人物だろうか? 本書に記されているのは、「なにが課題かを発見し、その解決のために、なにを目標とすべきかを、AIが理解できるよう設定する」ことができる人物、である。 結論として、最終章に書いてある。 し

          日々の泡沫(2)――AIとテレワークの相似

          日々の泡沫(1)――採血と吸血の道徳哲学的課題について

          以下、採血と吸血について論じる。 血の話、もしくは「血」という漢字そのものを見るだけで卒倒してしまう方は、速やかに本稿を閉じることをお薦めする。すでに「血」という漢字が(見出しを含め)六回(これが七回目)も登場したあとでそんなことを言われても……と困惑されるかもしれない。あるいはすでに卒倒されてしまった方もいるやもしれぬ。すでに卒倒されてしまった方には僕の配慮の至らなさを平にお詫び申し上げたい。 さて、僕は(男性としてばかりでなくヒト一般としても)かなり腕が細い。子供の頃か

          日々の泡沫(1)――採血と吸血の道徳哲学的課題について

          恋愛に於いて「消去法」が愚策であることに関する自明な解

           たとえば或る日、唐突に異性から(同性でもいいけど)好意を告白されたとしよう。しかし、その相手は「ちょっとムリ…」だったので、交際をお断りしたとする。このときあなたは、この世界から選択肢をひとつ消去したわけだ。  このように、ひとつずつ選択肢を消去していくと、その先でいずれ「アタリ」と出会うことができる。すなわちそれが、世に言うところの「消去法」である。  こうして見ると、「消去法」は非常に便利なやつであるかのように思われるかもしれない。実際あなたも今、なるほどそうしていけば

          恋愛に於いて「消去法」が愚策であることに関する自明な解

          論理的に考えるということについて――『数字であそぼ』(3)の違和感

          数字であそぼ。(3) (フラワーコミックスα) 絹田村子 https://www.amazon.co.jp/dp/B081Z1PXR5/ 『数字であそぼ』(3)に、以下のようなクイズがある。 僕が解いたのは、以下の通り。 まず、制約事項は2つ。 ①2人は京都人、1人は大阪人 ②同じ出身の者については真実を言う では、A子が言いました「B子は大阪人やで」について―― もし、A子が大阪人であると仮定すると、②の前提から、①を満たさなくなる。従って、A子とB子は同郷人

          論理的に考えるということについて――『数字であそぼ』(3)の違和感

          鉄道をめぐる諸考察(4)「基本単位としての「駅ひとつ」の可能性について」

           私たちは日常生活の中で、地平上の地点Aから地点Bまでの距離を、何気なく「駅ふたつくらいだよ」なんて言ったりする。「2㎞だよ」と言われるより、「駅ふたつくらいだよ」と言われるほうが、「ああ、それくらいね」とイメージしやすいからだろう。  すなわち、私たちは「駅ひとつ」を「1単位」として、「長さを伝える基本単位」に使っているわけである。今回はこの「駅ひとつ」という「長さを伝える基本単位」について、その可能性の考察を試みてみたい。  現状、「国際単位系」においては、長さの単位は

          鉄道をめぐる諸考察(4)「基本単位としての「駅ひとつ」の可能性について」