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映画 「君たちはどう生きるか」を見た感想(ネタバレもちろん有)

ある日、中国人彼女の茜茜(シーシー)が突然見に行きたいと言い出したジブリ最新作「君たちはどう生きるか」。

© 2023 Studio Ghibli

中国でもやはりジブリは人気らしく、もはや私以上にジブリ作品を知っていた茜茜、日本人としてちょっとウレシイ。もちろん観に行きました。
土曜の公開10日後ぐらいに見に行ったのですが、映画館はほぼ席が埋まっており、客層も幅広かった。私たちのようなカップルから、親子連れ、重鎮のようなオーラを発するおじさんたち・・・
老若男女に愛されてるジブリ、やっぱりすごい。
私あやさとも実は「好きな映画なに?」と聞かれたら「ナウシカ」と答えるようにしているくらいジブリ大好き。上映前はそれはまあ心躍らせたものです。

基本的にまっさらな状態で見たいタイプのため、映画館に足を運ぶまでは前情報をあまり見ないようにしていたのですが、どうやら
・前代未聞の宣伝広告費ゼロでの公開(とはいえ前例はなくはないみたいなのですが)
・ポスターの鳥
ぐらいは前情報としてキャッチしていました。
広告費ゼロということは・・・なるほど。見たものだけがその世界観を享受できるというわけか。いいじゃん。
鳥も出てくるんだろうな。あのシブい見た目からして、風の谷ナウシカのユパ(あの短剣二刀流のおじさん)みたいな立ち位置か。

ひとつ気になったのが、「君たちはどう生きるか」がもともと原作ある作品だということです。それがコレ。

ん?原作あり?
私はちょっと不安を感じました。
ジブリの素晴らしいところなど挙げていくと枚挙にいとまがありませんが、私が特に好きなのが、あの独特な世界観なのです。
でも、原作があるとなると基本的にはその原作のフレームをなぞって世界を作っていくことになるでしょう。
それはいかがなものか・・・という気持ちになりましたが、宮崎駿の考えることだ。きっとなにか深い考えがあるのだろう。と心を信者にしてネガティブにならないようにしていました。

茜茜も楽しみにしているということで、わかりやすい内容だったらいいなあ・・・


さて。
みなさん。お待たせしました。

ここから本格的にネタバレするので、一度自分の目で見たいよ!という方は一回見てきてください、また会いましょう。








ここからネタバレゾーン


結論から言います。
映画を見終わった後の自分の気持ちなのですが・・・

お・・・・面白く・・・・なかった・・・・・・



なんか開始5分で直感的に嫌な予感はしていたのです。
観ててワクワクしない。あの魂の揺さぶられる感覚がない。
ていうか難しい、訳わかんない。
開始20分、右に座っていたお姉さんが寝ました。

ジブリマニアの方たちから袋叩きにされる恐れもありますが、私だってちゃんとジブリを愛する者です。心から思ったことを言いたい。


どうやら舞台は戦時中の日本。火垂るの墓みたいな感じですね。
ざっとした流れとしては、主人公の少年が鳥にいざなわれて別世界にいざなわれるということなのですが、鳥がなんか、あのポスターに描かれてあった鳥とちっとも似ていませんでした。
そんなわけないだろ、ちゃんと見ろ。とお思いのそこのあなた。これをご覧ください。

サギ男 『君たちはどう生きるか』より ©2023 Studio Ghibli
眞人とサギ男 『君たちはどう生きるか』より ©2023 Studio Ghibli

いやわかるかこんなもん。
アイコンを写真加工して実写では全然違う顔の女性を見た気分です。

そして、別世界にいざなう塔でなんかポスターの鳥のボスっぽい人が意味深なことを言って別世界へ行くのですが、この「ボスっぽい人」は最後まで誰だったかわかりません。もしかしたら後半に出てきた誰かだったのかもしれないんですが、わかりませんでした。すみません。

私がさっきから憑りつかれたように「わからない」を連呼していますが、それがこの映画をもっとも端的にまとめた感想です。この映画、全体を通して「わからない」んです。
もっと詳しく言うと、伏線回収がないんです。

映画にちりばめられた不思議な要素が、ラストまで謎のまま終わってしまうんです。私は当然何か後半にわかってくるものだと思いつつ食らいついて理解しようと頑張っていましたが、そもそもストーリーのちゃんとした「まとまり」みたいなものが一切ないんです。

悪く言えば支離滅裂。
たとえるならそう、場面がコロコロ変わる夢のような・・・
夢は起承転結がないと聞きますが、宮崎駿はあんな夢を見ているのか?

終わったあと私も他の人たちの感想を観ましたが、その人たちの考察でも、この映画は宮崎駿の「世界観」を表現することに全精力を注いで、ストーリーは二の次で作ったのではないか?
じゃあ原作要らないのでは・・・・

そして映画館を出た後、茜茜にいう言葉が浮かびませんでした。
終わった後に無神経に「面白くなかったね」とか言いたくないじゃないですか、私は言葉が出ず「うん・・・なんか・・・アレだったね」みたいな感じになってました。

肝心の茜茜はどうだったのかというと、「絵キレイだった」という感想でした。ポジティブな部分を探す姿勢、スバラシイ。
どうやら茜茜はそれほどネガティブにはなっていませんでした。映画の感想としては自分とかなり似ており、宮崎駿が自分のやりたいことをやり切った感じなんだろうね、という結論で締結。
茜茜はさらに「人の世界観をありのまま見せてくれるのは、キライじゃない」という満点解答。
なんとなく、茜茜はこの映画の本質をついているように見えました。

思えば私はこの映画に、過度に「意味」を求めすぎていたのかもしれません。
映画というからにはしっかりとすべての要素が蜘蛛の糸のように絡み合っていて、適切なところで伏線回収、観た人がストンと腹落ちするような展開になってしかるべきだという固定概念を持っていたからこそ、この映画が面白くなくなってしまったのではないか。
では、子供の時の自分ならどうか?
映画に意味や伏線などを求めず、「感覚」で見ていたあの頃。きっとその時に見てたら、あのスクリーンに映る景色は違うものに見えていたのではないでしょうか。
思えば、純粋な子供だったあの時、自分が魅力的に映ったのは綺麗に仕組まれた予定調和より、胸躍る華やかな世界観だったような気がします。
私は知識や理性を手に入れてしまったがゆえに、この映画を面白いと感じる「感性」を失ってしまったのかもしれない・・・
私は映画を振り返りながら、そんな「大人になる」ということの虚しさみたいなものを、この映画で感じていました。

おそらく、宮崎駿が手掛けられる作品は、もうこの先は少ないはず。
ひょっとしたら、この作品が最後になるかもしれません。
だとすると、あれだけの感動をくれた宮崎駿が、最後に自分の世界を見せてくれたのなら、作品の売れ行きとか、評価などを一切気にせず自分の気持ちを最前線に出して表現してくれたのなら、それは真のジブリを愛する者が見たときに、一際感極まる作品になるのではないでしょうか。

ちなみに、宮崎駿が自身の息子の作った作品「ゲド戦記」を観た感想がこちら。

・・・いや、何でもないです。スイマセン。


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