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思い出を回顧させ、毎日を豊かにしてくれる料理

中学生にもなると、夕飯は菓子パンやケーキ、お弁当屋さんのカレーやコンビニの冷やし中華の日が増える。
それでも家族の手料理が食べたくて、2度ほど「夕飯作って」とお願いしたが、応えてもらえるほど時間の余裕がある暮らしではなかった。なんせ幼い頃に大黒柱が亡くなり、収入が大幅ダウンし働かざるを得ず、加害者との闘いもあった上、よく入院するきょうだいの看病があったからだ。

1日で家族と顔を合わせるのは朝の20分くらい。
中高大学生の頃は、食事をともにするどころか、会話の時間もなかった。
もっとも、私はその分自由に何でもすることができたから、全く構わなかった。ただ、家族の料理がとても美味しかったから、食べたかっただけのことだった。
……………
約10年、家族の味を楽しむときは殆どなかったが、それが大学院入学から変わる。

一人暮らしのマンションに帰宅すると、鯛のスープが作ってあった。一口飲むと薄い塩加減が体を温め、北国の田舎町に住んでいた頃、家族が作ってくれて、毎朝いただいていた「たちの味噌汁」を思い出した。
「これだ!」と思った。薄くて柔らかい味。一気に鍋いっぱいのスープを全部飲んでしまった。

「とてつもなく美味しかった、ありがとう」と伝えると、今度は「ホイコーロー」が冷蔵庫に入っていた。
その味は子供の頃、家族で焼肉をした時の味にも似ていた。焼肉をするときょうだいが元気になって大騒ぎしていたな。

大学院で勉強してからの帰宅は、夜22時から24時。「あー疲れた」と帰ると今度は、焼肉が入っていた。肉の上には、私の大好物のゆり根が入っている。
タッパーの3分の2は肉だったから、きっと自分の分を私にくれたのだろう。
子供の頃、「肉ばかり食べないで野菜も食べなさい」と言われたことの反対だと思った。
………………
家族の料理を食べると、沢山のことを思い出す。
大事な人が「おこんこ、ある?」と言って毎朝食べていた朝食や、
最期となった緑のお蕎麦。
幼稚園のお弁当に入れてくれた烏賊めし。

鯛のスープを私があまりにも喜ぶから、また作ってくれた。
たまたまその日に来た当時の恋人に少しお裾分けしたら、翌日、大学院で、
「りりいちゃんのお母さん、料理凄く上手なんだよ。お金出すからまた作って欲しい。」
と大勢の友人を囲んで嬉しそうに話す姿。
…………………
沢山の思い出を回顧させる家族の料理は、勉強に疲れていたときも、仕事を辞めたくなるときも、心の棘をなくしてくれる。
さらに、美味しいのは当然のこと、素敵な毎日を連れてきてくれ、心をほっこりさせてくれる。

だから私を思い出で満たして、元気にしてくれる家族の料理を食べている時が1番幸せ。

とても嬉しいので、嬉しいことに使わせて下さい(^^)