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漆黒のライダー


最近仲良くしているアニメ・ゲームオタクの友人の話。

彼は変な人である。
どれくらい変かと言うと、

マグカップの代わりに実験用のビーカーでコーヒーを飲み、
踵がすり減った靴下を毎日履き

(それが見えている事を気に留めず、デスクでは靴を脱いで仕事をし)、

10年前に購入した緑色のデミオには、
未だに納車時のビニールカバーが付けっぱなし、という具合だ。


容姿はカッコイイとは言えない。
顔のつくりは中東系で目鼻立ちがはっきりしていて
悪くないはずだが、髪の毛はボサボサ、ベタっとしているし、

服装は全身黒で、常に腰には小物入れをぶら下げている。。。

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こだわりは強いけれど、好きな事は極めるタイプで
アニメやゲームにはかなり詳しい。

もっと服装や身だしなみに気をつければ彼女だってできそうなのに
もったいないな、と私は思っている。

そんな容姿とは裏腹に、彼の作る資料はいつも美しい。

A4サイズの紙面には、絵、グラフ、表が適材適所に配置され、
縦横のバランスや列の揃え方、文字のサイズやフォントも
丁寧に使い分けられている。

見る人が直感で理解できる資料だ。

また、驚くべきは、その色使いである。

真っ黒な服装ばかり着ている彼が作ったとは思えない、

お花畑のようなパステルカラーと
キリッと目立つビビット色の組み合わせ。

それでいてシンプルで洗練された資料を、彼は作ってくるのである。

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彼にとって、「色」はオシャレというフィールドでは何の意味も持たない。

しかしひとたび資料となると

クリティカルポイントがどこなのか、
複雑な現象の中で共通点は何なのか、
安全とリスクの度合い、
スケールや時の流れ。

様々な機能を色にのせて彼は表現する。
どうか自分自身も美しく表現しておくれ。

あなたはむしろ誰よりも
深く色の特性を理解しているじゃない。

漆黒のライダージャケットを身にまとい
大雨の中、傘もささずにデミオまで駆け込んでいく彼の背中に
励ましのエールを小さく送った。



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