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【セブ留学30日目】フィリピン人はなぜ英語が話せるのか

こちらに来てから……いや、来る前から私にとっては大きな疑問だったのが「なぜフィリピン人は英語が話せるのか?」でした。英語が上手いアジア人というとインド、シンガポールあたりを思い出す方も多いと思いますが、フィリピン人も非常に英語が上手い。インドやシンガポールの場合英語が話せるのは中級以上というイメージがあるのに対し、フィリピン人は普通の人もまあまあ英語が話せます。そしてこの2国に比べると圧倒的にクセや訛りが少ない。アジア全域で、フィリピン人の話す英語は一番上手い&綺麗なんじゃないかと私は思ってます。

フィリピンの公用語は英語

他のアジアの国と同様、フィリピン人も普段フィリピン人同士では地元の言葉を話しています。首都マニラのあたりならタガログ語だし、私のいるセブ島だとビサヤ語(セブアーノ)という言葉を話しています。フィリピンは約7000もの島からなっているので、タガログ語でもビサヤ語でもない言葉なところもあるんだとか。

地図を見ると分かる通り、国がいくつかの大きな島に別れており、大きく分けて3つ違う文化圏があるため、それぞれの言葉同士で意思の疎通をするのは非常に難しいのだそう。

そういう事情もあって、フィリピンでは英語とタガログ語が公用語になっています。そして、結構な人数のフィリピン人が英語を話せる。なぜ公用語にできるかといえば、それは「みんな学校で英語を習っていて、多くの人たちが英語が話せる/読めるから」

しかし考えてみてください。普段は地元の言葉を話し、学校で英語を習ってるというのであれば我々日本人だって同じです。中学、高校、人によっては大学や大学院でも英語を勉強します。他の科目に比べても、英語の時間は多いです。私なんて、この歳になるまでいったい何時間英語を勉強してきたことやら……。それでも話せなかったからフィリピンに来たわけです。

学校で習う「だけ」で、なぜフィリピン人は英語が話せるようになるのか? 何人かのフィリピン人の先生達に聞いたところ、驚きの答えが返ってきたのでした……今回はそんな話。

フィリピンの先生は、英語で英語を教える

QQ Englishに来て最初に「おっ」と思ったのは、先生達が英語で英語を教えることでした。フィリピン人の先生たちは、50分間のレッスン中、英語しか話しません。たとえ生徒がまったくのド初心者であろうとも、まったく英語が分からなくても、英語だけで説明し、教えていきます。当然相手はいろいろ理解できないのですが、それでもなんとか英語で理解させ、そのまま授業が進行します。

私的には驚きだったんですが、先生達にしてみればこれは当たり前のスタイルで、先生達が学生だったころもそうやって授業を受けていたのだそう。そう、フィリピンの普通の公立学校では、フィリピン人の先生が英語で英語を説明するのです。それも小学校から!

私も日々このスタイルの授業を受けているのですが、否応なしに耳が英語に慣らされます。英文法も英語で説明されるし、英語の意味も英語で説明してくれて(常に、英英辞典を使っている状態)、それでも分からなければネットの英英辞典を引いてみせてくれます。先生に「この単語はどういう意味?」と英語で聞かれるたびに英語で答えなくてはいけないので、自分でも英英辞典的な説明がひねり出せるようになってきました。

そしてもう一つ、英文法を英語で教わるのって意外と面白いんだなと知りました。英文法の単語を知らないので(post participleとかperfect infinitiveとかって単語、パッと出てきます?出てこないですよね??)、最初は苦戦しましたが……。

学校はENGLISH ONLY、違反したら罰金

フィリピンでは小学校から英語のレッスンが始まります。そしてなんと、授業は……というか学校内は、ENGLISH ONLYポリシー。学校で普段の言葉を話したら罰金を取られるのだそうです!

「学校はみんなENGLISH POLICYで、セブアーノを話したら罰金を取られるんだよー。小学校が1ペソ、中学以降は5ペソだったかなぁ。ホントに取られるよ、ぼくも払ったことある」
「私は学生のころほとんど毎朝遅れて学校に行ってたんだけど、ほとんど毎朝遅刻するので、そのたびに焦ってうっかりセブアーノを話してしまって、めちゃくちゃ罰金払った。ときどきママに『学校に払う罰金がもうないのー』って言って、お金をもらってた。あははは」

複数の先生に聞いてみたのですが、全員ENGLISH ONLYポリシーで罰金制度だったと言っていました。フィリピンの学校は遅刻には寛容だけれど、ENGLISH ONLY POLICYについては非常に徹底していて、小さい子どもでも容赦なく罰金を取られたとのこと。き、厳しい。。。

すべての授業が英語、教科書も全部英語

さらに驚いたのが、英語だけでなく算数、理科、社会などほかの授業もすべて英語で行われるということ(「Historyだけは例外的にセブアーノだった」と話している女性もいました)。

従って、教科書も当然全部英語で書かれています。そういえば、セブで何回か本屋さんに行ったのですが、小学校低学年向けと思われる本以外は、すべての本が英語でした。それでいて、セブアーノ←→英語の辞書すら売られていなかった(タガログ←→英語の辞書はある)。子どものころから英英辞典を使うしかないってことですよね、これ。

徹底しててすごい、そこまでやるから話せるようになるのかと思う半面、厳しいなあとも思います。考えてみてください。学生時代、「英語は苦手だけど数学は得意」みたいな人って、いっぱいいましたよね?教科書の英語が読めなかったら、数学も理科も社会も全然勉強できずに挫折せざるを得ない。これってかなりしんどい状況だと思うのです。

日本は恵まれている、けれど

そういえば、QQ Englishに来て「職業は編集者/記者です」というたびに、先生達が「?」となっていました。それはフィリピンにおいては「編集者=英語の編集者」だからなんですね。英語は得意だろうに、なぜ英語を勉強しに来てるの?と疑問に思ったのでしょう、きっと。「日本語のウェブマガジンを編集してるんですよ」と説明すると一瞬固まってから「……ああ!」となっていたのが私は毎回疑問だったのですが、その理由がこれを書いていてようやく分かりました。

日本の場合、日本語が使える人が1億人くらいはいるので、ほぼほぼ日本国内だけとはいえ日本語の編集・ライティングの需要がある。これって実はものすごく恵まれていることなんだなぁとフィリピンに来て改めて思ったのでした。実は出版だけでなく、他の産業もそうなんですよね。これまでは日本市場だけでなんとかなってきたけど、今後日本人が減って「日本語だけ対応していればいい市場」がシュリンクしてくるとそうも言っていられない。

フィリピンは日本とは状況が逆で、人口に対して仕事が足りず余っている状態。だから英語を武器にして、海外に出稼ぎに行って稼いでいるという面があります。それに比べると日本は恵まれているけれど、それでもやっぱり「日本国内で日本語で仕事をする」以外の選択肢も今後は考えないとまずいんじゃないかな、と考えてしまいます。

英語が公用語の影響は?

もう一つ、英語が公用語で出版物もほぼすべて英語というフィリピンの環境は、エリート層とそうでない人を二極化してしまっているように思います。フィリピン人の先生、たまに英語の本を読んでるけど、見てると進むスピードがものすごく遅い……外国語の本を読んでいるんだから、当然といえば当然なのですが。

これはあくまで私の仮説ですが、フィリピンの場合、

長所:普通の人もまあまあ英語が話せる。さらに、それほど話せない人でもヒアリング能力はすばらしい。テレビや映画(ハリウッド映画多め)は英語音声、字幕なしでみんな楽しんでいる。音楽もアメリカのヒットチャートをそのまま聴いている。

短所:(英語の)本を読める人はエリート層。さらに英語ができる人は海外に行ってしまう→国内で産業が発展しづらい/中流の人たちの知識レベルを上げづらい

なんじゃないかな、と。これって、いいことなんだろうか。それとも……?

最近、フィリピンの小学校はEOPをやめたらしい

さいごに追記を。

フィリピンの公立学校がENGLISH ONLYポリシーな件ですが、去年から小学校は地元の言葉で授業をすることになったそうです。私の先生は、妹が小学生で、算数の宿題を妹に聞かれたものの、そもそもセブアーノで数字を数えたことがないのでものすごく困ったそうです。「小学校から英語で教えたほうが絶対いい、あのポリシー変更は良くない!」と力説していました。

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