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大体2mm「迷惑」で作成した映像について

はじめに

2024年6月29〜30日にJ:COM北九州芸術劇場 小劇場で開催された演劇公演「迷惑」に映像で参加させていただきました。ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました!

舞台上に映像を投影

制作元の大体2mmには10年以上前からお世話になっています。今までは俳優として創作に携わらせていただきましたが、今回は映像としてお声かけいただきました。
この記事では、使用した映像群をどのように作成したのか、本番中にどのように出力したのかを記そうと思います。


創作の着手前

演出家(藤本さん)との打ち合わせで出てきた「幻視、不穏、侵食、輪郭のなさ」などのキーワードを手掛かりに、映像群を創作することとしました。
また、脚本から受けるイメージとして「アニバーサリー、走馬灯、背景」、
音楽(揖斐さん作曲演奏)から受けるイメージとして「広がり、グリッチ、反転」といった要素を組み込み、映像を調整しました。

脚本の構造的に、後半の不穏さをブーストするためにピンポイントで投影することに。また、現実から幻視へ移行させるため、映像を徐々に舞台面へ侵食させるよう構成します。
具体的には「侵食パート→ニュースパート→生成AIパート」の3パートで臨みました。

今回のお話は高層マンションの一室が舞台です。舞台中に大きなカーテンを吊るしそこへ映像を投影するといった形をとるので、これらを意識し創作に取り掛かりました。

舞台全景。かっこいい。

侵食パート

今作品中最初に出力するパートです。現実の世界から幻視の世界に行きますよと説明する部分ですので、丁寧に作成しました。

シミみたいな

侵食パートはp5.jsで作成しました。パーティクルを両角から表示させ、画面上部から徐々にシミが広がるよう設計。
パーティクルのスピードをキー入力で調整できるようにし、舞台進行に合わせて速度を変えていました。

カーテン上部からシミが広がる

ニュースパート

先ほどの侵食パート後、脚本上ではニュースが流れるシーンを迎えます。いっそのことニュース映像を作ってしまおうと思い、生成AIを活用しつつ作成しました。

ニュース映像。テロップのようなものを表示させるだけで良い感じに。

動画の生成にはcomfyUIを使用。tex2vidで10秒くらいの動画をいっぱい作り、素材を厳選しました。テロップもtex2imgで生成し、日本語っぽいけど存在しない文字を採用しました。

comfyUIの画面。ノードベースで慣れるまで時間かかった

大手うな丼チェーン店が迷惑行為の被害にあうというニュースだったので、そういったニュアンスが感じられるように生成。リアルすぎると「じゃあ実写でいいじゃん」となるので注意しつつ作成しました。

どんなニュースだよ

ニュース後半からは生成AIパートに繋げるために、次パートで使用する映像を徐々にフェードインさせました。これも侵食のイメージ。

単純だけど良い効果になったと思う

投影面をカーテンよりも大きくすることで、侵食感や輪郭のなさを強調しました。結果不穏な感じにもなったと思います。

実際に投影すると情報量が一気に増えるので楽しい

生成AIパート

最後のパートです。これまでの仕込みを経て爆発させるつもりで作りました。先ほどと同様にcomfyUIを用いて複数動画を生成しました。
生成モデルへの入力はテキスト、動画および画像です。生成AIで作成したコンテンツのみを入力に使うとAI感が増してしまうため、実写コンテンツを入力に使用しました。私自身の思い出の写真や動画を入力に使用することで、アニバーサリーや走馬灯の要素を取り入れようとの狙いもあります。

comfyUIの画面。参考にした各ワークフロー作者様には頭が上がらない

生成した動画。母の誕生日に叔母とディナーした時の写真を入力に使用

このように生成した動画群を演技などに合わせて再生しました。また、ただ動画を再生するのではなく、任意のタイミングでエフェクトを加えられるようVJっぽいシステムをp5.jsで作成し、即興性を大事にしました。

ノイズを生成するエフェクト
色味を反転させるエフェクト
反転前

振り返り

自分史上最大画角で映像を出力させてもらい最高に楽しかったです。座組の皆様に助けていただき、無事本番を終えることができました。以下にお気に入りの写真を掲載します。

演技・小道具と相まってとても良い
模様が舞台装置に映る時はコントラスト高い方がいい
楽しそうだなこの人たち
照明さんにも大変お世話になった。こだわりのシルエット最高でした

さいごに

この空間でしか感じることのできない作品になったと思います。演劇が総合芸術たる所以をあらためて感じました。
今後とも創作活動を行ってまいります。ご用命があれば承りますので何卒よろしくお願いします。

私と音楽の揖斐さん。心強かったです。

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