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サントリー天然水は買うけど、いろはすを買わない理由 | ブランドマーケティング

この記事で伝えたいこと

ブランドマーケティングとは、生活者に他社には模倣できない自社の価値を意味として連想・記憶しつづけてもらうことで、選択→購入してもらうことである。

マーケティングを正しく理解する

昨今、マーケティングとは便利な言葉となっている。マーケティングの前に自分の担当領域を付けて〇〇マーケターと名乗るものの、なにをもってマーケティングができていると言えるのかの定義は、人それぞれで、多用化している。

マーケティングとは「市場を創る」ことである。そして市場とは、売上金額で成り立っている。売上金額は、人数 × 商品・サービス単価。人数とは、商品・サービスを購入する生活者の合計人数のこと。

つまり、「マーケティング=市場を創る」ということは、我々生活者に、
商品・サービスの価格に価値を感じたうえで購入してもらう
ことである。

どの企業にもあてはまる当たり前のことだ。

私がサントリー天然水は買うけど、いろはすを買わない理由

私がいつも購入する水は「サントリー天然水」と決めている。
設定している定期便も、自販機で買うのも、コンビニで買うのも全て。
なぜなら、わたしの中で「サントリー=水と生きる=全飲料商品の原点と
なる水にこだわっているメーカー=水がおいしい」と記憶されていて、
その飲料の原点・本質となる「水」にこだわっているという価値観に
共感している
からだ。

これがブランディング=生活者の頭の中に、ブランドの意味を連想・記憶させるということである。

2003年に環境広告のキャッチフレーズとして誕生した「水と生きる」は、
いまではロゴとセットで生活者の目に触れるようになっている。

2003年、「水と生きる」はサントリーの環境広告のキャッチフレーズとして誕生した。水がなければ何もつくれない企業として、水を生み出す自然の生態系への感謝と畏敬、水を守り育てる志と活動、すべての思いを凝縮したメッセージだった。
https://sun-ad.co.jp/works/suntory/

サントリーという企業が何を大事にしているのか、誰もが想像できる、
素晴らしいコピーだと思う。

サントリー=水にこだわっている/水がおいしいという連想・記憶をつくり続けることで、サントリープレミアムモルツ、サントリークラフトボスと聞けば、水がおいしいサントリーならきっとビールやコーヒーもうまいはず。と生活者が自然と期待をし、期待を超える商品を提供することで、選び続けてくれる、買い続けてくれるファンがうまれる。


「水」じゃなくて「環境配慮」で戦うと決めた、いろはす

いろはすが画期的だったのは、ペットボトル容器の形状だ。味も香りも差別化しにくく、新しさを生みにくい「水」を後発で出すには、競争軸を変える必要があった。

わたし含めて生活者にとってこのインパクトは大きく、「いろはす=環境に良いペットボトル」と印象に残ったひとは大勢いただろう。そして環境配慮への意識が高い価値観を持つひと、好感をもったひと等々には、心をつかんだに違いない。

だからわたしは、サントリーの天然水がなかったらいろはすを選ぶ可能性は高くはなるけど、いろはすの価値に共感をしていたり、特別好感を持っているわけではないので、正直他の水でも良い。でもサントリーの天然水があれば、いろはすも他の水も選ぶことはないのだ。

しかも、昨今どのメーカーもラベルレスやペットボトルの軽量化を進めており、環境配慮の競争軸は激化している。そのうえで、環境配慮では先駆者となるいろはすはどう戦っていくのか。

個人的には、どのメーカーも、災害時の対応(企業姿勢)であったり、環境が変わっていくなかで安全な水の提供を証明し続けること、提供し続けるための環境負荷低減活動などにおいて、生活者も巻き込み、一緒に命となる「水」を守っていくような共犯者をどれだけ増やせるかや
日頃の生活者へのコミュニケーション(CM・プロモーションなど)によって企業・ブランドに対する好感を獲得しつづけていくことが大事と思う。


資源の活用方法は企業の経営戦略によってちがう

ちなみに、いろはすの提供企業は日本コカ・コーラである。コカ・コーラといえば、例えば「昔からある赤いコーラ」「ピザといえばコーラ」「クリスマス」などが連想・記憶されるだろう。でもこのブランド連想は、いろはすのマーケティングには資源として活用できない。生活者の頭のなかでは、コカ・コーラといろはすは結びついていないからだ。

しかしこれは、企業の意図的な経営方針として、個別ブランド戦略をとった結果である。

※ 個別ブランド戦略例:ユニリーバ

「ユニリーバ」というマスターブランドは目立たせずに「Dove」「PONDS」「Lipton」「ベン&ジェリーズ」などに個別にブランドを分けて展開すれば、ブランド連想の打ち消し合いは起きにくくなる。

対するサントリーはまさにこれ。

サブブランド戦略のメリットは、すでにマスターブランドが一定の知名度やブランド連想を確立しているため、個別ブランド戦略のように1つ1つのブランドを全く無名から始めるよりもブランディング投資がかからない点だ。

このように、複数のブランド事業を抱えている企業は、事業ポートフォリオの経営戦略によって活用できる資源(知名度・ブランド連想)が変わる。

まとめ:ブランドマーケティング

▼マーケティングとは

市場を創ること。
生活者に商品・サービスの価格に価値を感じたうえで、購入してもらうことである。

▼ブランディングとは

生活者の頭の中に、ブランドの意味を連想・記憶させること。

▼ブランドマーケティングとは

ブランドマーケティングとは、生活者に他社には模倣できない自社の価値を意味として連想・記憶しつづけてもらうことで、選択→購入してもらうことである。

ここで「選択」という概念がうまれている。
価値を感じて購入してもらうことだけ考えても、うまくいかない。生活者のお金と時間は有限であり、そのなかで競合との奪いあいになることを忘れてはならない。だから、生活者に選ばれる、もしくはブランドから選んでもらいにいくといった「選択」が重要である。

ゆえに、生活者からブランドの価値を「意味」として連想・記憶されつづけていること。その意味に最も共感する価値観をもつブランドターゲットを捉える。ということを頭に入れておく必要がある。

Q. このブランドは結局どんな価値を届けている?届けたい?
Q. それは生活者にとってどんな意味になる?
Q. その意味に共感するのは、どんな価値観?
Q. その価値観をもつひとはどんな人?(他にどんなジョブ・価値観・興味を持っている?)

ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。


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