4-2 ちくわの予言

その日の夜、僕は日曜日のデートに向けて、ちくわの助言を借りようと、いつものように穴を覗いた。

そこに映ったのは、地面にゆっくりと倒れこむ伊織だった。
ハっとして、僕はちくわから目を離す。

…なんだ、今のは。

恐る恐る、もう一度覗き込んでみる。しかし今度は、デートの日に財布を無くして慌てふためいている僕の様子が映っていた。
しばらくして、もう一度覗き込んでみても、やはり慌てふためいている僕の様子で、伊織が倒れる映像が流れることはなかった。
 
見間違い?それとも、伊織が見た大災害の予報に何か関係しているんだろうか。
このことを、伊織に報告するべきかどうか僕は悩んだ。伝えるにしてもあまりにも抽象的な映像で、注意を促すにしても何をどういえば不安を煽らずに済むのか、見当が付かなかった。

考えた挙句、僕は黙っていることにした。
彼に関係することなら、すでに伊織も見ているかもしれない。そうであることを願いながら、僕は眠りについた。

翌日、登校するといつもと変わりない伊織の姿があった。僕はホッと、胸を撫で下ろす。
「おはよう、伊織」
「おはよう。…あ」
教室に入ろうとしたところで、伊織がぐいっと、僕の腕を引っ張った。
「なに?」
「あのさ、彼女は元気?」

つづく

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