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【あべ本#25】毎日新聞「桜を見る会」取材班『汚れた桜』(+α情報アリ)

「桜を見る会」疑惑、とは何か

「まだやっているのか」と言われる政治の話題と言えばこの「桜を見る会」。コロナウィルスの猛威が日本にも及ぼうとしている中、国会でこの「桜を見る会」追及にいそしむ野党やメディアに対しては厳しい批判も飛んでいます。

もちろん「文書管理すらできない政府に、外交や安全保障を任せられるわけないだろ」という追及側の意図もあり、行政の私物化は許されない点についても同感ではあります。しかしその一方で「どうも深刻な問題として興味を持つことができない」自分もいる。みなさまはいかがでしょうか。

※なお今回は、通常の「あべ本レビュー」に加え、有料部分で私が耳にした「桜を見る会」招待者に関する話題についても多少付け加えたいと思います(レビュー自体は無料公開で最後まで読めます)。

そんな中、毎日新聞「桜を見る会」取材班が繰り出すこの一冊。表紙も帯も、なかなかのおどろおどろしさを醸し出しています。

2019年11月8に参院予算委員会で共産党の田村智子議員がこの問題を追及してから、政府ヒアリングが行われた12月26日までの49日間、取材班がこの問題をどうとらえ、取材し発信してきたかを、問題の経緯とともに記録しています。

「え、疑惑の核心や新事実ではなく、『取材班側の模様』を本にしたの?」と驚いたわけですが……。というのは、以前に朝日新聞のモリカケ取材班も、同じように「問題の全貌がまだ明らかになっていないのに、『問題を追いかける俺たち記者の奮闘記』を出した」ことがあったからです。

朝日新聞取材班のこの本は「オメーの話はどうでもいいんだよ!」と思ってしまう読後感だったので、今回の毎日新聞取材班の本にもそうした部分があるのではとかなり警戒しながら読みました。

ところが、です。

いい意味での「ネット目線」で書かれている

読んでみるとこれが意外や意外というか、朝日新聞取材班ほど鼻につくところがないうえに、「桜を見る会疑惑」の問題点と経緯がよくまとまっていました。

疑惑の追及は「記者たちが動いた」ことによって明らかになった、というよりは共産党の議員が集めてきた素材が土台になって、ツイッター他での読者の反響を受けて記者が周辺取材(?)と発信をしているという様子ではあり、「記者職ってのはこれでいいんだろうか」感もなくはないのですが、しかしそこは「毎日だからいいのかな」という説明しがたい思いが。

「毎日だからいいのかな」は半分冗談ですが、本書の筆者である毎日新聞「桜を見る会」取材班は政治部ではない統合デジタルセンター所属の記者たちが、ネットの反応を重視しながら、ある意味で「新聞目線ではなくネット目線で」発信している。だからこそ、目線がいい意味で読者に近いのでしょう。疑惑に対する視線は厳しくても、いい意味で肩に力が入っていない感じなのです。

例えば毎日記者が、メルカリで「桜を見る会」記念品の枡や空き箱を買うくだりなどは思わず笑ってしまいました。こうした「オチ」の置き方などもうまい。

表紙や帯からすると「なんかまたアレな感じの安倍政権叩きなのかなあ」という印象を与えてしまうのがかえって残念なくらいで、親安倍(非反安倍)派の皆さんも、これは一度読んでみてほしい内容ではあります。「『桜を見る会』なんていつまでやるんだ」と思う側の人こそ、「政権側もなんでこんな下手な対応やまずい言い訳を重ねるんだろう」「こんなことをやっているからいつまでも終わらないんだ」と思う点が出てくると思います。

それでもちょっと気になるのは「SNSでの『桜を見る会』に対する人々の声が大きかったから追いかけ始めた」のはいいとしても、一方には「こんな話題をまだやるの」の声もある。そうした声に対しては毎日新聞取材班はどう考えているのかなとは思います。ある特定の読者の声を拾うのはいいけれど、そうなると産経新聞は韓国批判をしてほしい読者の声を、読売新聞は巨人軍ラブな人たちの声を拾うわけで、フィルターバブルを新聞社が補強することにもなりかねない危険性が、常に付きまとうことになります。

反社との関係をどう考えるか

もう一点気になったのは「反社会的勢力との関係は、芸人ですら一発アウトなのに、政治家は『桜を見る会』に反社を招き笑顔で写真を撮ってもセーフなのか」という指摘。

もちろん反社(らしき人物)が招待されたならその経緯を政権側が明らかにすべきだし、招待状の譲渡が事実上フリーとなっているためにそうした人が招待状を入手→参加ということであればそれについても対策が必要です。が、毎日新聞取材班は問題の人物が「反社である」と突き止めたわけではない(本文では「反社にかかわるとされる人物」とある)。突き止められないのも名簿がないからだというわけですが、写真をもとに調べられないものなのかという疑問が残りました。むしろこれは「反社か否か」の線引きは難しいことを示しているのでは。

また、芸人との対比でも、芸人は写真を撮っただけでなく詐欺で儲けた資金からギャラをもらっていたからこそ活動休止にまで追い込まれたわけで、単純に比較できるのか…という気はしました。これまた単純には比較できませんが、毎日新聞主催の会に反社がやってきて、記者と写真を撮ってSNSにアップしたらどうなのか? 

政府が「反社会的組織」の定義を変えてしまったのは驚きでしたが…。

「なぜ私が招かれたのか分からない」

さて、ここから下は、「桜を見る会」に招待客として招かれた経験のある人たちについて「聞いた話」をもとに書きますので、一応有料扱いで線引きをしておきたいと思います…。あくまでも「聞いた話」レベルであることをご承知おきください。

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