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【ドイツ語翻訳】かがみという名の子猫(2) Spiegel, das Kätzchen

『Spiegel, das Kätzchen』の続きを翻訳しました。全60ぺージ中の、7~15ページ目の翻訳になります。最初の7ページの翻訳と、この作品についての説明は下の記事にあります。

―前略―
 かがみはもう長いこと耳をぴんとそばだて、よだれを垂らしながら聞き入っていました。それでも理解力が衰えていてどういうことなのかまだはっきりとは分からなかったので、こう聞き返しました。「悪くない話ですね、ピナイスさん! ただし、あなたに私の脂肪を提供するのに命を捨てないといけないのなら、どうやって私はその対価を手に入れて堪能すればいいのかが分かるなら、の話ですが。だって私はその時にはもういないじゃないですか」

「対価を手に入れるだって?」と魔法使いは驚いた様子で言いました。「お前を太らせるための、たっぷりとしたご馳走を楽しむことが対価じゃないか。分かり切ったことだろう! しかし、私はお前にこの取り引きを強制するつもりはない!」と魔法使いは言い、その場を立ち去る素振りを見せました。
―中略―
 子猫は急いで取り引きを受け入れ、魔法使いが常に持ち歩いていた契約書に署名しました。署名は子猫の鋭い爪でしたのですが、その爪はかがみにとって最後の財産であり、いまより良かった日々の名残りでした。

―中略―
かがみの毛並みはふたたび滑らかになって光沢を放ち、目は生き生きと輝きました。そればかりでなく、精神力も取り戻したために、素行もよくなりました。荒々しい貪欲さはなくなり、辛い経験をしたことで以前よりも賢くなっていました。 欲望を抑え、適度な量だけ食べるようになり、それと同時にふたたび理性的で深い考察を追求し、物事を洞察するようになりました。 そんなある日、かがみは木の枝から美しいツグミを捕ってきました。―中略―
「可哀相なやつだ」とかがみは言いました。「こいつが、こんなにもせっせと熱心に餌を取ったことがいったい何になったというんだろう。この小さな胃袋は、まるで一日中頑張って働いたかのようにいっぱいになっているのに。この赤いベリーのせいで、自由な森から、鳥を掴まえる罠におびき寄せられてしまった。 こいつはもっと良い生き方をしようとして、このベリーで命を繋ごうとしたんだ。なのに、今この不幸な鳥を食べた自分はと言えば、ただ死に一歩近づいただけじゃないか。 命をほんの少し引き延ばして、でも結局はその対価のために引き延ばした命を失わなければならない契約なんて、これ以上惨めで卑怯な取り引きが他にあるだろうか。
―中略―
「なんだと!」とピナイスは大声を上げました。「お前は丸々と太れるように暮らさないといけないんだ! 体力を消耗させるんじゃない! お前の考えは読めてるぞ! お前は私をあざむき、この中途半端な状態を永遠に引き延ばそうと考えているのだな? そんなことは絶対にさせないぞ! 飲んで食って毛づくろいをし、太って脂肪をつけるのはお前の義務だ! 今すぐ、こそこそと契約に違反して自制するのをやめろ。それとも一言、がつんと言ってやろうか!」

「Spiegel, das Kätzchen かがみという名の子猫(2)」詩とGedichtのあわいで

中略なしの翻訳は私のサイトに掲載しています。続きも訳す予定ですのでお楽しみに!

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