見出し画像

(制服の群れにはぐれた少年少女) #雨傘


都合のいいように使われる。
学級委員長?誰も手を挙げないなら僕がやろう。
どのみち、そういった〈面倒事を放っておけないタイプの鈴木〉に押し付けよう、など皆が考えているとは見抜けなかった。
ひとりぼっちの子には積極的に声を掛けて仲間に入れる。いつも広く浅い関係だった。
すると厄介者にまで好かれて、しかも先生から世話を任され、呆気に取られる。
明らかに傷付けられたこともあった。
お笑い芸人のいじりはプロのなせる技で、真似た素人のそれは相手を苦しめる。


だが、家族以外に対し腹を立て喧嘩した覚えがない。その結果、いつしか〈勝手に利用して、使い捨てても良い〉とされてしまった。
僕がじっと我慢すれば丸く収まる。
深夜によく泣きじゃくり、溜め込んだストレスが先月、爆発して中学校へ通えなくなった。
通常なら授業が始まる時間に半生を顧みるとすぐ、自分を大切に出来なかったな、と思い浮かんだ。
一度、外に出たら他人ばかり優先し、痛め付けられても無理やり笑い、嫌われたくないから全力で演じて、身も心もボロボロになる。


これまでは何故、絡まれるのか分かりかねたが、姉と妹がおり、同性と親しく付き合うより異性に交じる方が容易く、そこが原因だろう。
気を持たせた訳ではないのに、高確率で好意を寄せられた。
彼女らは僕を友でなく恋愛対象として見る。
「鈴木さーん!起きてる?」
学校に誘い、毎日迎えに来るCに交際を求められた時、思わず項垂れた。


さて。
基本は怒れずに悲しむも、自ら本音を吐いてぶつからぬよう避けたままでは繰り返される。
僕はあちらの表面的なものしか知らなくて向こうもそうだった。
とどのつまり、ごっこ遊びである。
冷静に考えると14年近く何もかも諦めてきた。
人間関係が上手くいかない、自暴自棄になり、ところが人は好き、引き籠もって生きるなら誰かと話したい、複雑な心境を抱く。
夕方、雨上がりに素晴らしい虹が現れる。
感極まり、希望を持って、この文章は将来の夢への第一歩、今後は自分を愛せるように、ゆっくり向き合う。


世界に、たった1人の存在だから。




★こちら、全4話で彼が最後の主人公です(各キャラクターを書き分けられたでしょうか)。流した涙や心の痛み、様々な経験があったからこそ、あなたはいつか、相手の気持ちに寄り添うことができるのでは?


この記事が参加している募集

スキしてみて

習慣にしていること