北九州のサブカルイベントはムダなのか(前編)

予想通りだった。11月または12月に自身の地元で開かれる予定だった、北九州ポップカルチャーフェスティバル…略称KPFを、2020年は見送ると云う発表が出た。
何人かから
「今年はやれそうか」
と問われたが、自身はこのイベントと何のパイプも持っていない、完全なる部外者だ。その上で予想としてだが
「無理。そろそろ発表が出るだろう」
と答えた。イベントの企画を発案して出演者を手配したり、出展企業を募ったり、告知を始めたり…などの業務を鑑みると、可否の発表のデッドラインは8月中だと捉えていた。
そして、イベントの可能性を否定した理由は、このイベントの特徴が有り、8月に名古屋で開かれる予定だった世界コスプレサミット…以下WCSの件を見ると、ゴーサインが出るハズは無いと確信していた。

「心待ちにしていた皆様には…」
とリリースには書かれていたが、自身にとってはフェリーでコスプレ撮影ができること以外KPFには興味が無く…コスプレは主催の直轄ではないが…、寧ろこの結果に安堵した。正直、イベントが成功した例しがなく、税金の浪費でしかないのだ。

斜陽の工業都市、北九州。日本で最も高齢化が進み、地域経済は衰退の一途を辿る。その低迷する地域経済の復興と観光経済の掘り起こしのため、2014年の定例市議会で提案された、北九州のサブカル聖地化計画の中核がKPFだ。主催が北九州市の単独であるため、地元企業が協賛についているが事実上の官製イベントだ。
2014年から6回の実績が有るが、そのうち4回行った。行かなかったのは、その日程に合わせて岩国の錦帯橋や岩国城のイベントに行った2015年と、名古屋の大通りを使った大規模イベントに行った2018年の2回。そのうち後者は、盛り上がりに欠ける会場を尻目に改札を通り、北九州出身の松本零士がホームの待合室でインタビューを受けている様子を尻目に、東京行きののぞみに乗ったことを覚えている。

2014年、鳴り物入りでサブカル聖地化事業の中核となるKPFが開かれた。西日本総合展示場と云う、九州でも有名な展示見本市会場のほぼ全館を使用した上、多目的ドームを兼ねる競輪場を使ってライブを開くなど、官製ならではの金に糸目を付けないやり方だった。
しかし、初回に大きな打ち上げ花火を上げるかのように大々的に開くのはよいが、初日は積もらないまでも一時吹雪模様となり寒く、それはこのイベントの先行きを暗示している…と思った。そして、それは正しかったらしい。
2015年以降は、会場をその展示場の新館のみに絞った。同時に、WCSのコスプレパフォーマンス大会の日本代表を決める予選会の一つ、九州予選会の会場にもなった。
その後、その予選会を引き受ける東京のイベント団体の担当者と、地元のイベントで顔を合わせて語り合う機会も得られた。

イベントとしては、ステージでのライブやトークショーがメインで、それが会場入口エリアを陣取る。パーティションで区切られた反対側に、入口から大きく回り込む形で行くと、地元のアニメ制作会社やサブカル系の専門学校などの出展ブースが有り、更に奥では痛車の展示会も行われている。
しかし、入口からの出展ブースへの導線が弱い影響で、賑わっているとは言い難い。事実、日曜日の昼過ぎでも一部の物販を除き、出展ブースの担当者が暇を持て余していた。

さて、このイベントが何故失敗続きなのか。
そもそもKPFの目的は、先述の通り地域経済の復興と観光経済の掘り起こしだ。そのため、イベントの集客も重要だが、北九州の宣伝としても重要と位置付けている。ところが、まず宣伝材料として乏しい。
市営の漫画ミュージアム…漫画専門の図書館を兼ねている…が日本のアニメ聖地88ヶ所の一つに認定された。また、銀河鉄道999で知られる漫画家松本零士の出身地で、その作品のキャラをモチーフとした北九州空港の案内ロボットが有り、また市街地の中心となるJR小倉駅の新幹線側のペデストリアンデッキにはキャラの銅像が設置されている。飛行機や新幹線での来訪客に向けてPRしたいのだろう。
しかし、それだけで聖地をPRするには弱い。自治体が旗振り役として鼻息を荒げているが、それが6年経っても結果に結びついているとは言い難いのだ。

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