2021年同人問題を語れ(前編)

同人業界を揺るがすニュースが飛び込んできた。日本最大の同人誌即売会イベント、コミケことコミックマーケットが2020年中のイベントを見送り、2021年5月…大型連休中の復活を目指して関係各所との調整に入った、とのリリースが入った。
2020年冬の予定が一旦未定となった矢先の話だが、大方予想通りだった。

自身は、コミケだけでなく同人イベントはコスプレ撮影のみを目的として行っている。また、同人はダウンロード販売やオンラインベースを推進する側だ。
そのスタンスであることを宣言した上で、同人イベントについて語ることとする。

5月の大型連休の予定だった…そもそも東京五輪による会場の都合で2020年は変則日程になっていた…が、それもキャンセルされたため、2019年大晦日に最終日を迎えたイベントが直近の最終イベントとなっている。

自身としては、今後従前の規模のイベントは不可能だと思っている。ニューノーマルに照らし合わせると、それと相反するほどの過密ぶりを呈する光景だ。何しろ、1日18万人の来場客を動員し、敷地面積と来場客数から割り出した大まかな人口密度は、TDR…東京ディズニーリゾートを遙かに凌ぐ。
それこそ、小池百合子がその光景を目の当たりにすると、一瞬で気絶しそうだ。この人口密度が、今冬も無理だと予想していた根拠だ。

さて、2021年同人問題と書いたが、一体どう云うことなのか。それは、一部が叫ぶ「同人文化と表現の火が絶える」可能性が有ると云うものだ。
具体的には、同人イベントの存続危機とそこから連鎖反応を起こす印刷所の存続危機だ。まず、前者から見ていこうと思う。

一部スタッフの日記によると、コミケは会場費などが重荷となり、特に儲けているわけではないと言われている。五輪による会場の面積縮小に伴い、2019年は会期を1日延ばして4日間にしたが、それに伴って増大する費用を来場客にリストバンドを購入させることで乗り切ろうとした。それでも「リストバンドが無ければ破綻していた」と言われるほどだ。
そして、一度イベントが「飛べば」コミケは終わると言われていた。それが「飛んだ」。発表の遅さ、そして存続のためにコミケカタログの購入を呼び掛けたことに関して狡猾だと、以前指摘した。購入する理由は無く、財布を開けることは無かった。

その存続とは、まずは今冬の復活を目指していたと読める。一度飛んでも、今冬開けるのであればギリギリであろうと存続は可能だと云う判断だったのだろう。
しかし、それも飛んだ。次回は、実現したとして10ヶ月後だ。噂ではクラウドファンディングも検討していると言われるが、それだけ資金的に追い詰められていると云うことだ。

クラウドファンディングは、コミケカタログの件を見ても判るが、恐らく案件の目標額は即日達成するだろう。仮にリターンが何も無くても、だ。
ただ、イベントの在り方を根本的に見直し、謂わばコミケ2.0を練る必要が有る。ニューノーマル下では、もう従前のようなイベントは開けない。

そもそも、ニューノーマル下のハード面はオンラインとキャッシュレスの活用が推奨される。しかし、同人イベントは正反対で、対面販売と現金決済が基本だ。
特に後者は、キャッシュレス決済を導入するサークルも有るが、特に数百人単位の客を捌く必要が有る大手では、秒単位で時間を削れるものは削る必要が有る。その上で、カード情報などをオンラインでやり取りする必要が有り、結果として現金より時間が掛かるキャッシュレスは役に立たないのだ。前者も、イベント限定商品が有る上、後日ネット通販やショップ委託販売が有ると言っても、新刊をいち早く購入したいと云う心理が働く。
また、ショップでの委託販売が物によってはイベント終了直後に開始されるとしても、イベントでは作者に会うことができると云うメリットが有り、イベントで苦労してでも会いたいと云う需要が有る。オンライン通販では、到底不可能だ。
コミケは、同人誌と云う表現手段を主軸に、売り手と買い手の交流会の側面を持たせることで栄えてきた。そして今では、コミケは日本の同人文化の代名詞だ。
しかし、その転換を余儀なくされようとしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?