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虐待通報件数増加はどういう意味を持つのか?(ファクトフルネスで我々は考えられているのだろうか)

最近、目黒の5歳の女の子の裁判の記事を見て、言葉にならない思いを感じる。きっとそれは私だけではないだろう。千葉の災害もそうだ。

悲しいニュースが目につく一方で、本当に現実に悲しい事件ばかりで暗い世の中だ・・・と、感じてしまう人を一人でも減らしたいなと思い、私に何ができるか考えた結果・・・

先日発表された児童相談所での児童虐待相談対応件数の内訳をグラフ化したので、是非じっくりと、見ていただきたいと思う。(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000190801_00001.html 9月20日アクセス

あなたは、毎年の児童虐待相談対応件数は増加、という見出しに落ち込んでいないだろうか。平成30年度は速報値で約16万件、グラフを見ると驚異的な伸びに見える。平成20年度のなんと約3.7倍だ。

『毎日暗いニュースを見るし、虐待も増えてるんですよね。』

と聞かれることが、私は正直、思った以上に多かった。(最近は若干減ったけど)実際にグラフは絵に書いたような右肩上がりのグラフだ。

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でも私にはその質問に、いつも濁したような返事しかできない。

その理由を今日はできる限り簡単に、でも不足なく、述べたいと思う。

厚生労働省が発表する虐待相談の経路別件数の推移

毎年出される数字は以下のようになる。これは児童相談所に正式に虐待相談として受理されたケースで、経路がわかっているもののみだ。

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まぁ、数字は分かるけど、こんな数字だけじゃわからないよ、実際どうなの?って皆さん思うと思うので、簡単にですが見える化しました。

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見やすいように平成20年度から3年毎に数字を抜粋し、作成したもの。

こうすると、「警察など」からの通報が圧倒的に増えていることが分かります。実に平成20年度の10,7倍!

なぜ警察が特に増えているのか(増えているように見えるのか)

これには理由が大きく2つ理由があって、厚生労働省の資料にも書いてあることをそのまま抜粋しますと

心理的虐待が増加した要因として、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力がある事案(面前DV)について、警察からの通告が増加。

と書かれている。

とても簡単に書くと

①子どもの虐待の定義そのものが広がった(面前DVも虐待に含まれるようになった)
②警察がその情報を、児童相談所に共有することになった

ということがあります。

そっか、増えるには理由があるのね、と思ってくださった皆さん。

つまり、もしかしたら通報件数ほどは、虐待されている家族は増えていないのかもしれないのです。


ここまできたら、他の通報はどうなっているのか気になりませんか?

というわけで、実際に警察などを除いた数字でグラフを作りました。

警察を除くと、近隣知人の通報が増加(2,8倍)

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あくまでも簡単に考えるために「全数ー警察など」で数字を出すと

平成20年度→29年度では1,8倍に増加していました。(警察を入れると3,7倍になるので、だいぶギャップはあります)

その中で件数が多いのは

1位 近隣知人

2位 その他

3位 学校 僅差で、4位 家族

・・・

です。

いや、2位のその他ってなんだ!?という感じなので、選択肢にないものを挙げ、社会的養護の専門家と考えてみたら

「多分、近隣の知らない人なんじゃない?」

と助言をいただく。

その後自分で考えると、近隣ではないけど、知人、という人もあり得るなと思ったのでグラフには書いた。

平成30年度に、児童相談所に寄せられた虐待相談の相談経路は、警察等、近隣知人、家族、学校等からの通告が多くなっている。(厚生労働省 発表資料より)

(と公式資料にかいてあるが、その他の2位をもっと分析してもらいたい気がする。。。。)

つまり「通報はしたけど、詳細はわからない、住所もわからない」という状況もおおいのではないかなと。

湯浅さんも書かれているし私も話を伺ったことがあるが、住所が分からない特定できない家庭の訪問はかなり難しい。

このマンションのどこか、程度しか情報がなく、該当する階のすべてのドアのインターホンを押す、なんて話も聞いた。

「住所が特定できない場合には、当該エリアに、対象となる年代の子どものいる世帯があるか、あるとしたら何世帯かを調べて、ある程度特定できたら、同様に安全確認します。
生命の危険がないか、虐待がないか確認するこの作業を、すべての通報について48時間以内に行うことが、私たちには義務づけられています。」

それを48時間以内に、って可能だろうか?と思う。(記事には接続率の話も出てくるので、お時間があれば最後の方も読んでほしい。)

早期発見のために情報提供はすべきだが、情報が断片化して早期介入に繋げられない・・・のかもしれない。(通報の手段が、固定電話からスマートホンになることで、そもそもどこの児童相談所につなぐべきか、という部分にも時間がかかっているようだった。)

ちなみに児童本人からのSOSはどのぐらい増えているのかご存知だろうか。

実は平成20年度からすると29年度では約2倍にまで増加している。いいことじゃないか、と思ったあなた。

しかし、絶対数があまりに少ない。

児童本人からの通報は全体の約1%。平成20年度から1%で横ばい。

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昨年度のアンケートにSOSを書いていた女の子の虐待事件で、子ども本人からのSOSが増えたそうだ。実際には児童相談所以外の相談対応件数はここでは扱っていないので、もしかしたら別のところの窓口をつかっているかもしれない、がそれにしても少ないなぁと思う。

相談内容の変化は?

今回はグラフを作成していないが、相談内容の変化も特徴的だ。

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心理的虐待の増加は警察だと考えると、実際の心理的虐待は増えているのだろうか?明るみに出ただけなのだろうか?はたまた全件児童相談所に共有しているだけなのだろうか。

Factfullnessで考えると、きっとそうではないように感じてしまうのはわたしだけだろうか。

児童相談所も、通報の48時間ルールで時間も取られ、肝心な重症ケースにリソースを配分できないのかもしれない。通報者も、実際に189などに電話をかけて、最後まで電話で話しきっているのは1割り程度。残りはつながらないなどで途中で電話を切っているのだ。

5GやIoTなどでもし電話が繋がりやすくなったとしたら、それが繋がりだしたら、どんな通報件数になるのだろうか。

今の予算で、この通報件数を受け止めるのは不可能だ。(予算関係はまた別のnoteで書こうと思う。)

最後に

今回は目黒区の5歳の女の子の虐待死事件の判決がくだされ、その記事を見た日でもあった。

母親はDVの被害者だったから。加害者、という言葉に、やはり違和感を感じている。

面前DVがこれだけ多く把握できるようになった今、児童虐待はこども、だけの問題ではないのだと思う。

RACとしても個人としても、悲しいケースを少しでも減らせるよう、できることをしていきたい。

長文になりましたが、最後まで、読んでいただきありがとうございました。

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