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SNSという公園で一家団欒している中に、企業が看板担いで「お邪魔します」と言うために:【聴講メモ】ソーシャルメディア運用基礎セミナー ~新担当者様向けの運用ガイド~

株式会社トライバルメディアハウス様主催のセミナーになります。
アカウント運用の基礎の中でも特に、新しく担当者になった方向け。
テクニックというよりも「このように考えていただきたい」というマインド面の解説でした。

ZOOMコメントの練習を兼ねて冒頭にアンケートを行う導入など、ウェビナー運営面でも学びになる点が多数。講演の最後に手を振るフレンドリーさは、まさに今回説明された「好意度の上昇」の良い例でした。

聴講しての感想はまた後日投稿できればと思います。

講師:株式会社トライバルメディアハウス
   プロダクトデザイン事業本部 尾上 真輝氏
公式:https://www.tribalmedia.co.jp/event/13714

ソーシャルメディアの概況のおさらい

◯一日あたりのメディアの接触時間や割合の調査
2010年は7.3%だったものが29.4%に上昇。この10年で約4倍になっている。
これはスマホ・タブレットの使用がテレビと同程度になっていることを示している。
よく使うアプリのリサーチでは「SNS」が30%。
さらにその中でよく利用するものはLINE、Twitter、Instagram、Facebookが上位となっている。
以下は上位4種の詳細。

LINE
コミュニケーションインフラとしても確立しているSNS。
リアルな人間関係に基づく「インタレストグラフ」によるコミュニティの形成がメインで、連絡手段としての使い方となるため拡散性はない。
だが広告としてはSNSの中でも最もリーチが高い。広告メニューが豊富なことが要因にある。双方向性はない。
どの年代でも使っていて「連絡するときはLINEで」というやりとりも多くなった。感情表現もスタンプの利用で豊かにできる。
なので「リアルタイムなやりとりができる、全世代が幅広く利用しているSNS」という立ち位置。

Twitter
最も拡散性が高いSNS。広告も種類豊富。インタレストグラフ(興味関心に基づく関係性)とソーシャルグラフ(実際の人間関係に基づく関係性)の双方の要素を持つ。
年代は2−30代が多い。
リアルタイムで日常や興味に沿った情報を発信するSNSで、関心あるテーマのニュースを入手する媒体としても利用される。
興味毎にアカウントを作っている利用者も多い。匿名性のため周囲を気にせず思ったことを投稿しやすいことが理由のひとつ。ソーシャルリスニング・口コミを拾うには良いプラットフォーム。しかし拡散性、情報消費のスピードも速いので、「とにかく投稿していけばいい」わけではなく、投稿にポイントがないとスルーされる。

Instagram
投稿自体に拡散性は無いものの、ハッシュタグによる拡散の可能性がある。広告も同様。
インタレストグラフ型なので、興味関心でつながるSNS。ハッシュタグで興味関心のある分野の情報を検索する利用方法など。
こちらも2−30代の利用者が多い。以前は女性の利用者が多かったが、今は男女比率半々くらいになってきた。
アクティブ率が高いことも特徴。フォトジェニックな画像と有益な情報が求められる。
消費される情報よりも、ストックする情報の発信が求められる。

facebook
実名性があるのでソーシャルグラフ内の関係性になってしまう。拡散性はない。誰々さんはこういうことに興味があるんだ、ということを知られたいか知られたくないかで利用方法も変わる。
だがターゲティングの精度は高く、機能が豊富。3−50代の利用者が多い。ユーザーの年代が高めでビジネスで使っている人が多い。学生の利用は減少傾向にあり、社会人が利用の中心。
情報発信より受け取りのツールとして、閲覧が多い傾向にある。
また、一定の秩序を持った関係性の構築に向いている。公式な自分を出す傾向が強い。

「全部やればいい」というわけではなく、この性質を理解し、自社商品・サービスに合わせたメディアで発信していく。

例えば、インスタは世界観が大事。統一性のあるコンテンツを用意できるかが問われる。
Twitterなら、Twitterならではの文脈やトレンドに乗ったり、キャッチアップしてすぐに投稿できる体制があるかなどが問われる。

ソーシャルメディアマーケティング(SMM)とは

◯変遷
SNSが普及するまでは、気になることや調べたいことはYahoo!やGoogleで「能動的に」検索するものだった。なので企業としては検索順位を上げるSEO対策や、検索数を増やすことに課題を持っていた。

しかしSNSが普及したことで、情報は流れてくるものを「受動的に」クリックする形に変化した。なので現在の企業はSNSへの最適化や、いかに話題に取り上げてもらえるかが求められている。

◯ソーシャルメディアは公園と考えてみましょう
SNSはユーザー同士が交流する場所。企業がいきなり入ってきても「なんだこれ」となる。
いきなり家族が団欒している公園に、看板を持って「いかがですかー!」なんて声を張ったら、違和感があるしそもそも迷惑。
生活者が主役である公園では「マーケティングをさせていただく」という姿勢が大切なポイントになる。

◯ソーシャルメディアの役割とは
まず「潜在顧客」がいて、「認知はしている」状態にシフトさせる。
そのあと「知ってるし、興味はある」状態、その上の「興味があって欲しいかもしれない(検討)」、そして「購入」。
ここまでは買ってもらうまでの間、顧客へ情報を届けるフェーズ。
そのあとに「買ってもらってからのフェーズ」として、顧客の愛を深める流れがある。
購入したあと、それに満足すると「このブランドやサービス好きだな」という「ファン化・熱狂」するようになり、さらに周りの人たちに「推奨行動をとる」というのがマーケティングの一連の流れ。

このそれぞれの層に対して実施する施策は変わるため、「これをやっておけばOK」なんてものは存在しない。

この各項目で、適正のある(強みを活かせる)発信が異なる。
SNSの場合は、潜在顧客、認知、興味、そして満足・熱狂、推奨の項目が当てはまる。
もちろん購入・検討の箇所をSMMで働きかけることもできるが、どちらかといえばそれ以外を得意としている。購入・検討を強みにしているのはむしろメルマガや店頭セールス。
SNSは顧客との関係を深めながら、未来の売り上げづくりをするもの。
目先の売上やマーケット拡大ではなく、中長期的に行う施策であるということを頭に入れて欲しい。

◯つまりはブランディングが得意
まとめると
・理解の促進
・好意度の向上
・想起率の向上
・口コミ醸成
の4点が得意なのがSNSといえる。

これらによって形成されるのは、すなわち「ブランディング」となる。

◯ゴール・指標とすべきなのはKGI・KPI
SNSが得意なことをゴールとするなら、
KGI(ブランド想起や好意度の達成)と、KPIに分類される3点(リーチ、エンゲージメント、話題性と評判)が重要。

リーチやエンゲージメントの数字は一般的なマーケティングでも追いかけていると思われるが、必ずそれらが「好意」や「想起率」という目的に向かっているかどうかを確認しなくてはならない。
この点を確認しないと「フォロワー数は増えてるけど結果が出ているのかわからない」ということが起きる。

なのでとても大切なのは
「◯◯してもらう場所」(ex.商品を買ってもらう場所)
ではなく
「◯◯したいと思わせる場所」(買いたいと思わせる場所)
という前提である。

運用担当者がやるべきこと、するべきこと

◯ここだけは押さえたい3つのポイント

1.アカウント運用の目的を設計する
 T 誰をターゲットにし
 C どういうコミュニケーションを行い
 B どんな意識・態度変容をさせるか

T ターゲット
どんな人がSNS内に多いのか。
例えば、受動的な情報取得をしている人や、隙間時間に暇つぶしをしている層、ニーズが顕在化していない潜在層など。

C コミュニケーション
即時的に感情を喚起できるコンテンツ(「おっなんだこれ」という感覚)
隙間時間に消化できる、具体的なターゲットを意識したコンテンツが求められる

B ビヘイビア(どんなことに寄与できるか)
想起率、好意度、利用や関与意向の向上がここにあたる

【具体例】

食品メーカーなら
T 働く子持ちの夫婦へ
C 時短レシピ、簡単な飾り切りや製品情報を投稿するよ
B 忙しい私に役立つ情報!という好意度を上げる、ウインナーならこの企業の商品にしよう!と想起させることができる

賃貸企業不動産なら
T まだ家の引っ越しを考えていない生活者へ、
C 不思議な間取りを紹介、素敵な部屋のレイアウト、キャラクター投稿、賃貸情報のコミュニケーションなどをするよ
B 日々のネタや生活に役立つ情報を提供してくれる!と行為度を上げ、引越しを検討するときにこの企業で検索してもらえるよう思い出させることができる

2.どんな情報発信をするのかを考える
SNSは「◯◯したい」と思わせる場所。
であれば、どんな情報発信をすればよいか。
一方向の押し売り発信ではなく「◯◯したい」をどう生み出させるか。

【フィードはポストの中だと思う】

お店のメニュー表のように能動的に取得する情報ではなく、受動的に取得する(覗く)ポストの中のチラシのようなイメージ。

ご自身の家のポストの中を想像して…
ポストを覗いた人がどんな情報を求めている?

 受動的な情報取得:隙間時間、目的・時間なく、「何か」良い情報ないかな?と取得している情報
 能動的な情報取得:必要なときに、目的があって、「必要な」情報ないかな?と取得している情報

SNSは基本受動的。

バタフライサーキットというGoogleが推奨している、人々の情報探索をかき立てるモチベーション要素があり、種類は全部で8つ。
その中で受動的な情報取得にあてはまるのは4つ。
なので、その4つの要素を盛り込んだ情報発信をすることになる。

3.効果測定をしてPDCAを回す
SNSにおける効果測定、PDCAはどういうことを行うべきか

運用のし始めは「Plan」で企画・作成し、投稿への対応を行う。
「Do」で実際に投稿して、どうだったのかを測定(「Check」)し、その結果を持ってどう運用を改善していくか「Action」を固める。

いずれにしても投稿は即効性があるものではないので、一回やったから完璧なもの、ではなくグルグルぐるぐるPDCAを回して精度を上げていく必要がある。
変えた方がよいのか、反応がいいのはどういうものなのか。

【それぞれの項目】

・Plan
まず「世の中ごとカレンダー」と「会社ごとカレンダー」を作ってみることから始める。
 世の中ごと:催事や次節、記念日(今なら「お盆ですね」とか)
 会社ごと :新サービス、新商品、キャンペーンなど(年間スケジュールを組んでいるはずなのでそれに沿う)

ぽっと思いついたことを闇雲に投稿しているのでは、今回ここまで解説した内容に反しているので、必ず計画的に投稿を作成する必要がある。

この二つのカレンダーをもって、この日の投稿コンテンツはこれにしよう、とブレイクダウンしながら考えていく。
むしろ、考えることが一番大変でSNS運用の壁になってくる。

また、アクションしてもらうための投稿企画のポイントについて。
5つの琴線スイッチ(こういう要素取り込んでおくといいよ、的なポイント)を意識する。

投稿ネタの収集源は、上手く使ってるアカウントをリサーチするのが良い。
NAVERまとめやYahoo!リアルタイム検索、Togetter、Twitterトレンド。その他、本講演主催であるトライバルメディアハウスが提供する「ブームリサーチ」など。

・Do
ユーザーの目を引きやすい画像を追加して(ビジュアル的にする)、見出しをつけ、導入文章で読み進めやすくする…など一定の基本構成がある。
この形式を元に発信を行う。

・Check
投稿を評価するには基準が必要。
「この投稿にはいいねが100ついてる」と言っても、それが良いのか悪いのかわからない。

3C(Company、Competitor、Customer)
 自社内での分析や評価をおこなう
 競合の内容は分析・比較
 業界に囚われず、反応がいい投稿の要因を探る

で、レポートをそのチェックした内容に合わせて作るんですが…

よくあるのは、「その理由は◯◯です」まで出来ているのに示唆が足りていない例。大事なのは、だから今後どうするのか。
レポートは示唆のところまで書いて、「他社さんはこうしているからこうしていきましょう!」とすること。

・Action
アクションを促す考察と提案は三種類。
 G 良かった要因
 B 悪かった要因
 N 新しい要因
この要素を入れて考えた内容を提案するといい。

ゼロからアイデアを生むのは難しいので、とにかくエンゲージが高い投稿を参考にする。
なのでたくさんの投稿に触れて、世の中が何を受け入れているかを知る。
そして個人アカウントでもどんどん試すこと。
これが担当者に求められること。

まとめ

・誰をターゲットに、どういうコミュニケーションをとって、どんな意識を持ってもらうか(態度を変えてもらうか)を考える。これがアカウントの目的になる。

・SNSユーザーは受動的な情報取得をしている人たちなので、押し売り発信ではなく「◯◯したい」をどう生み出すかが鍵

・効果測定(PDCA回す)ためには、琴線スイッチを意識し、投稿の基本構造に沿ったコンテンツを考え、チェック後にアクションするときは要因を見つけたあとの示唆まで行うこと。

終わりに

でも、今回の内容を全部自社で行うのはなかなか難しい。
特にアカウント専任の担当者は少なく、みんな何かと並行しているはずで時間がない方ばかり。
時間ないから疎かになる、というのがよくある例。
なので自社ツールを開発し、代行できるようにした背景がある。

SNS運用はエンゲージ率で測るだけでは正直難しい。エンゲージが高ければ成功ではないので、数字(フォロワー数など)を追うのも大事だけれど、「何を達成したら成功なのか」というのを考えて運用していただきたい。

質疑応答

Q.特定のテーマにあったSNSは?プラットフォームはどこがいい?

どういった年代層にそのテーマがあっているのか。高齢向けならむしろその子供がいいのかもしれないし、公式感があるのはFBだったりもする。センシティブな内容やリアクションしにくいものならTwitter併用とか、様々考えることが出来る。でもTwitterはガチガチ投稿が好かれにくいので、フックになるような若い方が興味を持つようなものを混ぜていく必要がある。知ってもらいたい・認知目的ならリーチも必要で、目的が「アプリを知って欲しい」のか「テーマを知って欲しい」のかでも変わってしまうポイント。

(以上です、ありがとうございました!)

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