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メルロー@エッフェル塔2階 フランスの食関連ニュース 2021.10.27

ボルドーやコルシカ、ナパ・ヴァレーなどで経験を積んだ3人の若者が、パリの中心地から車で20分ほどの、ヴェルサイユ平野にてワイン造りを始めました。ドメーヌ名は「La bouche du roi/王様の口」。過去20年は休耕していた更地を葡萄畑にしたからこそオーガニックで始めることは簡単だったとは言いますが、2017年からシャルドネ、シュナン、メルロー、ピノ・ノワールの品種のブドウの苗木の植え付けから初めて、2019年にやっと3500本のワインを生産。この試みが、エッフェル塔運営会社であるSETEの目に止まって、なんとエッフェル塔の地上57mの2階で、1区画のメルロー品種を毎年熟成させることに。昨年蔵入りした2020年のキュヴェをボトル詰めするという機会に居合わせるという僥倖に預かりました。2000本限定で1本100ユーロと高価ですが、エッフェル塔というプレステージであっという間に売れ切れるのでは。「La bouche du roi」の野望はドメーヌ周辺をナパ・バレーのようなワインツーリズムの盛んな場所にしたいということ。オリンピック需要をまずは目指し、パリ中心とするイル・ド・フランス地域圏は、18世紀末まではブルゴーニュ地方を上回る広大な葡萄畑の表面積を持つ、フランスを代表するワイン生産地だったという威光を取り戻したいという野心溢れるプロジェクトです。

ブドウ畑では最新の機器が使用されているそう。電動式で超軽量、土を圧縮することのない草刈り機や、害虫や病気対策として農薬を使うのではなく、ぶどうの木が身を守るのに必要なタンパク質の合成を促進するメロディーを奏でる実験的なオルゴールを導入するなど、その設備は現代的で未来的。しかし、ブドウの収穫はすべて手摘みと決めており、周辺の住人たちや友人が参加。希望者が多く、ウェイティングリストができたということです。

エッフェル塔のキュヴェとして選ばれた品種はメルローでしたが、その前に別の機会でいただいた2020年「Le Grand Lever」のシュナンともに、なかなかの美味でした。自分たちの経験と情熱をベースとし、歴史と文化、ガストロノミーを時代に合わせたビッグビジネスとするという、不落の構築力に学ばされることしきり。パンデミックを前後して、現在のフランスでは、社会貢献、経済循環を生むような新しいアイディアを資源と組み合わせ、若者たちによる起業が雨後の筍のように相次いでいます。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載しています。ご笑覧いただけましたら幸いです。【A】ルーブル通り旧郵便局内に新ホテル登場。【B】パリ郊外にスキー村風ビストロが期間限定で登場。【C】Alain DucasseとLavazzaが新コーヒーブランドを創立。【D】パリ・オリンピックのオリンピック村の食事をマルセイユの3つ星シェフAlexandre Mazzia氏らが担当。

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