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祇園さゝ木さん@京都祇園 フランスの週刊フードニュース 2023.01.15

今週のひとこと

年末年始の一時帰国中です。もう後半戦となり、離れがたさを感じる今日この頃です。仕事はもちろん、お年始のご挨拶のため、さまざまな方々を訪ね歩いた2023年の新春。
コロナ禍にてなかなかお目にかかれなかった大切な方々との再会は、心温まるものでした。多くの方々とのひと時と、いただけたお言葉、気づきは、語りつくせないほどです。

関西出張で、京都を発つ前に、祇園さ々木の店主・佐々木浩さんを訪ね、久々のご挨拶が叶いました。2019年の末、まさに新型コロナウィルス が確認される直前に、2020年度版の「ミシュランガイド京都・大阪」で3つ星を獲得されて、この大変な時を切り抜けていらっしゃいました。1961年生まれで、60歳で引退を考えていらっしゃったときに持たされた花だったでしょう。

36歳で独立し、祇園町北側に「祇園さゝ木」を開店。
2006年、八坂通に100坪の一軒家を購入し1年がかりで改装して、現在の店舗を開店。昨年は「祇園さゝ木」の25周年で、開店来、空席があったことがないという本物の人気店。「祇園さゝ木」から独立された腕の確かな弟子たちと、京料理に前衛的な風を吹き込んだ、師匠である佐々木さんとの師弟関係は強く、「さゝ木一門会」の存在からもうかがえます。

「祇園さゝ木」はこの2月から改装のため、5ヶ月の間、閉店するということです。いままでのカウンタースタイルはやめて、オープンキッチンにするということ。
「シェフ一人だけに光が当てられる時代はもう終わりましたね。若手でも、オープンキッチンに立つことで、客に見られるという緊張感の中、腕を磨いていってほしい。」と佐々木さん。後進を育てるための仕掛けとして、「佐々木劇場」ではなく、オープンキッチンを選んだのでした。

料理も弟子たちが作り、佐々木さんが最後に修正を加えることで、お客様にブレのない佐々木の料理を出すが、若い料理人たちに料理を創作するという喜びと緊張感により接して欲しいという佐々木さんの思いも伝わってきます。

フランスのある調査機関の昨年の調べで、消費者はシェフの著名度よりも、カウンターキッチンを選択するという数字が出ていました。

こうした時代の希求を、お客様のそばにいるからこそ、佐々木さんは肌身で感じているに違いないと思います。

しかし、その時代の希求に応えるという姿勢ではなく、その舞台において料理人をいかに育てていけるかという、未来を見据え、身を以て仕掛けていくその打ち出し方、挑戦に感銘を覚えました。「少しずつフェイドアウト、引退の道を作っていきますよ」と言いながら、「修行の大切さを取り戻したい」、「若い子は5年も一心不乱に仕事をすれば、必ずものになりますよ」など、料理界を支えていきたいという、熱い言葉が心に響きます。

これからも料理人、あるいは多くの人々の道標となってくださることを、心から願っています。

今週のトピックスは、今週のひとことの後に掲載しています。食の現場から政治まで、フランスの食に関わる人々の動向から、近未来を眺めることができると、常に感じています。食を通した次の時代を考える方々へ、フランスの食事情に触れることのできるトピックスを選んで掲載しています。どうぞご参考にされてください。【A】1月はドライ・ジャニュアリー。ノンアルコール飲料の広がり。【B】第一回「ガレット・デ・レーヌ(女王のガレット)」のキャンペーン。【C】フランス一周、高級トレイン登場。【D】独立した3つ星シェフ夫婦の新しいホテル・レストラン。

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