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走りの雉と名残のレッドピーチ@パリ4区 フランスの食関連ニュース 2021.10.20

今週のひとこと

メトロやバスを使わず自転車での移動を始めてから早1年半が経ちます。自転車道が整備されつつあるパリ。とはいっても、とってつけられたような自転車道もあり、車道や歩道との区別もないままで、安全とはいえない道も多く、車や歩行者にとっては迷惑千万なことも多発。しかし、自分としては、これほど魅力的な移動手段はないと思い込んでいます。ときにバイクならまだしも、パトカーがサイレンとともに自転車道に侵入してくるのには、交通法規があってないようなパリの街と、驚いてしまうこともしばしばですが。電動のキックスケーターや電動一輪車の利用者もいるので、朝夕の通勤時間は特に、危険度も高くなります。最近は、自転車利用の交通違反者を厳格に取り締まる警察を見ることも。信号無視や歩道運転、スマホのながら運転などに罰金が科せられています。

という状況ですので、できるだけ余裕を持って出発して、安全運転を心がけつつ、コロナ後の町の様子を観察しながら移動するのが日課になりました。その気になればヴェルサイユ宮殿までも1時間と少し(電車に自転車を乗せることもできる)、ヴァンセンヌの森も身近に。長年住んでいても知らなかった気づかなかった、さまざまなパリの表情を発見するのには、大切な足に。エコロジーを謳う都会人ならでは、バイクから自転車に乗り換えた友人も老若男女で多々いるのも、今らしい風景かもしれません。

新たな店との出会いが増えたのも、自転車を足にしたからこその嬉しい利点。バスティーユ広場に向かって、マレ地区のバス道Saint Antoine通りをゆっくり走行していたところ、ある惣菜店の庇にFromage de Tête national 2019/ 2019年ナショナルFromage de Tête賞、という文句が書かれているのが目に飛び込んできた。寄り道せずにはと、すぐに自転車を停めて、問題のFromage de Têteはもちろん、いろいろと商品を試したところ、いずれも抜群の美味しさで、今や、足繁く通う店の一つとして愛用しています。この惣菜店の名前は、さすが、腕には自信があることを物語るような名付けで、「Au Sanglier/イノシシにて」。大地をしっかりと踏みしめる力強いイノシシのイラストが店のロゴになっています。

Fromage de Têteとは、Fromageとは命名されるものの、乳製品のチーズとは程遠いもので、豚頭の肉の部分(頬、鼻、舌など)を、ニンジンやエシャロット、タマネギなどの香味野菜とともに煮込んで、ゼリー状にした煮こごり状のものです。パセリや、タイム、ジュニパーベリー、クローブ、コショウなどのスパイスで味付けすることが大半ですが、Au SanglierのFromage de Têteにはいっさいハーブの形跡がないのに、店の潔さを感じました。煮込みの時点での味わいだけで勝負したいということが伝わってくる。店の威信をかけた商品であることも感じました。

また、雉のパテ。走りの雉に名残のレッドピーチ(Pêche de vigne)を合わせたパテの美味しいこと。走りの松茸、名残の鱧の土瓶蒸しもそうですが、季節の移り変わりが美しい季節だからこその組み合わせ。小さな秋から深まる秋への序章は食卓にも迫っております。

今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。ご笑覧ください。【A】コルク製ストロー製造のスタートアップ企業。【B】Joël Robuchon International Institute創設の未来。【C】ノンアルコール&低カロリーのスパークリングワイン登場。【D】パラスホテルGeorge Vの一般向け料理教室。【E】青果物プラスチック包装禁止について。

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