天乃咲綾(あまのさあや)

この世界に愛という色を描く

天乃咲綾(あまのさあや)

この世界に愛という色を描く

最近の記事

香りの行方

私が選び纏う香りは、一旦私の一部になり、それから私を雨上がりの森へと招く。 導かれるまま私はその森へと足を踏み入れる。 気がつくと私の足の裏は、光と闇と深い静寂の中で強くしなやかな生命力でむくむくとこの世界を満たしてゆくものたちを感じる。 新たに生まれるもの、立ち去るもの、過去、未来、すべてはただ在るために在り、空たるために空なのだと私は歓喜する。 まだ雨を含む松の葉の向こうからは朝日が登り始め、その無垢な光の中私は魂のダンスを踊る。 ありのままでいい、あなたらしく

    • Automne〜幸せな未来へ

      季節の中で秋が一番好きだ。ショパンの甘く捉え所のない軽やかな、それでいてけして柔らかなだけではないそのピアノの響きも、秋が深まるこんな夕暮れによく似合う。 まるで少し湿り気を帯びた音の枯れ葉がひらりひらりと私の上に降ってくるようだと綾は思う。 そうしてそれはいつしか胸の奥の奥の方に隠したものにまで届き、優しく甘い痛みを伴って綾の内側に響いてゆく。 「人は何のために生きるんだろう」 そう正道に尋ねられた時に、あの時綾は答える事が出来なかった。 今ならば何と答えるのだろう。