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「藝泊〜泊まれるアートを考えよう〜」オープニングトークセッション:レポート(後編)

2020年8月4日(火)に行われた、「藝泊〜泊まれるアートを考えよう〜」オープニングトークセッションのレポート。後編では、龍崎さん、魚住さん、渡辺さんによるトークセッション内の印象的な対話をご紹介します。
(株式会社L&Gグローバルビジネス代表取締役 / CCO 龍崎翔子氏、AX ULTRA LAB プランナー 魚住 勇太、AX ULTRA LAB プロデューサー 渡辺 英暁、AX ULTRA LAB プロデューサー 布田 尚大(モデレーター))

▼前編はこちら

▼イベント概要

ホテルという空間をメディアとして捉えることで、没入感が生まれる

龍崎:
自分たちのやってる「ホテル」というのはあくまで「メディア」である
、ということが考えの根幹にあります。
今回のコロナの期間でも、リアルメディア(=ホテル)が使えなければ普通にメディアになっちゃえばいいじゃん、みたいな発想でnoteで「HOTEL SOMEWHERE」を立ち上げたりしました。

一方で自分たちの持ってるリアル空間としてのホテルは、観光業の中の宿泊業に限られる必要はないと考えています。別の業態に軸足をずらすような形で活用していけるのではないかと考えてアクションしています。

魚住:
詩のホテル」やイマーシブシアターのどちらも、いわゆる「アートを飾っているアートホテル」みたいなことではなくて、「アートの中に泊まっちゃえ」という、没入感という発想がすごく強いなと感じました。

龍崎:
たしかに、いわゆるアートホテル的なことは自分たちがする領域ではないと思っています。例えば「詩のホテル」についてもアートではなくどちらかというとエンタメだと思っているのですが、魚住先生がおっしゃった「没入感」にはこだわりがあって、その非日常感というか異世界に入り込んでしまうような体験ができる場所としてホテルは意味があると思っています。

自分たちのホテル作り自体も「世界観」を濃厚にしてるところがあって、別の世界線の中の登場人物に自分がなれるような感覚は大事にしています。

制約があるからこそ生まれるアイディア

渡辺:
普段僕たち(RaNa extractive)がものづくりをする時、クライアントさんのプロダクトやサービスを何か形にする、あるいはこういうことをしたいというお題を実現する時は、たいてい時期(=制作期間)のしばりがあります。時間をかければかけただけ良いものができるわけではないけれども、ある程度の時間って心の余裕、アイディアの余裕にもなります。

一方で、例えば制作時間が短いとか使えるものが限られるとかっていう制限はアイディアが出づらくしそうな気がしますが、実は制限って結構大事なんですよ。
アイディアがその制限を乗り越えようっていう時に脳の使い方が変わってくるので、普段思ってもいないような発想が出ることがあります。

そのために自分で自分たちに何かしらの制限を設けることもあります。僕らでちょっとハードルを高くしておいて、それを乗り越えるためにどういうことをしたらどういう反応が生まれるか、のようなことを考えたりもします。

龍崎:
実は私も、制限ある中で考える方が得意なんですよ。
もちろん自分がやりたいテーマに対して場所を探していくんですが、ホテルの場合は基本的には土地と物件がある。

例えば、それが北海道の山奥の築30年のおんぼろな温泉ホテルだったりとかする。そこからどうしようって考えて、他の街と比べてこういう特徴があるなとか、この建物はこういう人がこういう思いで作った場所だったんだなとか、要素をかき集めて、そこに自分らしいコンテンツ、要素を足して、練り上げて作っていくところがあります。
ハード(ホテルという物件)に制約されている中で、いかに自分のやりたいこととの辻褄を合わせるかみたいな取り組みがほとんどだな、と思うことは多いです。

自分たちの場合は、「ソフトでこういうことをやりたい」というアイディアが先にあったとしても、それをそこでやる意味がなければ成り立たないこともあるし、都合よく条件にハマる物件ってなかなか出てこなかったりするので、ハード(=制約)ありきでアイディアを考えています。

自分を突き詰めると未知になる

龍崎:
私の原体験として「泊まりたいホテルがない」と感じたことがすごく大きいです。今でこそすごく素敵なホテルが増えているんですけれども、事業をはじめた当時は「せめて自分が今後旅行する時に楽しくできるようにするためにもっと素敵なホテルが増えてくれないと困る」みたいな気持ちがありました。

当時この話をしても共感してくれる人が全然いなくて、「寝れさえすれば良くない?」とか「それなら高級のとこ行けば」とか言われて、そういうことじゃないんだよみたいな。
自分は明確に抱えている課題があるのに周りの人がわかってくれないという時に、その課題を解決できるのは自分しかいないので、なのでもう自分でやるしかないなって思いました。

自分が課題を抱えているって事はたぶん他の人もなんやかんやで似たような課題を持っているのではないかと思っていて、そういう意味で自分の課題に対して確信を持っていました。

魚住:
今回AXのワークショップをするにあたって「未知のつくり方」ってなんだろうと考えていました。例えばデザイン思考だったらフィールドワークをして観察しましょうとか、そういうことをやるんですけど、今回僕が最終的に思ったキーファクターは「エゴ」だなと思ったんですよ。
龍崎さんの話に近いと思っていて、デザインの中に中途半端なエゴが入ると怒られるのですが、AXの場合はエゴが中途半端じゃなくて、突き抜けるとその人の視点になって、つまりは未知になるので、するとそこに共感する人が出てくることもあると思っています。

学生の皆さんもAXのワークショップやこういうアイディアを考える時に、自分のエゴをめっちゃ見ることをしてほしいなと。

布田:
自分を突き詰めると未知になるってというのはつまり、単純に奇抜なことを考えると未知になるということではなく、「その深さまで行けるのは自分しかいない」ということなのかなという気がしますね。


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