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与件をくれよ

「私をイメージしてカクテル作ってください」
嘘だろ?と思うかもしれないが、
昔々バーテンダーのバイトをしていた時に何度か言われたことがある。

その時の私の対応
美女の場合:「どんなフルーツがお好きですか?ついでに私のこと好きですか?」
それ以外:「知るかボケ。」
若気の至りだなぁ。うんうん。

「無茶ぶり」と言うものが世の中には蔓延している。
無茶振りには事前情報や条件、いわゆる「与件」が欠落していると私は思う。

「私をイメージしてカクテル作ってください」
今は知らないが、昔はバーでやってみたいオーダーみたいな感じだったのだろう。
常連さんならともかく、初めてのお客さんにこんなことを言われても困るのだ。
基本的にはその後お客さんと会話しながら、どんなカクテルにするか決める。
サッパリ系か甘い系か苦い系かなんとかかんとか。
誘導尋問の様に選択肢を絞っていく。
そうすれば大きく好みを外すことがないからだ。

この「会話」が一切なかった場合が「与件欠落状態」である
・私をイメージしてカクテル作ってください
・何か面白いこと言ってください
・私が食べたそうなもの出してください
以上。その後は何を聞かれても黙秘権を行使する。

これで相手を喜ばせることができたとしたら、相当なテクニシャンに違いない。
バーテンダーの例でも、その人が着ている服やリップの色、予想される年齢などを参考に作るくらいが限界ではないだろうか。
甘いか辛いかと言う味の好みを視覚的な情報だけで予想するのは難しく、
相手にジャストフィットの味を出せるかどうかはもはや運でしかない。
となるとバーテンダーである私が選択できるものは、
ありきたりのみんなが好きそうな飲み物になってしまう。

ここでジレンマ発生。
「私をイメージして」と言うオーダーは特別感を求めるオーダーであるが、
その後黙秘権を行使した場合、
ありきたりの飲み物が出てくる。

なんと言うことだ。人類は損をしておるぞ!
より良いものを得たいのであれば与件をくれよ。
これが私の切なる願いである。

NO与件で察してみたいな美女がいたらきっと惚れてしまうだろう。
センクスとはそう言うものである。

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