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”記憶喪失”J1第21節 鹿島(A)vs札幌(H)マッチレビュー


 鹿島 0 ー 0 札幌

 前節セレッソ戦を3-3のドローで終えた鹿島。2度リードを奪うも追いつかれ、逆転され、なんとかエヴェラウドのゴラッソで勝ち点1を取りました。良い形で得点を重ねたものの、ミスとカウンターから2失点と勿体ないゲームだったのは間違いありません。新たな二枚看板の優磨、エヴェラウドにゴールがあったのはポジティブでしたね!

今節の大きなポイントはなんといっても綺世、優磨が不在でのリーグ戦という点。綺世が移籍で去り、優磨はおそらく疲労を考慮&13日天皇杯・ガンバ戦を見据えてのベンチ外判断かと。現在リーグ2位の得点力を誇る鹿島ですが、この2人を抜きに攻撃を考えるのは非常に難しいです。特に優磨は攻守、そしてメンタリティの面で抜群の貢献を続けてくれています。先発に名を連ねたエヴェラウド、土居の2人がどう攻撃を牽引していくのかは興味深いところでした。

 対する札幌は14位。リーグ戦は連敗中であるものの、ホームでは今季1敗のみと侮れません。リーグ前半の対戦では4-1で鹿島が快勝。札幌のクリアミスや、鋭いカウンターからチャンスを作り得点を重ねました。

〇前半

攻撃の起点を作れない鹿島。攻め込まれる時間が続く・・・

 鹿島はこの試合かなり苦しんだ。立ち上がりから終盤まで決定打に欠け、チャンスらしいチャンスを作り出すことすら難しかった。負けなかったことは収穫ではあるが、ポジティブよりもネガティブの印象が残る試合であった。

 両軍共に中盤の人数が厚めで激しいプレッシングの応酬が発生。お互いにボールを奪い合う時間帯もあったものの、ボール保持に成功し試合の主導権を握ったのはホーム札幌であった。

札幌は3CB+ボランチでのボール回しが安定。お家芸ともいえるブロック間を抜く縦パスを差し込みつつ、鹿島の中盤プレスを剥がすように大外WBへ展開。金子・菅がそのドリブルで高い位置まで侵入しつつ、相手陣内深くへの押し込みを先導した。常本と広瀬もよく奮闘していたが、ほぼサポートなしの1対1を迫られていたので相当気を遣ったはず。

 大外エリアが札幌の突破口となったものの、鹿島はその突破口を見出すのに苦労。エヴェラウドへのポストプレーに対してはCB岡村が粘り強く対応して封鎖。土居が中盤へのサポートもこなす以上、最前線で孤立気味になってしまったエヴェラウドはなかなかプレゼンス発揮に至らない。大外のSBを使おうにも、そのレーンは札幌WBも健在。DFラインでこそボール保持の計算は立ったが、それより前では秩序を保てずにボールを失う時間が続いてしまった。ピトゥカを中心にドリブルで強引に引き剥がすくらいしか中盤を攻略する目途はなかったようにも・・・

制空権を取られ、地上は密集。失った攻撃の手立て

 「どうやって鹿島はこれまで攻めてましたっけ?」と言わんばかりに攻撃の課題は浮き彫りになったような展開だった。前線へのハイボールで起点を作れず、相手を押し込んで両サイドを揺さぶりもできず。薄々誰もが思ってはいた、「今の鹿島は優磨と綺世あってこそ」をまざまざと感じる内容でしたな。

とはいえ、土居はオフサイドにはなってしまったものの惜しいシュートチャンスを裏抜けから作り出せていたし、各々がなんとか攻撃の形を作ろうと苦心していたのも感じれた。圧倒的に守備の時間が多かったものの、最終的にスコアレスに終えられたDF陣の奮闘も見事。まったくの無収穫ではなかったとも思う。特に広瀬と常本は攻守共にかなりの消耗を強いられていたはずで、彼らの頑張りなくして勝ち点は成し得なかったのでは。

〇後半

厚い札幌中盤の壁

 後半も大きく趨勢は変わらず。後半開始早々にエヴェラウドが岡村へのファウルで警告を食らい、更に攻撃が厳しくなった。前半から何度か接触で反則を取られていたので警告は致し方なかったが、元々相手とのコンタクトが多いエヴェラウドのプレースタイル的にも退場がチラつく。

56分にレネ・ヴァイラー監督は動く。エヴェラウド→安西、樋口→舩橋を投入した。安西を左SHに、カイキを2トップの一角に上げる。この采配に関してはおそらく安西のドリブル突破で相手陣内への侵入回数を増やすこと、そしてカイキの裏抜けを狙ったのかもしれない。前回対戦ではカイキの裏抜けで何度もチャンスを作り、実際に得点まで繋げている。エヴェラウドが止まって起点を作ろうとし、迎撃に遭っていたので「動いてチャンスを作る」ことをカイキに託したか。

 狙いこそわかったものの、じゃあ実際の出来は?となると微妙。カイキはやはり第3のストライカーとして輝いていたというか、優磨と綺世が相手DFの意識を引っ張る中で強襲・得点を重ねていたんじゃないかなと。だからこそセットプレーで得点力を発揮し、相手の視野外で駆け引きできてたのかな~なんて思ってしまった。たぶんそんな気はする。王様プレーヤーじゃないんすよ、きっとね。

舩橋&中村の起用により中盤での橋頭保に目途

 75分に中村亮太朗が久々にピッチへ。流石に度重なる裏抜けとプレスバックで疲れていた土居。代わり入った中村はアンカーを務め、インテリオールにピトゥカと舩橋が入った。札幌も疲れが出ていたこともあり、鹿島は中盤でのボールキープに目途が立つようになっていく。落ち着いて相手のプレスを剥がしつつ、両SBを上げて「らしい」攻めを見せる状態にまで持って行けた。中盤でようやく呼吸できる状況ができた。

ただ、やはり本職のストライカーがいないことでパンチ力には欠けたか。火力不足は否めなかった。少し意外だったのが染野をレネ監督が終盤起用しなかったこと。確かに前線が和泉・カイキ・安西の3トップに近い形だったので起用は難しかったのかもしれない。レネ監督の期待値として、カイキのCF起用>染野のCF起用、と捉えるのはちょっと悲観的すぎるのかな・・・

終盤に攻勢を仕掛けるも得点には至らずゲームセット。両軍スコアレスで試合が終了した。

次戦、天皇杯・ガンバ大阪戦へ

 良くない内容だっただけに負けなくてよかった試合だったなと。n番煎じにはなるが、鹿島は今季前半戦をその圧倒的な火力で失点の多さをカバーして結果を残してきた。勿論すべての試合で火力を発揮できたわけではないが、勝ちを多く重ねられたのは間違いなくそのバランが保てていたはずだと思う。そのバランスを完全に失いつつある。流石にタイトル奪取だの言っている場合じゃないぜ・・・

優磨不在の大きさは言わずもがな、その影響は攻守に渡るんだなと再認識。次のミッドウィークには天皇杯・ガンバ戦が控えており、ここで敗れてしまうと増々チームを取り巻く状況はキツイはず。シーズン途中ながらチームを再建しなければいけないことは明白なので、優磨だけでなくいろんな面でチームを引っ張っていける選手が出てくることを祈りたい。

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