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”地の利”J1第10節 鹿島(A)vsC大阪(H)マッチレビュー

鹿島 3 ー 0 セレッソ大阪

 前節名古屋戦をホームでスコアレスで終え、首位浮上のチャンスを掴みながらもどかしい状況の鹿島。とはいえ今節を終えれば消化試合数が全クラブ並び、なおかつ勝利ならば単独首位の状況は変わりません。セレッソ大阪はルヴァン杯で同組なこともあり対戦は今季3度目・・・お互い手札はわかっている状況です。

 セレッソ大阪は先日のルヴァン杯対戦時に印象的だったFW北野が不在。乾もチーム外の状況ということもあって期待の若手を揃えつつ、清武や原川といった実力者が名を連ねる。彼らもここで勝てば首位川崎まで勝ち点差4と追随できるチャンス。士気は高かったはずです。

勝負は試合前から始まっていた

 この日は悪天候で、試合開始時には雨は上がっていたものの直前まで豪雨と強風に見舞われていたらしいヨドコウスタジアム。現地組の方々によると、ウォーミングアップ前に岩政先生やヨンハさんなどコーチ陣でピッチを隅々までチェック。実際にパス交換などを行って球足への影響を確認していたらしい。

その状況を選手らに伝え、実際にアップで感触を確かめる鹿島。雨はあがったが強風はまだ吹き荒れ、ピッチも水たまりが散見。コイントスではキャプテンの優磨がサイド変更を選択し、風上を取った。ここが前半立ち上がりの大攻勢に繋がったといえるだろう。

風を味方に、芝をも味方にアタック

 試合開始早々に鹿島にチャンス到来。ボールのバウンドが不規則でクリアしきれないセレッソを押し込み、開始1分からシュートに持ち込むことに成功した。とはいえ3分にはセレッソも反撃し、清武のタッチダウンパスから山田がラインブレイクで強襲。あわや先制点を奪われそうになってしまった。

 鹿島はいつも通りのロングボール前進をベースに、とにかく相手陣内でプレーすることを優先。優磨が最前線のターゲットとして機能し、両SHも相手SB裏にボールを呼び込むことで起点作りを担った。フィニッシャーの綺世がヨニッチ、西尾に徹底的に封殺されたことは誤算だったが、地の利を得た鹿島はゴールキックのロングフィードから先制点を生むことに成功する。

6分、スンテの蹴ったロングフィードを和泉がフリーでバックヘッド。セカンドも綺世が制してバックヘッドで更に逸らし前方の松村へ。まさに狙い通りといった進み方で相手陣に強襲をかけ、安西のフリーランで松村のシュートコースが空けられると中央に切り返しシュート。こぼれを優磨が押し込んで先制点を奪った。

 14分には関川の素晴らしいインターセプトからボールを受けた優磨がクロス。ファーサイドでフリーになっていた松村が冷静に流し込んで2点目GET。最高の立ち上がりを鹿島が掴んだ。見事。

チャンス自体は作れていたセレッソ・・・

 早々に2失点を喫してしまったものの、試合の主導権自体はセレッソにあったと思う。ボール保持から原川、清武ら作り手が織りなすチャンスメイクは非常に巧み。押し上げられたDFライン裏のスペースを咎めるタッチダウンパスやフィードはFW加藤、山田の機動力もあって威力抜群。フィニッシュさえ決まっていれば、タイスコアに持ち込めるだけの可能性は十分にあったはずだ。

 セレッソも決してピッチ状態を利用しなかったわけではない。DFラインから積極的にスペースへ落とすロングパスを敢行し前進。特にクロスの場面では、GKスンテの手前でバウンドするような配球を意図的に行っていた気がする。実際にスンテは常にギリギリの対応に迫られていたし、一歩間違えれば即失点の状況に持ち込まれたいたのも事実だ。そこを守り切ったのだから、クォン・スンテ様々です。頭が上がりません。

2失点とも目の前で決められ、ピッチコンディションに苦しまされたSB山中には同情の余地もある。とにかく足下が狂い、自慢のフィード能力はおろかファーストタッチさえ誤算が生じていた。それでも、大外の攻撃を担当するためスプリントをかけて上下動。2失点目もカウンターに転じようと前線へ走りこんでいた最中、味方のボールロストにより慌てて反転するも松村のマークに間に合わず・・・・。対面の松村、そして鈴木優磨にこと守備で苦しめられた試合になってしまった。

火力を求めた小菊監督、より直線的な攻めへ

 後半開始からセレッソはメンバー交代。左SH清武に代わり、パトリッキを起用した。より縦方向に推進力のあるアタッカーを据え、火力向上を狙ったのだと思う。作り手を減らしながらも、より単独突破の可能性を高めて2点ビハインドを跳ね返す狙いだろう。

 ハーフタイムもはさんだことでピッチ状態は前半ほど悪い状態ではなくなった。油断できる状態ではないが、極端にボールが止まる、不規則に跳ねる状態ではなかったようにも見えた。選手らが走ると水しぶきが大きく上がるのは変わりなかったが、足を取られて転ぶシーンも減少。これにより両軍、地上進軍ルートも安定していく。

セレッソ・小菊監督は52分には右SHにこれまた機動力が特徴の毎熊を交代起用。とにかく攻めろ!という意図か。直後の53分にはその毎熊がポスト直撃の惜しいシュートを放つも得点にはならず。惜しいシーンばかりで報われない状況が、よりセレッソを苦しめたとは感じた。決して間違った戦い方をしている感触はないだろうが、ただただゴールが遠かった・・・

鹿島もプレスが緩み、DFラインでツケを払う時間に突入

 61分にブエノが右大腿部を負傷し無念の交代。中村が交代で入り、三竿がCBへ下りた。正直、この交代が正念場を迎えた。中盤でセカンド回収に多大な貢献を払っていた三竿が後方に下がったことで、中村も奮闘はしていたものの寄せのスピードは低下。65分に途中交代で入ったメンデスには幾度となくラインブレイクを許し、三竿も懸命に守ろうとはしたが相手が一枚上手だった。

 攻めの手数を増やしたセレッソだったが、パトリッキやメンデスら個人突破に賭けるスタイルに変化したことで攻撃が単調になった印象も。原川、奥埜も疲労感はぬぐえず、徐々にオープンな試合展開になっていく。中盤には広大なスペースがひろがり、鹿島は自陣深くからのカウンターでも悠々と中央を持ち運んで攻め入ることができた。この時間の展開で追加点を奪えていれば上々だったが、後半ATにしっかりカイキが取ってくれたので無問題。てかその時間でも元気に走り回り、アシストまで決めきった樋口は相変わらずやべーんだが。

首位奪還。正念場の連戦へ

 鹿島が単独首位に立った。その事実が何より嬉しい。ここ何年もスロースタートで、シーズン終盤に首位を狙う状況だっただけに嬉しい。タイトルを争うことになるであろう川崎、マリノスらに負けたことは悔しいが次の対戦でやり返すだけだ。

今節もクリーンシートにはなったものの、スンテのアクシデントすら起こさせない冷静な判断とセーブあってのもの。チャンス自体は相手に作られてしまっていたので、そこはよりキッチリ修正していきたい。

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