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”準備と即興”J1第28節 鹿島(H)vs浦和(A)マッチレビュー

鹿島 2 ー 2 浦和

 前節川崎戦を1-2で落とし現在4位のアントラーズ。ただ、今週から待望の新コーチが合流しました!坪井健太郎コーチ、鈴木隆二コーチは常に帯同されるものの、フィジカルアドバイザーに就任された咲花正弥さんはアメリカ在住のため年2回ほどの来日・指導になるらしいです。なかでも興味深いのが、鈴木コーチは元フットサル日本代表でスペインでの指導歴有という異色さ。サッカー×フットサルの懸け橋がまさか鹿島にかかるとは思いませんでしたね・・・・なんなら一番遠いクラブだったんじゃないっすか・・・?

 なんとGKにサプライズ起用が発生。沖が今季リーグ戦初先発を飾り、スンテがベンチ入り。先(将来)を見据えてなのか、単純に意図したものがあったのかはわかりません。ただ、カップ戦要員として今季大分安定していた印象があったのでチャンスをぜひ掴んでほしかったっス。

 対する浦和レッズはなんとACLファイナリスト!過密日程の影響もあってか、なかなかリーグ戦では安定せず現在9位と苦しんでいる今季。さらに今節は急遽主力数人がベンチ入りすらせず欠場しており、スクランブル体制で試合に臨んだようです。天皇杯を次のミッドウィークに戦うのは鹿島も同じで、お互いある程度消耗は抑えたい意図はあったのでしょう。

〇前半

前掛かりプレスで前後分断を狙う鹿島

 鹿島は立ち上がりからハイプレスを敢行。優磨、カイキ、仲間ら3人で常に相手ビルドアップに対して猛プレス。躱されても後ろからタックルを仕掛けるなど、守備意識は相当高い。仲間がとにかく走れるので、相手陣でのカオスを作り出すのに一役買ってくれた。シンプルなポストプレーで味方も活かせるし、どんどんいろんな形で貢献してくれている。

 とはいえ浦和レッズも鹿島のハイプレスにそのまま足を取られるわけでなく、岩尾のサリーダや両SBの大外進出などあの手この手で秩序構築を模索。鹿島はゴールキック守備からも完全にハメを狙い、徹底して地上進軍を封鎖した。勿論大外を空けている分、そこを使われるとひっくり返されて撤退を余儀なくされるシーンも。宮本と大畑がゴリゴリ個人で運んで打開していくプレーを見せなかった分、中央の迎撃が間に合って事なきを得た感はある。それでも起点は作られてしまったし、そこから致命傷に至らなかったのはラッキーだったか。

カイキ現象、再び

 開始直後の樋口のミドルシュートを皮切りに、「前に前に」とプレーしていく鹿島。しかし松尾の機動力はやっぱり厄介で、カウンターで前を向かせるとほぼ確実に違いを作ってくる。鹿島が押し込んで先制するか、それより先に浦和がカウンターを刺すかという構図が見えてきた。

16分、左ハープスペースでボールを引き取った樋口が間髪入れず高速クロスを入れると中央カイキに着弾。ドンピシャヘッドでニアを貫き、先制点をもぎ取った。川崎戦のクロスを彷彿とさせる直線的なクロスだ。ていうか、樋口の繰り出すクロスの精度と速度をハーフスペースから出されたらぶっちゃけ相手はどうしょうもないんでしょうね・・・

先発からストライカー起用されたカイキは止まらず、27分に今度は自分でドリブルで持ち込みシュート→2点目GET。鈴木彩艶がシュートを弾くも、弾いたボールは背後へと進みゴールに吸い込まれた。ここまでは本当に最高の出来であったし、間違いなく快勝コースを歩めていたはずだったのだが。

暗雲もたらす松尾の追撃弾

 カイキ2ゴール目の直後、30分に松尾が1点を返す。ビルドアップからの押し上げに成功し、右サイドからアタッキングサードへ侵入成功。鹿島のブロックを左右前後に揺さぶりつつ、岩尾がダイレクトでエリア内へ差し込んだパスが松尾に通りシュート。関川の股を抜けたボールは右隅に入ってしまった。流れ自体はよかっただけに、守備ブロックの間を縫われて失点したのはちょっと勿体ないっすね。ただ、ニアゾーンに走りこんで局面を手繰り寄せた小泉のランは見事。こういう選手がいると点取れるんじゃろなぁ…

1点こそ返されてしまったものの、こと前半における鹿島の出来は見事。欲を言えば3点目を奪って完全に浦和をへし折りたかった。ただ準備してきたモノをしっかり形にし、それでリードを奪って折り返せたのだから文句なしだ。

〇後半

ペースダウンを受け入れた鹿島の4-4-2シフト

 両軍ハーフタイムで交代はなく後半開始。鹿島は前半と同じく前掛かり戦法で相手のビルドアップを阻害しつつ、仲間を中心にアタック継続。前半からチームの根幹を仲間は担っており、64分に彼が交代で退いた辺りから流れが変わり始める。仲間に代わり入ったのは中村亮太朗であり、キャラクターの違いから「ペースを落として後ろを手厚くする」といったメッセージ自体は感じられる交代だった。

中村の投入により鹿島は4-4-2にシフト。左SHに和泉、右SHに樋口が入った。結果論ではあるものの、この交代まで中盤を支えていた3人(ピトゥカ、樋口、和泉)のプレー強度と精度は素晴らしかった。互いに位置を変えつつもバランス感覚は失っていなかったし、流れが淀むことは極めて稀。前半からペースを飛ばしていたのは確実だったし、優磨は60分頃からちょっとずつ疲労が見えた。だからこその交代であり、よりバランスを重視した采配だったはず。その直後の69分にセットプレーから失点したのは誤算だったのだが。

引き分け≒敗北により生まれる焦りと即興

 上位争いに留まるためにも鹿島はこれ以上勝ち点を落とすわけにはいかず、2点リードをしながらも引き分けとあってはネガティブな印象のが大きい結果になってしまう。「どう勝ち越すか」というテーマに迫られたときに岩政監督は判断に苦しんだはずで、その局面での準備までできていたわけはないはず(そもそも前線の手数の少なさはレネ政権でも課題だった)。

67分にリカルド・ロドリゲス監督はFWユンカーに代えてMF柴戸を起用して中盤を手厚くしてきた。鹿島としては前線プレスを解除し、中盤フラットにしているので中々プレスにいきずらい組み合わせにはなってしまったか。結果として浦和はこの時間から如実にボールを持てる時間が増えた印象が強い。4-4-2ブロックを敷いて撤退気味に守備していたのは浦和のはずだったのだが、いつの間にか守っていたのは鹿島になっていた。鹿島は何がなんでもゴールが欲しいのにも関わらず。

付け焼刃の3-5-2?

 72分には和泉に代えてエヴェラウドを投入(当初はカイキと代えるつもりだったようだが)。同点となったことで、得点源は少しでも残しておきたいという判断?優磨はしきりに立ち位置を岩政監督に確認していたが、カイキを左SHに据えて優磨・エヴェラウドの2トップ編成で反撃を狙う。ただ、やっぱり優磨もカイキも疲れていたので前線でのボール奪取は望めず。後方での守備からボールを奪い攻撃を仕掛けるものの、速度が出ないから芽を摘まれていく。

78分には岩政監督さらに一手。3人交代でブエノ、荒木、舩橋を入れて3-5-2へと布陣変更。明らかに準備されていたとは思えない、スクランブルに近い恰好で勝ち越しを狙っていく。ひっさびさの出場で期待がかかった荒木遼太郎もまだまだ復帰上がりで強気なプレーは観られなかったし、流れを引き寄せるにはプレゼンスを発揮するにはカオスすぎたか。舩橋はマジでここ数試合いろんな役割を任せられてますね。それだけ信頼されてるというか、計算立つんでしょうかね。小田使わないんだ・・・とは思ったけどw

 付け焼刃の3-5-2が功を奏したかと言われると判断が難しい。ぶっちゃけカオスすぎて浦和も鹿島の選手ら自身も整理できてないまま時間が過ぎた感じもする。舩橋やブエノ辺りの立ち位置における可変性は即興なのだとしたら上手くいっていた気がするけれど、走れていない前線のツケを払おうとWBが迎撃に出て、その背後をしっかり使われる等デメリットのが大きかったかな。安西よく頑張ってたけれどね。対面するマークを捨ててでも前にプレスを掛けるべきかの判断を常に問われていたもの。

時間は流れ、アディショナルに差し掛かった時にシャルク&明本のカウンターを差し込まれあわや敗戦だったものの、戻った舩橋と沖で阻止。マジでここは舩橋グッドすぎる。ここで決められていたらほぼ確実に負けていただろうし、2点リードからの3失点で敗戦なんて考えたくもない。

いざ天皇杯ベスト8・神戸戦へ

 悔しい敗戦には違いない。良い準備から良い試合を作れる点では岩政体制のストロングポイントだと思う。ただ余りに時間がなく、二の矢三の矢を作るのは難しいか。即興性を問われる局面をいかにつくらないようゲームを進めるかは現状考慮しないとね。

ミッドウィークには天皇杯ベスト8の試合が控えており、アウェイ神戸戦を迎える。今のチーム状況としてはタフなゲームになるのは間違いないし、フルメンバーで戦った分消耗も気になるところ。とはいえ、今季現実的に残されたタイトルは天皇杯のみなので負けれない。さぁ、どうなるか。

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