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ランドセルに残したパンを入れて帰る

あわやまり

最近、時代遅れだ、やりすぎだと話題になる学校の校則。
小学校でも中学校でも、理由はあるにしろ、おかしな、あるいは無意味なルールが確かにあった。

わたしが小学生だった頃は「給食を残してはいけない」というのが絶対的ルールだった。食べるのが遅い子や、好き嫌いがある子は、掃除の時間(給食の後が掃除の時間だった)に、教室の後ろに席を寄せた状態の中で、ときには泣きながら食べていたものだ。
あれはほとんど、見せしめみたいだったと、今では思う。

わたしは、体が弱くやせっぽっちだったので、とにかく少食だった。よそってもらうおかずやご飯は、いつも小声で「すくなく!すくなく!」と当番の子にお願いしていた。だから、食パン2枚はとうてい食べられないし、コッペパンも大きすぎた。
そしてその当時のルールというのは、残すときは先生に申請しなければいけない、というものだった。

ある日わたしは、いつもより体調が悪くパンを残していいか先生に聞き、承諾を得た。わたしはコッペパンを半分にちぎり、半分なら食べられるかと思ったのだけれど、4分の1くらいしか食べられず、結果2かけらのパンを残すことになった。
それが大変な事態を引き起こした。

パンのケース(銀色のやつ)に、残したパンのかけらが2つあることに気がついた先生は、

「誰ですか!残したのは!!」
と大きな声で言った。

わたしは即座に手をあげ、
「わたしです!」
と言った。すると思いもよらない言葉が返ってきた。

「あわやさんは知っています。あともう一人、誰ですか!!!」


しまった・・・。

ものすごい先生の剣幕に、わたしは萎縮し、もうひとつもわたしだ、と言えなくなってしまった。

「このパンを残したのは、だれですか?」
と泉から出てきた女神様のように、もうすこし優しく聞いてくれたらなら、
「それもわたしです!」
と言えていたかもしれないのに、なんて。

その後も犯人探しは続くのだけれど、犯人などいないのはわたしだけが知っている。
クラスのみんなに申し訳ない気持ちと、先生が怖いので、生きた心地がしなかった。

その日以降、わたしは先生に申告するのをやめた。パンであれば、食べられない分をこっそり持って帰ればいいのだ、と思ったから。だから帰りのランドセルには結構な頻度で残したパンが入っていたと思う。

今考えれば、フードロスの観点からしても、ひとりひとりに合った量を食べられればよかったのに。

小学生の頃、わたしは発育が遅かったので、出来ないことも多く、苦手なことも多かった。
そのひとつが「虫」だった。


「みのむし」

みのむし、と言えば
ひとつだけ思い出すことがある

小学校低学年のとき
わたしは体が弱く
ちびでやせっぽっちで
食も細く
給食はいかに少なく盛ってもらうかを
一番に考えているような子だった

そのころ
理科の宿題で
みのむしをとってくる
と言う宿題がでた

そのときの担任の先生は
痩せていて背が高く
女の先生で
とても厳しい人だった

ある時などは
校外学習でおにぎりを持参するように言われ
おにぎりだけだと言われたのに
わたしの母が漬物を添えたのを見て
おにぎりだけと言いましたよ!
と指摘するほどの人だった

さておきわたしは
今も昔も虫は大嫌い
みのむしなんて探すのも嫌だったけれど
早朝に母について来てもらいやっと見つけた
ちびでやせっぽっちのみのむし

それで何をするのかと思ったら
みのを切って
中の虫を取り出すと言うのである
わたしはぞっとした
とても出来ないと思った
ほとんど泣きそうだった
逃げ出したかった

あまりにショックで
どうやってやったのか覚えてないのだけど
(たぶん誰かにこっそりやってもらったのだと思う
 隣の席の男の子とかに)
何とかしてみのを切ると
中には小さなかたまりが
動かないでいた
こわいから
よく見られなかった

きっとそのみのむしは体が弱く
少食で大きくなれなかったのだ

その後
人より遅れて成長期をむかえ
周囲も驚くほどの食欲で
すくすくと大きくなったわたし
みのむしを見ると
あの宿題と先生と
ちびだったころのことを
思い出す


あわやまりHPより


ちびだったころ、苦手なことが多かった、と書いたばかりだけれど、今でも虫はダメだし、朝も弱いし、漢字も書けない。
あんまり成長してない、と言えばそれまでだけれど、今だったらちびだったあの時のわたしに言ってあげられる。

「大丈夫だよ、パンのことは本当に大したことじゃないよ。
 あなたはわるくない、とわたしは思う。
 それに大人になってから、このことはきっと何かの役に立つと思うよ。」

ちびだったころ、大事にしていたビー玉入れのような箱に、
こういう記憶がたくさん、静かに眠っていて、
思い出しては、詩に書いたりしているのだから。




「記憶クッキー」(七月堂)という詩集が出ました。




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