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透明。

わぁぁ~!と歓声を上げる私を友人は微笑んでみていた そうでしょう、という口にされなかった言葉が聞こえた気がする 初めて見る北陸の海はどこまでも透明で静かに波が 寄せて返していた 「井上靖の詩に『一枚の紺の大きい布を白いレースが縁どっている。』っていう海を例えた詩があってね...。」 はしゃぎながらいう私のおしゃべりを口数の静かな友人は黙って聞いてくれていた 私は海のそばで生まれ育ったけれど故郷の海以外でふるさとを思い出すことはない 海によって全然波音が違うからだ

    • ガラパゴス島から離れて。

      コンセントが椅子の近くにあってフリーWi-Fiが飛んでいて利用者がたくさんいてって私もその一人なんだけど。 スマートフォンも飛行機もこんな風に身近に利用するようになるとは思いもしなかった。去年の自分に教えてあげたい。 職場の休憩時間に携帯を取り出したら20代の同僚に「ガラケーですかっ!?」とポケットからゾウガメでも取り出したぐらいの勢いで驚かれた。 そのガラケーも今年壊れ、割引に惹かれてスマートフォンに変え、同じころ何気なく見た映画をきっかけに舞台俳優さんに恋をしていわ

      • リルケの「秋の日」

        九月になりましたね。九月になるとわたしが毎年暗誦するリルケの詩です。 「秋の日」 主よ、時節がまいりました。夏はまことに偉大でした。 日時計のおもてにあなたの影を置いてください。 そうして平野にさわやかな風を立たせてください。 最後の果実たちに、満ち満ちるようにお命じください。 彼らにもう二日だけ南国のように暖かな日をお恵みください。 果実らをすっかりみのらせ、重い葡萄の房に 最後の甘みを昇らせてください。 今家を持たぬものは、もう家を建てることはないでしょう。 今ひ