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その沈黙に「あたたかさ」はありますか?コーチングや対話の場の、見えないけれど大切なこと

コーチングにおいて大切なことの一つに「沈黙」があります。

クライアントが考えや想いをめぐらせたり、感じたり、言葉にする。
それをコーチが待っている。

そのときに生まれるのが「沈黙」や「間」です。


実際にコーチングの国際的な基準を定める団体の一つであるICF(国際コーチング連盟)の公開しているコーチのコア・コンピテンシーの中にも、コーチの大切なあり方の一つとして「今ここに在り続ける/Maintains Presence」という項目があり、その中で「沈黙/silence」と「間/pause」という言葉が出てきます。

6. 沈黙、間、または振り返りのための余白を作り出し、許容している
Creates or allows space for silence, pause or reflection

ICF Japanによるコア・コンピテンシーの日本語訳より

対話やコーチングの本にもこれらの言葉が必ずと言っていいほど登場します。

優れた聞き手であるとは、間や沈黙を受け入れるということです。
なぜなら、間や沈黙をあまりにも早く埋めてしまう、ましてやかぶせ気味に言葉を発してしまうと、もしかしたら、話し手はうまく言葉にならない何かを伝えようとしているかもしれないのに、それを妨げてしまうからです。

ケイト・マーフィ著『LISTEN知性豊かで創造力がある人になれる』より


真の対話に不可欠なのは、「沈黙」である。二人の人間の間の深い真実の対話において、「沈黙」は不可欠である。人の内面において何かが「動く」とき、人は「沈黙」せざるをえない。

諸富 祥彦著『カウンセラー、コーチ、キャリアコンサルタントのための自己探究カウンセリング入門:EAMA(体験アウェアネス意味生成アプローチ)の理論と実際
より


一方で、「沈黙」や「間」をつくろうと頑張ってはみたけれど、(そして実際にその場に「沈黙」や「間」はあったけれど)対話がどうも深まらなかったという体験をされた方も多いのではないでしょうか?

わたしも、今でこそ「沈黙」や「間」は本当に大切なものだと心から思えるけれど、コーチングを学び始めた当初はいくら待っていても結局「うーん、分かりません…」という言葉が返ってきてガッカリするということが少なくありませんでした。

それがいつからか、沈黙の先に何かがやってくるようになった。


先日、対話に関する本を読んでいる途中にまた「沈黙」という言葉が出てきたので、隣にいたオランダ人のパートナーにふと気になったことを聞いてみました。

「silenceとserenityの違いは何?」

silenceは沈黙や静寂
serenityは静けさや平静

と訳されることが多く、日本語では意味が近しい感じがするものの、なんとなく質感が違って、今セッションのときにクライアントとのあいだにあるのは「serenity」のような気がしていたのです。

わたしの質問を聞いて、彼は一瞬考え、こんなことを言いました。

「Silence is the absence of noise, serenity is peace.」

「Silenceは音がないことで、serenityは安心だよ」
という感じでしょうか。

その言葉を聞いて、いろいろなことがスーッとつながっていく感じがしました。

なぜ、以前はどんなに沈黙しても何もやってこなかったのか。

なぜ今は、静かに待っているとそこに何かがやってくるのか。


以前のわたしは物理的な「沈黙」をつくることはできていても、きっとそこに安心感はなかったのでしょう。

口では黙っていたとしても、「これでいいのかな」「何か出てこい!」と心の中は思いっきりザワザワしていたのですから。


ただ黙るのではなく、クライアントやこの場を心から信じ、ゆったりとそこにいる。

目の前にいる相手の存在そのものを大切に思う。

そんな状態で自分がいて、そこに、物理的な間があることではじめて、小さな声や繊細な感覚がふわり顔を出すことができるようになる。

今は体験をしているのはそんなことなのだと、パートナーとの会話から気づくことができました。


「安心感」は、「あたたかさ」とも言い換えられます。

何もないけれど、ほんのりとあたたかい。

そんな場があったら、普段はなかなか出てこない感覚や想いも、自然と言葉にすることができるようになるでしょう。


ICFのコア・コンピテンシーで言われている「silence」や「pause」は、コーチやクライアントおよびコーチングを外から眺めたときに認識できることであって、実際には物理的な沈黙や間とともに、安心感やあたたかさという体験がそこにあるはずです。

今、あなたと相手のあいだにある「沈黙」はどんな質感ですか?

そこにあたたかさはありますか?


まずは自分の心の声を聴いて、受け止めること。
自分を大切にすること。

そうしていると自然と、心の中のあたたかさが相手とのあいだにも滲み出てくるのではと思っています。



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そして、もし自分自身や相手との関係性を深めるための対話を実践していきたいという方が周りにいらしたら、ぜひこの記事をシェアいただけるとうれしいです。

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